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突然のイメチェンってのも青春あるある

本日2回目の更新です。

……………………


 ──突然のイメチェンってのも青春あるある



 それから週末が過ぎ、翌週にまた学校が始まった。


 そこで俺は非常に驚かされることになる。


「……神宮寺?」


「おう、あなたの神宮寺さんだぜ?」


 登校してきて教室で出会った神宮寺が、神宮寺でなくなっていた。


 いつもぼさぼさだった残念な髪の毛はしっかり整えられたお洒落なミディアムボブになっていた。さっぱりと切ったミディアムボブで、前髪の最近の流行りのスタイルになっっている。


 それに眉毛も一緒に整えられていて、制服も少しスカート丈がやや短く、お洒落になっていた。


「どうしたんだ? えらい変わりようじゃないか……?」


 俺は唖然として神宮寺を見つめるのに神宮寺がによによと笑う。


「青春っぽいことしようって言ったろ? これも青春だぜ」


「お、おう。そうだな……」


 イメチェンした神宮寺は正直可愛かった。


 これまでずっと女子ではなく男友達みたいに思ったけど、こいつもちゃんと女の子だったんだなと思わされるように、それぐらいに可愛かったのだ。


「そうだ、そうだ。今日のお昼ご飯はもう決まってる?」


「いつも通り菓子パンだけど」


「ふふん。それじゃあ、一緒に食べよう。いいことあるぞー」


 神宮寺はそう言ってにししっと笑うと自分の席に去った。


「如月」


「おお、早乙女(さおとめ)


「あれ、見たよな? 神宮寺のやつ、何があったんだ?」


 俺にそう話しかけてきたのは早乙女(さおとめ)大和(やまと)。俺と神宮寺の友人である。


 俺や神宮寺と同様、一軍のバリバリの陽キャとも言えず、二軍のバリバリの陰キャとも言えない中途半端な人種だ。俺たちのような人間は同じ人種で集まって群れを作るものである。


「青春っぽいことをしようって先週話しててな。その一環らしい」


「青春っぽいこと、か。面白そうじゃないか。何するんだ?」


「全然決まってない。神宮寺次第で、その場のノリだと思う」


「なんだそりゃ」


 早乙女が呆れた表情を浮かべるが、俺に言われても困る。言い出しっぺは神宮寺だ。


「それより百花(ももか)ちゃんから聞いたけど、お前さ、図書委員の文学少女に告ったんだって?」


「うぐっ! も、もう噂になってるのか……?」


「少しな。俺も百花(ももか)ちゃんから聞いたばっかりだし」


 早乙女が話している百花ちゃんとは、早乙女の彼女である(ひいらぎ)百花(ももか)のことである。彼女も俺たちと似たような人間だが、俺たちより噂話に敏感で、独自の情報網を持っているのだ。


 ちなみに可愛い子であり、早乙女が彼女と付き合い始めたときは『リア充爆発しろ』と友達一同から呪詛の言葉を浴びたものである。俺も遠慮なく『3回ぐらい小指をタンスの角にぶつけろ』と呪いをかけたが、まだ効いていないようだ。


「で、振られたって聞いたけど本当なのか?」


「ああ……。見事に玉砕した…………。お馴染みの断り文句『友達から始めましょう』って……」


「ドンマイ。そんなこともあるさ」


「気休め言いやがって。彼女持ちの余裕か~?」


「ふふふ。恋人がいるのはいいぞ! この間もふたりで出かけてきたんだ。そりゃあもう楽しかったぜー? 百花ちゃんと過ごすのはさ!」


 くそう。普通に悔しい! 俺も彼女作って惚気たい!


