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(終)たまっぱれっ!!!

 それから時はたち、私たちは祭りの準備に追われる日々を過ごしていった。


 マツリはまだ未練がましく、祭りの破壊計画を裏で進行していたらしいが、それもやめたらしい。 委員会の人たちにバレてしまって、かくしようがなくなったのだ。

 文句を言いつつも意見をすり合わせて、祭りの準備はやっと一本化されていった。


 一族のハナも、祭りの準備に加わってきた。

 ハナは最初は色々なことに遠慮えんりょしているようだった。 自分で社会に参加することを恐れているようだったし、他の人にもハナを怖がる人はいた。

 祭りの準備にも最初は加わろうとしなかったし、他の人も無理に誘うことはしなかった。

 でも、しばらくしたら気持ちを決めたようで、自分から参加したいと言ってきた。


 そうしてようやく色んな事がまとまって、祭りの準備は進んでいった。



 私たちは、城を壊すことに決めた。

 城は、最初は最先端の建物だったけど、もう正直時代遅れだ。 まちでは、色んな建物を自由に作れるようになっている。

 イトも大きな酒の研究室を作ったりしているし、別の地方出身のススキさんなんかも、情報発信のテレビ局みたいなものを作ったりしてる。

 いっぱい楽しいことをしたし、思い出もたくさんある。 でも、時代が新しくなるにつれて、もう必要なくなったのだ。

 最初は交流するために集まるって目的もあったけど、今では髪飾かみかざりで通信できるから、いつでも自由に話せるしね。


 城の中にあったものを処分したり、新しいところへ引っ越しして移動したり……。 そんな整理も、祭りの準備と同時に進んでいった。



 そうこうしているうちに、祭りの日がやってきた。




 城の一つの部屋の中に、ユメが立っている。 広い部屋の中で、何をするわけでもなくぼんやりしているようだ。

 近くには、他に2人いた。 かみボサボサのマツリと、病院から解放されたアキラだ。 2人は床に座り込んでいて、こちらも何をするわけでもなくじっとしている。

 今、この城では最後の片づけが行われている。 他にはスズネだけが城の中に残っていて、自分の部屋の片づけを終わらせているところだ。

 片づけが終わり次第、城を破壊する。 3人はスズネの片づけを待っている所なのだ。


「片付け、終わったよー……私で、最後?」


 静かに待っていると、部屋にスズネがやって来た。 ペタペタと足音を鳴らして、部屋の入り口からのぞいてくる。 どうやら、片づけはすべて終わったようだ。

 ユメたちは返事をすると、立ち上がって一緒に部屋を出ていった。

 さあ、これから城を壊すぞっ!!



 3人は城の廊下ろうかへ出ていき、破壊の準備を始めた。 廊下の途中で立ち止まっていき、一定の間隔かんかくをあけながら、大きなかたまりを置いていく。

 これは爆弾だ。 爆弾を城中に設置して、一気に建物をくずして壊すのだ。

 城の中は薄暗く、もう明かりはついていなかった。 3人は月明かりを頼りながら、石造りの廊下を走り回り、城中に爆弾を設置していく。


 しゃがんで作業をしていきながら、ふとマツリが言った。


「聞いたか? れい生身なまみか分からない人が、出るって、都市伝説」


 そういって、少しからかうようにニヤッと笑う。 一緒に作業をしていたアキラが振り返って笑った。


「あぁw なるほどな」


 3人は一笑いっしょうにふすようにして、ははっと笑っている。

 霊か生身か……。 もうそんなことは、どうでもいい。 全てが自由になった今となっては、些細ささいなことはどうでもいいのだ。



 3人は爆弾を設置し終えると、城の中を走りながら立ち止まっていった。

 最後の爆弾から離れて距離を取ると、マツリはふところを探って、爆弾の起爆スイッチを取り出す。


「いいか?」


 そういって、ユメのほうを向いて聞いている。 どうやら爆破の最終権限は、ユメにあるらしい。

 うんと、ユメはあっさりとうなずいた。


 マツリがボタンを押すと、それを合図として激しい音が鳴り始めた。 ボンボンと、耳をつんざくような音が聞こえてきて、光と音の炸裂さくれつが辺りに散っていく。

 振動が辺りに響いていき、城が崩れ始めた。 遠くの方から低くて鈍い音が響いてきて、周りの石が徐々に壊れていく。


 破壊されていく城の廊下に立って、ユメは外を見つめた。 辺りは暗く、やみに染まったような空気の中で、細かい火花のような光がチラチラと飛んでいる。

 風がゆるやかに吹いてきて、髪の毛をさらうようになぜていく。 夜の風が、火薬のにおいを運んでくる。

 一枚の紙が、ふわっと顔の横に飛んできた。 つかんで見てみると、自分が今まで書きためていたメモだった。

 ちょうど今いる場所の後ろが、自分の部屋だったらしい。 部屋の中から、次々とあふれるように大量の紙が出てきている。 風に運ばれるようにして、城の外へとい散っていく。


