表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
涙のゆくえ  作者: かすき
たまり場
1/4

1

横浜のとある映画館にて男が一人働いている。その男は慣れているのか気にしていなさそうであるが、客はちらちらと男に視線を投げかけていた。男の顔立ちはとびきりの美形ではないが、よくよくみると筋の通った鼻に薄い唇、切れ長の一重とと整っている。だが、客が興味を持つのはイケメンだからなのではない。髪が老人のように真っ白なのである。若々しい顔と動きに白髪というアンバラスさが男を目立たせていた。


(この次もこの映画か。興行主にとってロングヒットするのはいいんだろうけど、そろそろ飽きてきたな……。)


チケットもぎりをしながら来場特典を客に渡していく。老若男女幅広い層に当たった映画らしく色んな人がシアターへ入って行った。上映開始時間間際に一人の少女がチケットを握って駆け込んでくる。走ってきたのか少し息が上がっている。


「もう始まってしまいましたか?」

「今は宣伝を流しているので本編はまだ始まっていませんよ。場内は暗いのでお気をつけて下さい」

「ありがとうございます」


その少女はお礼を言うとするりとドアの向こうへ消えて行った。


「あ、特典渡し忘れたな……」


あまりにも流れるように場内に入って行ったので渡すタイミングをすっかり逃してしまった。あとで渡そうと一つだけ特典を片づけずに近くのテーブルに置いておく。


(たしかあの子の特徴は、)


出てきた時に見逃さないよう、どんな子だったか思い出していく。髪は真っ黒で、白いリボンでポニーテールをしていた。そして、服は膝丈ぐらいの水色のワンピースに黒いローファーを履いていたような。さっき会ったばっかりなのになかなか思い出せないものである。


「さて、あと1時間半ちょいかな」


どっかりと入り口前の席に座って、もしかしたらあとから入ってからかもしれない入場者を待つ。やることがなくて暇すぎる。仕事中だからスマホも触れず、手持ち無沙汰だ。できることは椅子に座って寝るだけである、とばかりに目をつぶる。もちろん、本当に寝るつもりは……なぃ……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