第3病院っっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!
2手に分かれて、病院の仕事をすることになった!
小春はどっか行ったし、私――スズネが張り切っていくぜっ!!
第2病院を離れていき、スズネは幽霊の女の子についていく。
これから、第3病院に行って仕事をするらしい。 病人の人の症状が重くなったから、生身の女の人が連れていく所だったようだ。
病人を背負った女の人に追いついて、スズネは並んで歩きだした。 うつるかもしれない病気なのに、下で背負っていく女の人はなんてことないような顔をしている。 病院のスタッフだし当然か、覚悟してやってんだろう。
張り巡らせてある『生身立ち入り禁止』と書かれた帯を、足を上げて通っていく。 向こうには海が見えてきて、その手前には建物がある。
建物の上には看板があり、『第3病院』と書かれている。 でかでかとした元気さが有り余っているような文字だ。 一番重い症状を扱っている病院には、あまりにも似合わない。 ……なんだろう、変な予感がする。
第3病院に着いて入っていくと、建物の中はそれなりに広かった。 風通しの良い建物だ、外壁は少なく、すだれのようなものや布などが、代わりにかかってある。
ここにも病人と思われる人たちが、辺りに寝ていた。 第2病院とは違って、静かで穏やかな空気だ。 起き上がっていて話している人もいるが、多くは声を出さずに横になっているようだった。 症状が重いから、さすがに静かにしているんだろう。
スズネたちが入ってきたのに気づき、中で看護師のように動いていた人が、こっちを見た。
「おかえりー……あれ、アツさん?」
仕事をしていた手を止めて、こっちに近づいてくる。 10代半ばほどの女の子だ、バネを内蔵したような力強い動きで、ずいずいと歩いてくる。 元気そうな女の子だ、生身の体を持っているから余計に存在感がある。
背負われた病人の男と知り合いなんだろうか、男は挨拶を返した。
「弥生ちゃん」
力なく軽く挨拶をする病人の男に、弥生と呼ばれた少女はぐいっと目の前まで近づいてきた。 何が面白いのか楽しそうにへらへらを笑いを浮かべて、軽々しい口調で話しかけてくる。
「あれ、もしかして、悪くなっちゃった?ww」
「うん。 今日から、頼むわ」
男はうなだれながらも、笑って頷いた。 具合が悪くなって、一番重い病院に来たというのに、不思議と男の目には明るさがある。
それを聞いた少女は、病院いっぱいに響くほどの大声を上げて、うねり上げるように腕を突き上げた。
「まっかしといてーっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!! ……ん、それ、誰?」
ポーズを決め終えると、急停止してこっちを見て聞いてくる。
うわ、びっくりしたっ!! 轟くような大声にスズネは驚いて周りを見るが、他の人は誰も気にしてないようだ。 一緒に病院に来た他の人も、淡々と仕事に戻っている。 ……え、これ、いつもの調子なの? マジ?w
一緒に病院に来た幽霊の女の子が、普段の調子で日常会話をしている。
「なんか、憶え屋使いたいって、言ってなかった?」
憶え屋に伝言を届けるために、一人分、幽霊の人の手が欲しかったらしい。 代わりに行って、口座を開いて書き込んだり読み取ったりしてくれってことみたい。
こんな離れた僻地みたいな場所でも、憶え屋は使われているんだな……。
話していると、今度は別のほうから声が聞こえる。
「あぁ、それ、俺だ」
話を聞きつけて、病院の奥のほうから人が歩いてきた。 病院の患者のようだ、手足に包帯をぐるぐる巻きにしている。 松葉杖をついて歩いてきて、なかなか症状は重そうだ。
「アキラくんが呼んだの? ……あっ! 私も、なんかあったような……」
元気すぎる弥生も、憶え屋を使う用事があるようだ。 せわしなくバタバタと土煙を上げて、向こうのほうへ走っていく。
入れ替わりになるように、アキラと呼ばれた患者がゆっくりと歩いてきた。 どんな病気かは知らないが、スズネは幽霊だから、病気がうつる心配など無く近寄れる。
「私自身は憶え屋じゃ、ないけどね」
一応断ると、アキラは身体を松葉づえにもたれて安定させながら、理解したように答えた。
「あぁ、そうなのか。 ……小春たち、大丈夫か……?」
アキラの声は、しわがれていた。 ちょっと高めの声だ。 見た目も背が低くて、髪の毛が白っぽく、肌もかさかさしていて年齢が分かりにくい。 ……へえ、こんな症状の人もいるんだ。
……あれ? ていうか今、小春って言った?
「小春? ……小春、知ってるの?」
同じ名前の別人? それとも私が知ってる小春?
