あの人が好きだったときの、あの音楽
好きな人ができると私とその人のテーマソングができる。これは、私が誰かを好きになったときに恋愛ソングばかり聞いてしまうからだ。
王道の曲も聞くが、特にお気に入りにして何度も何度も聞くのは、その時流行っている恋の歌。そして、曲の中に出てくる「君」や「あなた」を好きな人に被せて歌う。
つまり、満を持して恋のテーマソングに選ばれるのは、その時に流行っていた恋愛ソングということだ。私は歌わないではいられないほどの猛烈な恋をしていたのである。
2016年 春
中学3年生で受験生だったとき、私は人生で初めてと言っていいくらい本気で好きな人ができた。その相手は同じクラスの人。これまでの私は、好きな人ができても喋ることができず、遠くから見ているだけだった。
それが、何とか話してみようと頑張ってみるくらいには、その人のことが本当に好きだった。その人と喋る前は心臓がバクバクになるくらい緊張して、喋るときには声も震えそうになったが、何とか喋っていた。
だが、その人は私のことを少し仲がいいくらいの友達で、振り向いてもらえてないことは薄々気づいていた。
桜が散って夏が来て、明日から夏休みという終業式の日に、私はその人と1か月ほど会えないことをかなり悲しく思った。
あれとこれを話そうという話の内容を全て決めてから、なんとか勇気を振り絞って私はその人に話しかけにいった。そして必死に話し終えて、走って学校を出た。
緊張しすぎて話したかったことを一つ忘れていたことに気づく。ああ、あれを最初に話すべきだったのに。もう、いつもうまく行かな過ぎて落ち込む。
そんな恋愛に疎くてうぶな中学生の私は、JYの「好きな人がいること」を聞いていた。ちょうどこのとき、桐谷美玲が主演の「好きな人がいること」という同タイトルのドラマが放送されていて、その主題歌になっていた。
もし、さっきの場所に戻れたら……。今度はちゃんと、できなかった話もするのに。今から5分時が戻ったら、まだ私は好きな人と喋れてるのに。
夏休み明けもその人と喋ることはあったけど、高校受験が近づくにつれて私は勉強に集中できなくなるのが怖くなり、もうこの恋はやめようと思ってやめてしまった。中学を卒業してからその人のLINEは友達に教えてもらったけど、すぐに連絡も途切れてしまった。もう6年くらい顔を見ていない。
2017年 夏
高校1年生になった私は、私が押していたSEKAI NO OWARI、通称セカオワが好きだという他クラスの男の子のことを気になっていた。
その人のことは同じ高校ということでTwitterで新入生をフォローしていたときに見つけた。プロフィール欄に好きなバンドがセカオワと書いてあって、驚いて私からDMをしたのだ。それからは毎日のようにやり取りをしていて、共通の知り合いもいたのでなんとなくお互いのことは認知していたのだが、対面で話したことがない間柄だった。
その後LINEも交換して、仲は深まっていったが、なんせ廊下で見かけても直接話しかける勇気がなく、不思議な関係になっていった。しかも、私の高校は廊下がかなり細かったので、すれ違うときにはだいたいの人を認知してしまうのだ。私は話しかける勇気がなかったので、何とか会わないように廊下を急ぎ足で行ったりしていた。
そんな中、私たちが気まずくならずに盛り上がるのはセカオワの話だった。そのとき、彼らの「RAIN」という曲がジブリ映画のテーマソングに起用されていた。『メアリと魔女の花』だ。私はこれが発表されたとき、もしかしたらチャンスなのでは?と思った。この映画を一緒に見に行くという案だ!
だがしかし、デートを一度もしたことのなかった私は、デートの誘い方すら知らなかった。ミュージックステーションにセカオワが登場してこの曲を歌った夜、その人とリアルタイムでやり取りをしていた。とりあえず、「この映画めっちゃ気になるね!」と、意を決してLINEしてみた。気になるね、と言うのはお誘いの一歩手前の言葉だと思っていたし、向こうも意識するだろうと思っていた。
私の想定では、「俺も俺も!」となって、「じゃあ観に行く?」って流れを想定していた。
どきどきしながらスマホをつけたり消したりしながら返事を待っていると、なんと返ってきたのは「そう? 俺あんまりジブリ興味ないんだよね笑」と一言。
きょ、興味がない。興味が、な・い。
……興味ないだとお!?!?
わ、私にも、興味がないのね。(泣)
この返事をもらってからは、この人って私に全然気がないんだ、ただ音楽の趣味が合う友達だと思われてたんだ、と思ってかなり落ち込んでしまった。その後はこの人のことがどうでも良くなってしまって、友達に「なんか違ったわー!」と宣言してこの恋を終わらせたのだった。
2019年 冬
高校2年生になった私は、色んな恋愛の失敗を通して、わりと好きな人と仲良くなれる人にはなっていた。初めから恋愛の道一本でアタックするのも、相手にバレてしまっては避けられるということも学んでいた。
だから、友達のような、でもちょっとただの友達ではないような、という絶妙な関係性を作りにいっていた。そんなとき、私は友達の友達である他校の男の子に恋をした。男女数人で、高校の近くにあるスーパーのフードコートでお喋りをしていた。その男の子とはインスタのDMでしばらくやり取りが続いていて、もしかしたら付き合えるかも!?とすら思って調子に乗っていた。
その彼は私のストーリーにもかなり反応してくれていたし、これはもう私に気があるものだとハイになっていた。
そんなある時、その人から「こないだ女の子とデートしてきたんだ」と報告を受けた。私は初め、「え、何その冗談(笑)」と返し、これは私を冷かしていて、焦らせる冗談なんだと本気で思っていた。すると彼は真面目腐った顔になり、「本当だよ」と言ったのである。
なんと、冗談ではなくて本当にデートしていたのだ。しかも、探りを入れていったらただの女の子というよりも、実はもう彼女だったことが分かった。17歳の私、人生初めての失恋である……。
さて、この頃私は友達に薦められてあいみょんにハマり始めていた。曲の中の君を、私が知らない女の子と付き合った好きな人に重ねながら。くっそー、彼女がいるならDM続けないでよ!勘違いするじゃん!
私の恋の思い出は音楽とともにあるが、失恋の思い出にだって音楽は傍にいてくれる。
中学3年生で本気の恋をしてから、高校2年生の失恋までを書きました。
次回は高校3年生から大学2年生までを書く予定!