 ユメはなつかしむように手元の紙を見つめていたが、両手でぐちゃぐちゃに丸めていった。 軽く持ち上げて、ポイっと外に向けて投げる。

 そうだ、古いものはいらない。 これからもっと、新しいことをたくさん考えよう。 私は、もっともっと、変なことを考えたいんだ。


 くずれていく城の向こうに、小さく光が見えた。 激しく、日の出のように強烈きょうれつかがやいている。

 光は広がっていき、目の前の景色の暗さをり替えていく。


「ユメ! 祭り、行くぞっ!」


 崩れていく建物の中で、マツリが勢いよく大声で呼んできた。 ユメは振り向いて、走りだす。





 暗い夜のまちの中では、すでに祭りが行われていた。 新しくなった、不思議でヘンテコな街の中で、たくさんの人々が動き回っているようだ。

 幻想的げんそうてきな光がフワフワとっていて、街の夜をにぎやかにいろどっている。 料理がたくさん売られていて、けむりがあちこちにただよっていて、おいしそうなにおいを運んでくる。

 ふだんの料理の店も、今日は祭りモードになって営業しているみたいだ。 他にも、一夜限りの出店でみせなんかも出ていて、料理を売り歩く人もいる。

 お笑いや歌なんかの出し物は、街じゅうで行われているらしい。 自由な場所でおどりを踊って、歌を歌っているのが見える。

 人々は食べ物を食べて、踊りを踊って、街の中を歩き回って楽しそうだ。


 そんな祭りの様子が、突然一変した。 いきなりどこからかにぎやかな音が聞こえてきて、辺りに乱れるように光が満ちていく。

 夜の空気がふるえるように波が起こり、風が人の頭上を吹いていった。

 どこからともなく現れた騒乱そうらんは、街の中の雰囲気ふんいき瞬時しゅんじに変えた。 気づけば、下の暗い地上を残して、街の高いところに、白い光が差すように広がっている。

 急な祭りの様子の変化に、道行く人々がざわめき、辺りを見回している。


 群衆ぐんしゅうの中から、人のさけび声が聞こえた。 上のほうを指して、口々に何かを言っている人がいる。 建物の、高いところを指しているようだ。

 見ると、街の高いとうのような建物の上に、光に照らされた人が数人いた。 老若男女ろうにゃくなんにょの集団が、風をなびかせて、悠然ゆうぜんと街を見下ろして立っている。

 他の高い建物の上にも同じようにして、いくつもの集団が光に照らされて立っていた。


 彼らは一見、どんな姿かたちをしているのか判然はんぜんとしなかった。 姿が不安定にれていて、ゆがんでいるようにブレブレになったように見える。

 これから起きることを知っているかのように、彼らは楽しそうにニヤリと笑って、服装や髪の毛を風に任せてはためかせている。


 地上の人々は、突然何が起こったか分からないようだった。 友達としゃべりながら、食べ物を食べながら、辺りを見回して、上を見上げている。

 これまでの祭りのにぎやかさをそのままに、未知の物への恐れや好奇心が、人の波の上をなぜていくようだ。

 群衆のざわめきが収まらないうちに、不思議な人たちは建物から飛び降りていった。 ふわりと軽く、羽が生えているかのように下の地面へと落ちてくる。


 見慣れぬものをまじえて、人々のにぎやかさが加速し始めた。 夜の街を吹き抜ける風のように、次々に不思議な人たちは街の中へと走りだしていく。


 近くで見た不思議な人たちは、姿が一定ではなかった。 見た目が切り替わるように、次々に色んな姿へと変化している。

 幽霊のようにけた体になったり、生きた人のようになったり、老いた姿になったり、若返ったり……。

 まるで何にもしばられてないかのように不思議な姿を見せながら、笑いながら街を疾走しっそうしていく。


 彼らの姿を見て、人々は口々に驚きの声を上げた。 ある人はものめずらしそうに見つめて、ある人は面白がって楽しそうに手をたたいている。


 不思議な人のうちの何人かは足を止めて、今度はおどりを披露ひろうし始めた。 楽しげに手を頭にやって、お腹にやって、愉快ゆかいな動きとともに踊っていく。

 もともと街中で踊っていた人たちも、それを見て一緒に踊り始めた。 即興そっきょうの花がくかのごとく、様々な流れが軽やかな衝突しょうとつを繰り返しながら、踊りの輪が広がっていく。