「うん。 ……君は?」
「私? スズネだけど」
この人は見たことないけど、小春の知り合いなんだろうか。 状況が分からないでいると、目の前のアキラは納得したように言う。
「あぁ、君が、スズネちゃんか。 俺は、アキラっていうんだけどね」
……あれ? アキラって、そういえば聞き覚えがあるような……。
ふと、歌子と歴史所で話した時のことを思い出していく。 憶え屋の私たちの口座で、挨拶もせずにこそっと都市伝説の情報を置いていく人がいた。 ……たしか、名前がアキラくんじゃなかったっけっ!
思い出して、ようやく納得してきた。 そうか、だから私たちのことを知ってるんだ。
「あ! アキラくんか。 ……あの、たまに、こそっと見つけたことを、置いていく……」
それを聞いたアキラは、照れるような表情を浮かべながら、気分がほぐれたように話しだした。
「あぁ、そうw ごめん、俺も入っていいのか、よく分かんなくて。 ……一応、口座は公開になってるみたいだったから」
顔を知らなくても、憶え屋の中では一緒に活動ができる。 まさか、こんな重い病気の人が、街から離れたところから利用してるなんてっ!!
いいじゃんいいじゃん、このまま街全体に広がっていって、みんなで都市伝説を探していこうぜっ!! フゥゥゥッッゥ!!!!!!wwwwwwww
スズネは嬉しくなり、テンションが上がって答える。
「全然、いいよ! ていうか、他にも入ってきてる人いるよ」
「ふーん、そうなのか」
憶え屋の中では、みんなが同じように話すから、誰が知り合いなのかが分かりにくい。
変な格好のソラなんかも、私たちはまだ会ったことがないけど、病院内のアキラから見ると、私たちの普段の友達に見えているんだろう。 誰が普段の友達なのか分からないようだ、アキラは不思議そうな顔で、考えるように唸っている。
「あ、それで、用って?」
憶え屋を使う用事があったんだっけ。 口座の確認を代わりにして欲しいとか、書き込んで欲しいとか、何でもやるぜっ!
考えていたアキラは我に返り、松葉杖を持ち替えながら話した。
「どうも、殺人鬼の噂が流れてるみたいなんだけど、それは多分勘違いだから。 洞穴で骨が見つかったってのを誤解した人が、別のところで言っちゃったみたいで」
洞穴で見つかった白骨死体の話が、殺人鬼の話に、勝手に変わっちゃったってことね。
ほら小春、やっぱり嘘情報だったみたいだよ。 そりゃそうだ、ナイフも持てない幽霊の殺人鬼が街に入ってきたって、誰が怖いもんかっっ!!ww ふはははっっ!!www
話していると、別のほうから耳をつんざくような巨大な声が聞こえてきた。 さっきの弥生だ、相変わらず元気すぎる声で喚きながら、こっちに向かって走ってくる。
「ちょっと待ってーーーっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」
バタバタと足音を鳴らしながら走ってくるのに、病人たちは誰も反応しようとしない。 すぐそばを風のように通り過ぎていくのを、肘をついてあくびなんかしちゃったりしている。
こんだけうるさいのに反応なしって、マジ? どんだけ慣れてんだよww
弥生がこの場に来て立ち止まると、勢いで辺りに風がぶわっと吹いた。 弥生は仕事用の紙を手にしているみたいだ、それを見ながら言ってくる。
「……えーっと、包帯を10個と、記録用の紙をお願いしますって、『病院総合』の口座に、入れといてくれない?」
病院総合……? マジか。 憶え屋って、公的な組織にも使われてるんだ。 でもたしかに便利だし、使える用途は色々あるのかも。
えーっとじゃあ、病院総合の口座と、殺人鬼が嘘だったって話ね。 了解っ!
スズネはOKと返事をすると、アキラのほうに向き直っていく。
「さっきのも、色んな口座に、伝えて回っておくね」
「あぁ、頼んだ」
アキラは頷くと、再び松葉杖をつきながら部屋の奥へと戻っていく。 全身包帯だらけで、大変そうだなー……。
この街は幽霊を降ろせるけど、生身の人も一生懸命に最後まで生きるんだよね。 ……当たり前かw さっさと先に死んじゃうのは、私だけだろっっっ!!!!!wwww なんつってwwww
とりあえず憶え屋に行って、仕事をこなしてこよう。
……あぁ、昼ごはんの休憩とか、したいなあ。 なぜだか分からないけど、これだけ動き回ってるとご飯が食べたくなる。 でも幽霊じゃ意味ないしなー……。 昼ごはんって、気分が落ち着くんだけど。 なんでだろうw
スズネは建物を出ていき、病院を後にしていく。
ちょっと、どこにいるのよ! 見つからないわよっっっ!!! (小春)




