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自己評価が低い私はころっと男に騙されて貢がされていましたが、仲が最悪のお兄様が何とかしてくれました

作者: エリー

設定などふんわり、ちゃっかりしてます。ご容赦ください。


楽しんでいただけると嬉しいです。

 僕には可愛い妹がいる。


 可愛すぎるから、それはそれはいつも遊んであげていた。


 お花が好きみたいで、花冠をメイドと作っていたから、もっとかっこいい物を作ってあげようと厨房に入って使わない鳥の骨を貰って一生懸命加工してスカルヘッドの冠を作ってあげた。


「おにぃさま…ヒィィィィ」


 一緒に森に行った時に妹はフワフワな髪の毛に沢山のリボンを付けていたんだ。

 だから、僕はそれよりもかっこいいものを探してリボンの代わりに髪に括り付けてあげたんだ。


「おにぃさま…ヒィィィィ取ってくださいうわー--ん」


 泣き声を聞いた護衛騎士が飛んできて、妹の髪の毛を見て一匹ずつカエルを外してあげていた。

 せっかくかっこよかったのに。

 護衛騎士には「女の子はかわいいお人形やお花が好きなんですよ」と言われた。


 商人が邸に来た時に指輪やネックレスをキラキラした目で見ていたので、かっこいい指輪を作ってあげたんだ。


「お、おおおにぃさま…ヒィィィィ」


 その時は幼馴染のレオナルドが外してあげていた。フェイクの目で作った指輪でかっこよかったのに。


「はぁ…。クラウディオ。いいかげんにリリアナをいじめるのは止めてあげなよ」


「ええ!? 俺は全くそんなつもりは無いよ! 滅茶苦茶可愛がってるよね!?」


「いじめにしか見えないよ。全く。聞いたよ。髪の毛にカエルを括り付けたり、スカルヘッドの冠を作ったり」


「かっこいいだろ!」


「男の子の喜ばそうとするかっこいいは、女の子の悪夢でしか無い!」


 そんな事ばかりやっていたら、リリアナは僕を避けて部屋に引きこもりになり、レオナルドが来た時だけはお茶をするようになった。


 なのでレオナルドの言っていた事を聞いて、かっこいいを止めて僕のはまっている実験を一緒にしようと無理やり部屋から引っ張り出すようにした。



「さあ、リリアナ。これは髪の毛が水色になるポーションだ! リリアナは水色が好きだろ?」

「ええ、あの、好きですが、その、このポーションはどうしたのですか?」

「僕が作ったんだ。リリアナの金髪が水色になるぞ! 喜べ! さあ飲め!」

「クラウディオお兄様、私は金髪のままで…」

「これを飲めば水色の可愛い髪の毛になるんだ! 何を迷うことがある!」

「え、まって!」


 無理矢理リリアナに飲ませた。


 ボフン


 すごい煙がリリアナの髪の毛から立ち昇った。そしてリリアナの髪の毛はチリチリになってしまった。色は金髪のままだった。


「まあ、リリアナ気にするな。そう変わらない。髪の毛はすぐ伸びる」


 その後、メイドの悲鳴とリリアナの泣き声が聞こえてきた。暫くリリアナは部屋から出てこなくなった。


 レオナルドがウィッグをプレゼントしていた。


 その後も俺の実験ポーションをリリアナに飲ませまくった。


「これは絶世の美人になるポーションだ」


「これはグラマラスになるポーションだ」


「これは頭が良くなるポーションだ」


「これは魔力が上がるポーションだ」


「これは…」


 ありとあらゆる物を試して作っては無理やりリリアナに飲ませた。