 愉快な踊りの様子にせられて、子供がワクワクしたように手を伸ばした。 不思議な人はそれに気づくと、その手を取って笑顔で一緒に踊りだす。


 ヘンテコな状況の連続にさらされて、人々の動きが変わっていった。

 普段の動きから外れるようにして、自由に心の奥から手足を動かしていく。 自然に飛び出た表情の隙間すきまから、なまの感情がこぼれてくる。

 平凡でありきたりな日常から解放されるように、豊かな動きを取り戻していく。


 血のめぐる心臓の音が、空気の間をい散って、祭り全体に広がっていった。

 軽やかな笑顔がちらりと見えて、突き抜けたような笑い声が辺りに響いた。 自然に差しだされた手を取り、踊りへと軽やかに足を踏み出していく。

 人のバラバラな表情が、細かいコントラストを作りだす。 様々な模様がはじきあい、飛び散る中で、せい脈動みゃくどうが大きくうねっていく。



 そんなにぎやかさに満ちていくまちの中を、一人の見慣れた人が走っていた。

 ユメだ。 人の波をすり抜けて、周囲の景色を置き去りにするかのように、街の中を疾走しっそうしている。

 ユメの姿もゆがんだようにブレていて、次々に見た目が変化していた。 どうやらユメも、不思議な人たちの一人だったらしい。


 走りながら、ユメは周囲の様子をながめて笑っていた。 驚く人々を見て、心から笑う人たちを見て、愉快ゆかいそうにしている。

 もしかしたらこれが、マツリたちと一緒に作り上げた、祭りの盛り上げなんだろうか。


「ユメっ!」


 走っていると、ふいに名前を呼ぶ声が聞こえた。

 見ると、不思議な人の一人がこっちに向かって手を振っていた。 透明とうめいな雲のように姿がブレている、不安定な姿をしたソラだ。

 ソラは街中を歩いていきながら、即興そっきょうで他の人たちと踊っていた。 軽やかにスキップするようにいながら、楽しそうに手を振ってくる。

 近くには、街のおさのハルの姿もあった。 ハルも不思議な人のようで、老いたり若返ったり、姿がとどまることなく変化している。

 小さな子供と手をつないで、一緒に踊っているみたいだ。 ハルもこっちに気づいて、はじけるように笑いながら手を振ってきた。


 2人に手を振り返して、ユメは笑いながらその場をけ抜けていく。

 道を曲がり、力を込めて地面をる。 勢いをさらに増すと、視界が開けた場所に出てきた。


 バンと、今度は突然大きな音がした。 辺りをさぶるほどに、激しい音が街中まちじゅうに鳴り響く。

 上を見ると、空に光が満ちていた。 夜の空をおおいつくすように、大量の色とりどりの光がかがやいている。

 光はあらゆる模様や形を、空にえがき出しているようだった。 物や自然をかたどったような模様が、小さく細かくたくさんうつし出されている。

 光の模様は空の上にとどまるかと思えば、そのまま流れるように地上へと落ちてきた。 街全体に降りかかってきて、やがて地上へと下りてくると、さらには身のすぐそばを流れていく。


 近くにまで来ると、その模様が大きくはっきりと見えるようになった。

 動物の形をした光の模様、星をかたどったような光の模様、楽しく動く植物のような模様、大きな船のような模様……。

 ありとあらゆる模様が、地面の上をフワフワと浮かぶようにして、街の中に川を作っていく。


 光の模様が流れるのと同時に、ざあっと天から水が降ってきた。 バラバラと雨のように降り注いできて、はだと服をらしてくる。

 い散る雨を巻き込んでいきながら、景色はさらに色とりどりに乱れていく。 そばを通り過ぎていく光の模様が、生き生きと動いていておどっているようだ。


 ユメは、心の底から笑いだした。

 目の前はすべてが色と光にまみれていて、く息が気持ちいい。 水が肌を激しく打ってきて、濡れていく服の感触かんしょくをたしかに感じる。

 息の一つ一つが、かがやく雨の中に溶け込んでいく。 走る体の感覚は曖昧あいまいになっていき、私も光の模様の中へ溶けだしていくようだ。


 あぁ、私はこのために今まで生きてきたんだ。 私はこのために、生まれてきたんだ。

 すべて、目の前にあった。

 生も、霊も。 過去も、未来も。 夢も、現実も。

 なにもかもが、全て私のそばにあった。

 すべての可能性が、目の前に開けてる。

 無限の可能性が、今ここにあるんだっっ!!!!


 ユメは笑いながら、光の模様の中を走った。 水に身を濡らし、汗にぐちゃぐちゃにまみれながら走った。

 息を切らして、ただ目の前に広がる色と光の景色だけを見ながら、ユメは夢中になって走っていく。

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