「ひょっとして神宮寺も彼氏ができたんじゃないか?」


「えっ……?」


 そこでさらりと早乙女が言うのに俺が思わずぎょっとした。


「恋する女の子は可愛くなるって百花ちゃんが前々から言ってたんだよ。それってこういうことだろ? 心当たりないのか?」


「ねーな……。これまで男友達みたいに思ってたし、そういうこと考えたこともない」


「確かに俺も男友達のカテゴリーに入れてたけどな」


「だよな。有識者の如月さんも何が何やらですよ」


 急にイメチェンした神宮寺。世界七不思議並にミステリーである。


「これまではちょっと野暮ったかったからそう言う目で見てたけど、これからは神宮寺も告られたりしてな。あれだけ可愛ければ見逃すやつはいないだろ」


「そうか? 神宮寺だぞ? あの神宮寺だぞ?」


「あれ見てもそう言えるのか?」


 早乙女がそう言うのに俺は再び神宮寺の方を見る。


 いつもぼさぼさだった髪は綺麗に整っており、垂れ目な目元はそのままだけど眉が整えられたおかげが印象ががらりと変わっている。


 あの神宮寺がなぁ…………。


「う~ん。認めがたいがあり得るかもしれんな」


「だろ?」


 今のあいつならばいい寄ってくる男のひとりふたりはいるかもしれない。イメチェンひとつで神宮寺に負けたような気がして悔しいから、あんまり認めたくないけど。


「せっかくだし、お前が神宮寺にアプローチしてみるってのは?」


「ねーよ。あいつ、友達としてはいいやつだと思うけど、女の子として見たことないし。それに俺の憧れとは程遠い存在なんだよ」


「憧れって文学少女か?」


「そう。黒髪の清楚な文学少女をいつか彼女にする」


「変なフェチだな」


「うるせー」


 こういう好きな女の子タイプぐらい人間ひとつふたつは持ってるものだろ!


「だけど、神宮寺に彼氏ができたら疎遠になっちまうかもな」


「そういうもんなのか?」


「だって、そりゃ友達より彼氏との時間を大事にするだろうしな」


「ふうん……」


 これまで友達としてずっと神宮寺と一緒に過ごしてきたけど、それが彼氏ができてしまうと疎遠になってしまうのか。それはそれでちょっと寂しいな……。


「じゃあ、今のうちに遊んでおかないとな」


 俺は神宮寺の青春をエンジョイしようという話は、彼氏ができる前に俺と過ごす時間なのかなと思いながらそうひとつ呟いた。


 神宮寺の方を見れば、噂大好き柊さんが駆け寄って話し始めていた。


「神宮司ちゃん、神宮寺ちゃん! 何があったの?」


「うへへ。何だと思うー?」


「教えてよー!」


 柊さんがぐいぐい迫るが神宮寺はにやにやするだけで答えようとしない。


「分かった! 恋をしてるんだね?」


「どうかなー?」


「それ以外あり得ないし。あれだけお洒落に物ぐさだった神宮寺ちゃんがこんなに色めくなんてさ! 前はもっとお洒落の欠片もないような神宮寺ちゃんだったじゃない!」


「酷いなー。あたしでも傷つくぞー」


「誰が好きなの? どういう人? どこで出会ったの? 教えて、教えて!」


「へへへっ。教えなーい」


「ケチ……!」


 神宮寺がひたすら秘密主義なのに柊さんはご立腹のご様子。


 だが、神宮寺は誰かが好きということは否定しなかったように聞こえる。


 そうか……。神宮寺も恋をするようになったのか……。


 早乙女が言ったようにこれから俺たちは疎遠になったりするんだろうか? 青春っぽいことやろうってもの途中で終わったりするんだろうか?


 一緒に馬鹿やったりして、いろんな話題で盛り上がって、何だかんだでいい友達だったから、それはそれでショックだ。これからもいつも通り友人として仲良くしたいというのが本音である。


 けど、他人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて爆発四散するらしいからな。俺は馬に蹴られたくも、爆発四散したくもないので、神宮寺の恋には介入しないぜ。


 俺がそんな風なことを考えて神宮寺を見ていると、神宮寺はニッと笑ってこっちに小さく手を振ってVサインを送ってきた。なので、俺もそれに手を振り返してサムズアップして返すと神宮寺は喜んでいた。


 こういうちょっとした所作はいつもの神宮寺なだけに、神宮寺が美少女の皮を被っているようで何だか落ち着かない。これに慣れる日は果たしてくるのか、その前に神宮寺は俺と疎遠になってしまうのか……。


 というか、この間の青春っぽいことしようって約束は本当に何だったんだ????


 有識者の意見求む。


……………………

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