 一度も成功したことは無く、リリアナは毒で寝込んでしまったり、全身が緑色になってしまったりした。


 メイドが呼んだ魔導士からこれ以上ポーションを飲ませるのはリリアナの生命を脅かすことになると言われてポーションを飲ませる事も諦めた。


「何で君はリリアナをそんなに酷く扱えるんだ。可愛い妹だろう。すっかり君に怯えてしまっているぞ」


「俺はただただリリアナが可愛いだけで、いつも構い倒したいだけなんだよ」


「女の子が喜ぶやり方があるだろう」


 リリアナはレオナルドに会う頻度も減っていって、部屋に引きこもりっぱなしになった。


 部屋の鍵は頑丈になり中々部屋に入れなくなり、顔を見る事も殆んど無くなってしまった。


 レオナルドには相当文句を言われた。どうやらレオナルドはリリアナの事が好きらしい。


 そうは言ってもリリアナは部屋から出てこない。メイドに部屋で何をやっているのか聞くと「本をお読みになられています」それだけしか答えてもらえなかった。


 リリアナは貴族が通う学園に入る前の、交流を深めるお茶会にも行かず(行けず)に部屋に籠っていた。



 ◇



「お兄様は、私が醜いから意地悪ばかりしてくるのでしょう?」


 毎日のようにリリアナに聞かれるメイドは心を痛めていた。


「そうではないのです。お兄様はリリアナ様の事が可愛くて構いたくてしょうがないのです」


「嘘よ 、そんなの …うぅっ」


 そしてポーション事件が始まった。


 髪色が汚いから、美人じゃないから、グラマラスじゃないから、頭が良くないから、魔力が少ないから、全てをネガティブに捉えてしまっていた。


 クラウディオ様のリリアナ様に対する乱暴すぎるスキンシップは、内気なリリアナ様には、心をどんどん閉ざしていく要因にしかならなかった。


 時々いらっしゃるレオナルド様がリリアナ様にお優しくしてくれるのが救いだけれど、リリアナ様の状況は深刻だった。



 ◇



 クラウディオ様が学園に入られて、少しだけ邸の中に平穏が訪れたような気がした。


「お嬢様、今はお兄様は学園に行かれていらっしゃいますので、少し庭園に出てみませんか?」


「私が庭園に出たら、全ての植物が枯れてしまうわ」


「そんな事はございません。この花瓶のお花をご覧くださいませ。枯れておりません! ね、外に出てみましょう」


「邸の人達が、私の醜さに驚いて辞めてしまうかもしれないわ」


「そんな事はありえません! 実際に私は辞めておりません! リリアナ様はお美しいのですよ!」


「アンはこんな私にも優しいのね。ありがとう。無理やり言わせてるのね。ごめんなさいね」


 ああ、この自己評価の低さとネガティブさをどうしたらいいの? 学園入学まで1年を切ったというのに。


 実際リリアナ様はとても美しい。すべては兄のせいなのだ。旦那様と奥様が外遊から早くお戻りになってくれれば。



 ◇



 そうこうしている内に、リリアナ様も入学の時期がやってきてしまった。


「さあ、リリアナ様。制服に合わせて可愛い髪型にしましょうね」


「アン、私がそんな事をしたら笑い者になるだけだわ。顔が隠れるように下ろして。そして用意してもらったメガネをして行くわ。目立たずにひっそり生きるの」


「リリアナ様、そんな事をおっしゃらずに。せっかくの学園生活です。リリアナ様は薬師科でお兄様は魔導師科ですので会う確率も少ないかと思います。学園生活を楽しんでください」


