後日談1 どっちもどっちのふたり
元の姿に戻ったアルフレッド様と、記憶を取り戻した私は一人暮らし寮から出て宿をとっている。ここでは家賃などの概念はなく、住む条件さえクリアすれば住むことができる。衣食住も住人はかなり安くなっており、代わりに旅人や商人はとても高いらしい。
(記憶を思い出したら、《最後の楽園》のあり方は他とは異なるのがわかるわ)
そんなこんなで私たちは新しい一軒家を探しつつ、のんびり暮らしているのだが──。
「ディアンナぁああああああ、嫌だ離れたくない!!」
「だから、これからご飯作るだけだってーー」
「今までは一緒にいたのに」
「それは羊妖精の姿だったからで、人の姿に戻ったのなら離してください」
ベッド上で私の腰にしがみつくアルフレッド様。もはや日常となりつつある。
(アルフレッド様って羊妖精の時もそうだったけれど、朝に弱いのよね)
結果、朝はものすごく寝起きが悪い。本当にすごく悪い。そして羊妖精の時は私の肩とかに引っ付いていた癖が残っているからか、離してくれない。
(最初は私も嬉しかったけれど……でもご飯は食べたい!)
食事は近場の食堂で安く食べることもできるが、自炊用の厨房もあり、食材はほとんどタダで手に入る。この国では毎日のように果実や野菜などが手に入る。
お肉や魚も近場で取れるので、とっても安価だ。
(改めて考えると、生活する際のハードルがものすごく低い。……それに《最後の楽園》に来た時は周りが支えて親身になってくれているし、最初から住む場所や生活にも困らなかった。仕事も生活に馴染んでからだし、向き不向きなんかもあった。本当に楽園よね)
私は羊妖精たちなどモフモフ系の妖精に好かれやすいようで、その毛を切る仕事がメインだ。
羊妖精は人を選ぶらしいので、一日に一匹だけの毛だけでも外ではとんでもなく高値で売れるらしい。
(確かに幻獣や神獣、妖精関係の一部などは高値だわ。と言うかそもそも妖精だって元の国ではおとぎ話レベルだったような?)
「ディアンナ……」
「私はここに居ますよ」
「うん」
(アルフレッド様的には離れると私が居なくなってしまいんじゃないかと言うトラウマがあるから、今みたいにひっつき虫な感じなのよね)
もうしょうがないので彼を引きずる形で、調理場に向かい朝食を作る。
ぷっくり赤いトマトを煮込んでおいたミネストローネ、それとパンは胡桃入りがあったのでオーブンで焼いて、ふわふわオムレツとカリカリベーコン、昨日のあまりのアスパラとサーモンのテリーヌ、ポテトサラダを用意する。
「良い匂いがする……。僕はスープをよそれば良い?」
「うん。お願い」
スープの匂いに胃袋が刺激されたのか、ようやく寝ぼけていた目が覚めたようだ。「おはよう」と頬にキスをしてくるので、私もお返しにと頬にキスしようとしたけれど、届かなくて背伸びをしたら唇にキスをしてしまった。
「ディアンナが可愛い。可愛い」
「ぎゃああ。フライパン持っているときは危ないから!」
危うくオムレツがふわふわではなく、ボロボロになるところだった。危ない危ない。アルフレッド様に料理中は感情にまかせて抱き上げようとしない、唇への長いキスも禁止にした。
「うん、じゃあ後で」
「!?」
サラッととんでもないことを言う。でもこんな風に朝から甘い雰囲気で笑い合える今がとても尊くて、奇跡のようだと思う。
アルフレッド様は日中は趣味の刺繍が功を奏して、職業ギルドから毎回声を掛けられて仕事をもらえているらしい。特に《最後の楽園》特有の【加護印】の特別な紋様には加護の力が多少付与されるらしく、魔物除けとして他国では高価だとか。
(《最後の楽園》そのものが特別で伝説のようなものだものね)
特別な場所だからこそ、私は普通に生きているのだと思う。たぶん、外の世界では私の持つ特性は争いだとか政治的なことに利用されてしまうし、アルフレッド様も聖獣に好かれる体質だとしたら、前回と同じようなことに巻き込まれてしまう可能性だってある。
(私たちはここでは普通でいられる。普通で、何気ない毎日が愛おしいこの時間が長く続きますように)
**アルフレッドの視点**
元の姿に戻ってから、ディアンナを抱きしめることができて嬉しいし、幸せだ。自分の過去を受け入れて、記憶を思い出して、それでも一緒にいたいと言ってくれた──正直言って、女神。本当に神々の血筋だったけれど、本当に自分にはもったいないぐらい素晴らしい女性だ。
一緒に暮らして、毎日が幸せで、愛おしい。
ただ一つ。本当にこれだけは、と困っていることがある。
「むぅ……モフモフ」
「ちょ、ディアンナ。そんなに抱きついたって僕はもうモフモフじゃ」
「温かい」
「…………」
ベッドで一緒に寝るのだが、いちいち可愛すぎてしょうがない。しかもちょっと寝付けなくて水を飲もうとか、刺繍をちょっとやりたいと思って起き上がるとディアンナが引っ付いて離れないのだ。
ディアンナは夜に弱い。悪夢も見やすいらしく、僕が傍に居ないと夢遊病とまでは行かないが、僕がいないか手でベッドをぺしぺししているのを何度かみた。
(ディアンナにとって僕がいないことで、安心できなくて過去のトラウマが誘発されてしまうのかも……?)
思えば羊妖精として一緒に居てから、ディアンナの精神が安定していった。その時にはベッドも一緒だった。というか最初は同衾なんてと思ったのだが、真夜中に魘されるディアンナを見たらなんとかしたくて、傍に寄り添っていたのが始まりだった。
(最終的に抱き枕になっていたけれど……)
今は人の姿なのでモフモフはしない。ただそれでもディアンナの寝ぼけて抱きつくのは、正直嬉しい。安心してすやすや眠る姿に安堵しつつ、「ちょっとぐらい」はキスをするのは許してほしい。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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後日談は1話以上は書く予定です( ´艸`)




