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何が起こってんのっ?

 イトが洞窟どうくつで目覚めたころ、他の場所では……?

 場所は変わって、どこかの暗い森の中。


 数人の幽霊が、固まって話しているようだ。 一人たくましい体の幽霊がいて、その周りに人が群がっている。


「……この先にまっすぐ行くと、街があるから、とりあえずそこに行ってくれ。 あとはその辺の人に、歴史所ってどこですかって聞けば、教えてくれる」


 降霊術の創始そうし者の、アキカゼのようだ。 何かを説明しているようだ、身振りを使って人々に話している。

 そばには小春の姿もあった。 説明しているアキカゼの横で、退屈そうにブラブラとしている。 周りの景色を眺めたり、地面を蹴ったりしているようだ。

 真夜中に、こんな深い森の中にいるなんて……。 もしかして小春も、同じように場所を移動したのだろうか?


「あぁ、分かった」


 話を聞いていた人たちは理解するように頷くと、その場を離れていく。

 去っていく数人の背中を眺めながら、小春は得意げな声を上げた。


「よし、3人やったっ! アキカゼちゃん、あんた、なかなかやるじゃない」


 小春はどうやら、いつもの調子のようだ。 元気に声を出して、楽しそうに話している。

 アキカゼは振り返って、少し照れたように笑った。


「そうか?」


 2人は辺りを眺めて、人の姿を探しているようだ。 他に誰もいないのを確認して、ふたたび歩きだす。


「一体、何が起こってるのかしらね。 こんなこと、私、初めてよ」

「うーん、俺もだな。 まだまだ研究が、足りないってことか。 ……ん?」


 ふと、何かの音が聞こえた。 ガサガサと、草をかき分ける音のようだ。 アキカゼが足を止めると、のんびり歩いていた小春も気づいたように立ち止まる。

 音は、少しずつ近づいてくる。 2人は静かに、じっと警戒するように草むらを見つめた。 音はどんどん大きくなり、目の前までやって来た。

 動物だろうか? そう思っていると、突然バッと人影が現れた。 体は大きくなくて、少女のようで、髪の毛が黒くて……。


「ん? ……あら、歌子じゃない」


 目の前には、歌子が立っていた。 息を切らして、ハアハアと言っている。 ただならぬ様子のようだ、服はボロボロで、体に切り傷が大量についていた。


「あぁーっ! 小春っ!!」


 歌子はこっちを見ると、泣きながら走ってきた。 小春はぎょっとした声を上げる。


「ちょっとっ! ……あら、どうしたの?」


 歌子は走ってくると、こっちに抱き着こうとして、勢いあまってすり抜けていった。 身を縮めた小春の背後で、バターンと盛大に地面に倒れこむ。 ……ちょっと、どうしたのよ、歌子っ!

 地面に伏した歌子はうめき声をあげ、ひくひくと、どうやら泣いているようだった。


「おい、どうかしたのか?」


 アキカゼがただならぬ様子を感じ取ったようだ、近づいて聞いていく。

 地面に伏せたままの歌子は、ぼろぼろと泣きながら言葉を出していった。


「……みんな、いなくなっててっ……街も……誰もいないし……」


 どうやら、やはり幽霊はみんな街から移動しているらしい。 目が覚めたら、街には誰もいなかった……。


「ふんふん。 ……ん? 何あなた、ただ、怖かったってこと?」


 小春が小馬鹿こばかにするように言うと、うんと、歌子は泣きながら頷いた。


「あぁ、みんな消えたと、思ったのか」

「そういうこと。 馬鹿ねえ、消えるわけないじゃない」


 小春はそう言いながらも、歌子の背中の辺りをさすっている。 幽霊の手ではさわれないが、そうしたくなるものなのかもしれない。

 歌子はぐちゃぐちゃになりながら泣いていたが、ぐっとこらえるように、涙をぬぐっていった。 立ち上がっていき、落ち着きを取り戻した顔で聞く。


「……何が、起こってるんですか?」

「うーん、俺も何も分からなくてな。 元いた人らが、移動して……。 それに、新たに降霊された人もいるみたいでな。 とりあえず、その人たちを案内しながら、街の方に向かっていっているんだが……」


 歌子は説明を聞きながら、落ち着きを取り戻していった。 話を理解するように、ひとつひとつ頷いていく。


「……アキカゼさんは、早く街に戻ったほうがいいと思います。 おさも、全部ひとりで判断できないと、思うので」


 おさはしっかりしているように見えるけど、適当なところもあるのだ。 歌子は歴史所で仕事をしているとき、長と話すことがあるから知っている。


「あぁ、そうだな。 分かった、じゃあ早く行こう。 ……お前も、生身だから、多分街の方がやることはたくさんあるぞ。 他の霊の安全確認や、新たな霊さがしは、霊でも出来るからな」


 たしかに、そうかも。 明かりをつけたり、紙に記録したり……。 騒ぎは思ったより大きそうだ、やることは多いのかも。

 隣で、小春が元気よく歩きだした。


「よーっし、じゃあ、急ごうっ!」


 こういうとき、小春の明るさはホッとする。 不安なものを、全部まとめて吹き飛ばしてくれるような気がするからだ。

 歌子は笑顔をこぼしながら、一緒に歩きだした。


「……ところで、やっぱり、生身なまみの人は大丈夫なのね」


 さっきの話では、歌子は街で目が覚めたと言っていた。 それなら、生身の人は移動してなかったってこと? ……でもさっき、誰もいなかったって言ったっけ?

 歌子は思い出すように頭をかしげながら、自信なさげに頷いた。


「うん。 ……多分」

「多分って、何よ」

「いや……私も、あんまり街の様子、憶えてないんだよね。 なんか、頭の中が真っ白になっちゃって……」


 歌子は頭をかいて、苦笑いする。 小春は眉をひそめた。


「もう、しっかりしてよ、歌子! ……あなた、しっかり者だと思ってたけど、意外と、そうでもないのね」


 歌子はそれを聞いて、笑いながら頷いた。 ぜんぜん否定する気はないらしい、ははっと笑いながら、まだ少し残った涙をぬぐって、何度も頷いている。

 小春がニカっと笑って、腕を大きく振ってみせた。


「ま、なんとかなるわよ。 私がいるんだもん、どんと構えときなさいっ!」

「うんw」


 3人の前に、日の出の光が見えてくる。

 ほら見なさい、希望の光よっっっ!!!!(小春)

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