「ポーションは、あんなに飲まされたから、自分で解毒出来るように作ってたの。学園でもひっそり作れればそれでいいわ」



 ◇



「ねえ君、名前は?」


「え、あの、リリアナ・カレスティアです」


「とても可愛いね。誰よりも可愛いよ。リリアナちゃんは薬師科なんだね。ポーション作るのが好きなの?」


「ええ」


「可愛い君が作るポーションを飲んでみたいな。どんなポーションを作れるの? まだ入園したばかりだから作れないかな?」


「あ、えっと、回復ポーションは一通り…作れます」


「可愛いだけでなくリリアナちゃんは才能もあるんだね。1日どれ位作れるの?」


「1日だと、30本位は作れます」


「俺さ、あ、名前まだ言ってなかったね。セシリオ・アラニス。よろしくね」


「アラニス様、よろしくお願いします」


「セシリオって呼んでよ。でね俺さ騎士科なんだけど、いつも訓練で傷だらけになってポーションが足りないんだよね。お金もかかっちゃうし」


「かわいいリリアナちゃん、俺の為にポーション毎日作ってくれない?」


「え、あの…」


「俺達、もう付き合う前提って事でいいよね? 可愛いリリアナちゃんが俺の為に作ってくれたら俺騎士科で頑張れるなー」


「私のポーションでいいんでしょうか?」


「リリアナちゃんのがいいの! 毎日出来るだけ沢山ちょうだいね! 可愛いリリアナちゃん大好きだよ! 愛してる!」


「え、あ、頑張ります…」


 それから、リリアナはセシリオに毎日、毎日ポーションを届けた。


 ポーション自体、低級ポーションでも高価なので、すぐに学園中の話題になった。


 話題になったのには他の理由もある。


 セシリオ・アラニスが騎士科の遊び人で、都合のいい金づるを見つけたからだ。そしてポーションを売りさばいては恋人達と遊び歩いている。


 知らないのはリリアナ・カレスティアだけで、都合のいい女と言われていた。



 レオナルドはクラウディオを呼び出して、リリアナがセシリオにポーションを貢いでいる所を見せた。


 いつも学園の食堂にいるセシリオにリリアナがポーションを籠に入れて持ってくるから、周知の事実となっているのだ。


「僕はさ、この原因は君だと思うんだよ」


 レオナルドがかなりお怒りだ。


「リリアナがあんな女ったらしのひも男に、貴重なポーションを毎日毎日貢いでいるなんて。君のせいで自己評価の低いリリアナは『可愛い、才能があるね、好きだよ、愛してる』でころっと落ちちゃったってさ」


「僕はいつもショックを受けているリリアナを慰めるばかりだったからね。で、今、君の可愛い可愛い妹が、貢がされて好きだと騙されてる訳だ。どうするの?」


「さすがに、学園に入ってから、リリアナにやってきた事は酷い事だったと理解してる。謝ろうにも中々会えないんだ」


「言い訳だな」


「まずは、リリアナの性格というか、自己評価の低さを何とかしようと思う。見た目も」


「どうやって?」


「この間クラスの女子から流行ってる扇を教えてもらったんだ。リリアナに渡そうと思って持って歩いてたんだけど、これにちょっと手を加えようと思う。ただ邸の中でもリリアナに会えない。協力してもらえないだろうか」


「分かった」



 レオナルドはスタスタと歩いて行ってリリアナを捕まえ、困惑しているリリアナに「今日リリアナの邸に寄るから一緒に帰ろうね。いいよね?」


 そう当たり前のように言うと、リリアナが返事をする前にセシリオが割って入って来た。


「僕の可愛い可愛いリリアナちゃんに何か用かな?」


「君は可愛い可愛い子が何人いるんだい? 僕はリリアナに用があるから話しかけてるんだ。邪魔しないでもらいたい」


「いやぁ僕たちは、ねぇリリアナちゃん。ほら見て? リリアナちゃんからも、毎日プレゼントのポーションをこんなに貰ってる訳。愛の深さがわかるだろ?」


「まあ、僕も幼馴染なんでね、家同士の付き合いがあるんだよ。じゃあリリアナ帰り迎えに行くから」


「レオナルド様…」



 ◇



 放課後、レオナルドがリリアナを迎えにきて、一緒に馬車に乗るとクラウディオお兄様が乗っていた。


「ヒィィィィ レオナルド様酷いですわ」


 ひきつけを起こすんじゃないかと思うくらいにリリアナが泣き出した。


 2人とも黙って泣き止むまで見ているしかなかった。


 邸に着いた頃には泣き疲れて、ぐったりしていたリリアナをレオナルドがサロンへ運んだ。


「リリアナ、今まで本当に申し訳なかった。信じて貰えないかもしれないが、いじめていた訳じゃないんだ。リリアナが可愛くて構ってただけなんだ。全てリリアナが喜ぶと思ってやった事なんだ」


