第二話
小松原美保は、教室で注目の的であった。
栗色の長い髪、白い肌、制服からも判るスタイルの良さ。愛想はあまり良い方では無かったが、それを補うに充分すぎる容姿であった。
まあ、あのような高嶺の花が俺の事など完全なる蚊帳の外であろうから、淡い期待など一切しない。
「なあ、俺、小松原に告白してみようと思うのだけどどう思う?」松井の言葉。
「告白って、お前アイツの事何も知らないだろ?」俺だって知らないが。
「だって、思いが募って爆発しそうなんだ!我慢出来ない!!」たった2日で爆発って、よっぽど容量が少ないのだなと呆れる。
「もうちょっと、お互いを知ってからでも良いんじゃないか」頬杖を突いて窓の外を見る。青空が広がっている。教室にいるのが馬鹿らしいくらい良い天気だ。さらに馬鹿の話をきいているので尚更であった。
「でもさぁ、のんびりしてたら他の奴と……」言いながら松井が指差した。その先には、目をハートマークにした、男子生徒達が小松原を凝視していた。
「発情期の馬鹿ばっかり……」俺は深い溜息をついた。
「ちょっと良いかしら?」背後から声が聞こえる。振り返ると知らない女子の姿。学校の中で、制服だから学生なのは間違いない。
「えっ、俺?」自分の顔を指差す。
「そう、ちょっと一緒に来てくれない?」軽く目配せしてから、俺の意思を確認しないで歩き出す。俺は、松井と目を合わすが、松井は真顔で何かに怒っているような表情を見せた。
「ちょ、ちょっと……、待って……」仕方なく彼女の後を着いて席を立つ。
「あなたはいいわ」一緒に来ようとした松井を制止する。さらに松井の顔は不機嫌になった。