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涙のゆくえ  作者: かすき
たまり場
3/4

3

ショッピングモールの地下にあるケーキ屋へと連れてこられた。どうやらカフェが併設されているらしい。


「ここよ、私のお気に入りなの」

「美味しそうなケーキがたくさんありますね」


色とりどりのケーキがショーケースに並ぶ。抹茶のショートケーキなど珍しいものもあった。


「私はこれね、ショコラケーキ。これしか勝たん」


どうやらすでに何を食べるか決めていたらしい。きれいなチョコレートケーキだ。タルトにチーズケーキ、何にしようか迷う。


「まだなの?」

「少しぐらい待ってくださいよ、すみません」


店員さんに声をかけて会計をする。結局僕はショートケーキにした。ショートケーキなら間違いはないだろう。


「お持ち帰りですか?」

「ここで食べたいんですけど……」

「申し訳ありません、ただいま満席になっておりまして。お待ちいただければご案内出来るのですが……」


店の奥の方を覗くと席は埋まっていた。3時というおやつどきだし仕方がないだろう。


「どうします?待ちますか?」

「んー、あなた、映画館の事務所は借りられるかしら?人に聞かれたらダメではないけど積もる話もあるし」

「いいですよ。やっぱり持ち帰りでお願いします」

「ありがとうございます。お買い上げありがとうございました」


さわやかな笑顔で店員さんは僕たちを見送った。



映画館の目の前にお客さんらしき人がいる。……映画館を閉めるのを忘れていた。慌ててお客さんに駆け寄る。


「大変申し訳ありません、諸事情がありまして少しの間席を外しておりました。何か見ていかれますか?」

「スタッフさんがいないのでびっくりしました。そうですね、あれを観たいです」


お客さんが指を指したのは流行りの映画だった。やはり人気だ。


「かしこまりました。今回はこちらの不手際ですのでお代は結構です。ではこちらに」


館内に入りチケットを渡し、場内へと案内する。 


上映開始すると後ろからついてきた彼女がボソリとつぶやく。


「……ここまで仕事できないなんて。ありえないわ」

「いつもはもう少し出来ますから」


流石にここまでポンコツだとは思われたくない。説得力ないなとは思いつつ早口に弁明する。


「まぁいいわ、私達は事務所に行きましょ。ほら、案内しなさいよ」


うなずいてロビーを進む。はしっこにあるスタッフ専用口のドアを開けて招き入れる。


「ここです。どうぞ」


部屋の中は少しごたついているが、座るスペースはある。軽く荷物を片付けて座ってもらう。とは言っても散らばってる物を一箇所にまとめただけなのだが。


「そうね、回りくどいことは嫌いだからズバリ聞くわ。……あなた、人間?」


スッとパイプ椅子に腰掛けた彼女が尋ねてきた。言葉が空間に静けさをもたらし、時計の秒針音がやけに大きく響き渡った。









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