「ヒィィィィ 嘘よ!」


「本当なんだ。学園に入って女子から、それは無いと酷く怒られて初めて分かったんだ。俺のかっこいいと思ってた物はリリアナの恐怖でしかなかった事にやっと気付いたんだ」


「かっこいいと思っていた?? まさか! 思い出すのもおぞましい! じゃあポーションは?」


「かっこいいをあまり喜んでくれないなと思ったから、自分がはまっていたポーションなら、リリアナもはまってくれて喜ぶだろうと思って。勝手な思い込みだと怒られたよ」


「すぐには、許せそうにはないですわ」


「うん、それは分かってる。ただ、リリアナが、ちゃらいひも男に騙されてるのが耐えられなくて。それは俺のせいだと思うから」


「騙されてなどおりませんわ。付き合う前提って言ってらしたもの。かわいいって。好きだ、愛してるって」


「付き合う前提だろ? 付き合って無いじゃないか。それなのに毎日ポーション貢がされてるじゃないか」


「私からのプレゼントです!」


「あいつからは何かプレゼント貰ったのか? 毎日プレゼントくれるのか?」


「見返り等、求めていませんわ!」


「じゃあ、頼む。この扇だけ使ってくれ。相手がリリアナに本気だったら何の問題も起こらない。レオナルドの保証付きだ。いつも持っていてくれ」


 差し出された扇は今流行りの物でとても可愛かった。


「分かりましたわ」


「リリアナ、今新しいポーションのレシピを作っていると聞いたがそれはいつ完成する?」


「レオナルド様、もう完成しましたわ。明日ポーションと一緒にレシピもセシリオ様に渡そうと思って」


「ん? それは何故?」


「ポーション作りの練習をしたくて、丁度私が完成させたポーションの事だったんですって」


「そっか、完成した事はまだ知らないのだよね? 先に見せて貰ってもいいかな? 魔術師としても研究したい。幼馴染のよしみでどうだろうか?」


「レオナルド様にならいいですわ」


「研究が終わったらすぐに返すよ」



 ◇



 翌日もポーションを持ってセシリオ様の所に行った。


「やあリリアナちゃん。今日も可愛いね。ポーション持って来てくれた? じゃあそれこっちに」


 言おうと思った言葉が何故か出てこない。そして手が勝手に動く。


「リリアナちゃん? どうしたの? あ、好きだっていってないから拗ねちゃったの? もう可愛いな。さあ、はやくポーション頂戴。次の授業で必要なんだ」


 手が勝手に扇を取り出しパサッと開いた。


 開かれた扇には4つの言葉が書いてあった。


『お断りよ』

『さあ、どうかしら』

『あら、そうお考えなんですね』

『ごきげんよう』


 口が頑張っても、このどれかしか言えないらしい。お兄様…



「リリアナちゃん? あんまり焦らされるのは好きじゃないな」


「あら、そうお考えなんですね」


「えっ? リリアナちゃん? 怒っちゃった? ごめんごめん冗談だよ。じゃあポーションいいかな」


「さあ、どうかしら」


「リリアナちゃん? どういう事?」


「ごきげんよう」


 呆気にとられてるセシリオ様を置いて走って逃げた。


 腕を掴まれてびっくりして振り向くとレオナルド様だった。


「さっき、悪くなかったよ。後、レシピありがとう」


「お兄様、一体どういうつもりかしら」そう言いながら籠にレシピを入れた。


 凄い足音と共にセシリオ様が走って来た。


「どういうことだ! ポーションを寄越せ! お前みたいな地味な女に優しくしてやってるんだ。有難く思えよ!」


「お断りよ」


 セシリオ様は私から籠をひったくって持って行ってしまった。


「彼の正体がわかっただろう?」


「私って、地味な女な上にちょろいのね」


「リリアナは地味じゃないよ。僕が知ってる。僕は小さい頃からリリアナの事が大好きだった。今回の事があってすごく後悔したんだ。だからこれからは、僕からはいつでも気持ちを伝えるね。リリアナ大好きだよ。世界で一番かわいい」


「え、ええ!?」


「明日は学園がお休みだからデートに行こう。リリアナに似合う洋服を買いに行こう。楽しみだね」


「レオナルド様!?」




 ◇




「レオナルド様とデートに行くみたいなの」と言ったらアンが張り切ってメイクをしてくれた。


「今日も太陽の様に輝いているね。美しくてクラクラしてしまうよ。愛してるよリリアナ」


「あ、あの、レオナルド様。いつも通りで」


「そんな事してたら、君は、またちゃらいひも男にころっと落ちてしまうだろ?」


「そんな事ありません!」


「ゆっくりでいいから、僕の事を好きになってね。フフ顔が真っ赤だね」


「そんなに好き好き仰るからです」



 ◇



 リリアナに似合う明るいパステルカラーのふんわりしたドレスを選んだら見違えるように輝きを増した。


「みんながリリアナの事を見ているね。困ったな」


「レオナルド様は大袈裟すぎますわ」



 ◇



 数ヶ月後、レオナルドの思いは実りリリアナと付き合う事になった。


「やっぱり私はちょろいのですわ」


「もう僕以外に好きにならなければ何も問題ないじゃないか」


 その時、凄い形相のセシリオが近づいてきて怒鳴り始めた。


「貴様! あのレシピはどういう事だ! 何故高額の使用料金を請求されるんだ? ん? リリアナちゃ…ん?」


「ごきげんよう」


 そう言って、リリアナとレオナルドは場所を移動した。


 レシピはレオナルドがリリアナから借りた時にリリアナの名前で特許を申請していたのだ。


「まあ、まて、待ってくれ。ポーション位、今まで通りくれてもいいじゃないか」


「お断りよ」



 お兄様の扇は中々役にたっている。


最後までお読みいただきありがとうございました(*'ω'*)


是非ブックマークや★★★★★で応援していただけると励みになります。


よろしくお願いいたします(*- -)(*_ _)ペコリ

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