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95/土


やって参りました、第3回公式イベント!


今日の昼12時から、明日の日付変更までの36時間でダンジョンを攻略し、様々な要素のランキングを競うのが、今回の大まかな内容になる。


ダンジョンがそこにあることは、一般的に知られていたことらしく、しかし封印と護国獣、そして国が厳重に守っていることで、国民は安心して暮らしていたらしい。


何故、そんな情報だけで安心していられるのかといえば、ダンジョンの場所が王城の地下だからだ。


そんな場所にあるダンジョンを王族が蔑ろにするはずもなく、遷都することなく住み続けていることが、国民の安心にも繋がっているのだという。


そんなダンジョンが一般に開放される。


王都から各所に向けて行われた国内放送後は、大層荒れ…ることもなく、恙なくイベント当日を迎えた。


封印が解けてもなお、遷都を考えない王族と、放送で王族の脇を固めていた二人の老人が絶対的な安全を保証した。ただそれだけで国民は納得してしまったのだ。


それだけ王族と老人二人への信頼が厚いのか、国民全ての楽観的な感性を心配するべきなのか悩むところである。



時刻は正午に差し掛かる11時50分、場所は魔術士協会地下訓練場。前にマーリン爺と魔力感知などの特訓をした場所である。



「ダンジョンは主に、2つに大別されます。侵入者毎に別空間のダンジョンに飛ばされる迷宮型と、全ての侵入者が広大な同じ空間を探索することになるオープンフィールド型。今回開放されるダンジョンは前者、迷宮型ですね」


「中で他の冒険者との鉢合わせはないってことか」


「ご明察です。迷宮型の特徴は、洞窟型であること、挑むたびにルートが変わること、救援が望めないこと、基本的にボス部屋と呼ばれる階層が10階層毎にあること、ですね」



今回のイベントみたく、二日間で大勢が押し寄せてくるような場合にはうってつけのダンジョンということだろうか。


その代わりに、普段NPCが利用するには、救援不可や、マップ作成が無意味だったりと、長期的な利用には不向きな側面もあると。



「今回開放されるダンジョンはどんなモンスターが出てくるんだ?」


「私が産まれる以前より封印されていたダンジョンですので詳しいことは分かりませんが、ダンジョン名は【人魔ダンジョン】、主な生息モンスターは人型で、最下層は判明しておりません。低階層ならばそれほど難易度は高くないでしょうが、深層に行くにつれ難易度は増していくと思われます」


「一筋縄じゃいかないか…」



人型ってことは、ゴブリンとかってことだろうか。


難易度が増す、というところを一番嬉しそうに話すのはどうかと思うんだ!



「それにしても間に合って良かったですわね」


「うんうん。レンテの前の格好じゃ、誰がどう見ても駆け出しだったもんね!」


「そりゃ、上等なものなんだろうけど…」



別の話題で盛り上がってたセレスティア殿下とディーネが、こっちの話が一区切りしたことを察してか、会話に混ざってきた。


ちなみに、シルフは物珍しそうに周囲を見回し、テネブは少なくない視線におどおどしている。



「あら、お気に召しませんでしたか?我が国の魔術師団でも採用されているローブなのですが」


「性能は申し分ないよ。ただ…」



そう、性能は申し分ないのだ、性能はね…。



[魔銀糸のローブ]耐久:100/100

種別:装備/防具〔胴〕

rank:40 品質:C+ レア度:秘宝級

生産者名:プリムス王国裁縫士協会

要求ステータス:INT50/MND25

M・ATK+15 DEF+20 M・DEF+60

追加効果:【魔力親和】【魔力障壁】【自動修復】

魔銀(ミスリル)を主食にする蜘蛛型モンスターが製糸した特殊な糸で作られた魔術士用のローブ。

魔銀の性質を引き継いでいるため、非常に魔力に親和性があり、魔術の発動を補助してくれる。



右胸部にワンポイント、樹と妖精の刺繍が施されたシンプルな白のローブだ。


ミスリルの性質を受け継いでいるという割には、シルクのような肌触りで、大変満足な出来なのだが、いかんせんお揃いというのは恥ずかしい…。


それに加えて、この刺繍。


王女二人は、自国のエンブレムだというそれは、テューラ殿下は剣に蛇が巻き付いたもの、セレスティア殿下は慈愛に満ちた精霊が優しく抱擁しているもの。


俺を示すエンブレムみたいなのが勝手に考えられている事実に驚愕だね!


隠させる気がないところが一番頭が痛い…。


ちなみに、セントルムの魔術師団とやらが黒ローブを採用しているので、我々は白にしたそうです。


ついでに新調した杖()も見ておこうか。



[精霊大樹の枝]耐久:100/100

種別:装備・アイテム/武器〔杖〕・素材

rank:200 品質:A+ レア度:伝説

要求ステータス:INT300

ATK+50 M・ATK+638

追加効果:【精霊の祝福】【消費MP削減(中)】

精霊界でしか育たない精霊樹の中でも、数えるほどしか存在しない精霊大樹から剪定された枝。

魔素が溢れる大地が育んだ精霊樹の素材は魔術適正が高く、その枝は加工前でも杖としての役割を果たす。



はい、分不相応な()です。


要求ステータスを満たしてないと、性能90%減みたいなナニカなのだが、それでもレインやセシリアさんが貸してくれた杖に迫るという恐ろしい性能の枝だ。


木の棒なんかも、素材でありながら武器としての性能を併せ持つらしく、これもその一種なのだろう。まあ、素材のまま杖の性能を持つアイテムは他に聞いたことないが…。


追加効果の【精霊の祝福】は、魔術系スキルを強化(小)してくれ、魔術系スキルの消費MP削減(小)してくれる優れものだ。


【消費MP削減(中)】は読んで字の如くだが、こっちは魔術以外の武技でも効果があるらしい。まあ、勿論杖を装備している時だけ享受できる効果なので、他武器種の武技なんか使うタイミングはないのだが。


ちなみに杖がなかったので、慌ててセシリアさんのところに駆け込もうとしたところ、ディーネが教えてくれたことにより判明した枝さんの性能だったりする。


前に世界樹の実のお礼に色々と渡された素材の一つだ。


見た目は枝というか、若木の幹なのだが、出来るだけ扱いやすそうなものを選んだとはいえ、やっぱり枝なのでちょっと不恰好です。



「そろそろ時間になりますね」



《第3回公式イベント〔希望と絶望!?ダンジョンドリーム!!〕を開始致します!!》

《全てのプレイヤーにチャンスが巡るよう、様々なランキングをご用意しておりますので、皆様奮ってご参加下さい!》



初めて公式イベントの開催の場に居合わせたが、こんなコールがあったのか。


いや、今までは開会式があるようなイベントだったから、王族やらがこの役割を担ってたのかもしれないな。どっちにしても、イベントを回避してきた俺の知るところではないが。


しかし、ちゃんとイベント名を目にしたのは初めてかもしれない。


今まではプレイヤーが略した闘技大会やら、品評会やらが分かりやすくて、今回もダンジョンイベが端的で分かりやすかったしな。


闘技大会も品評会も正式イベント名は目にしているはずなんだが、覚えていないという事実。



「あの扉の先にある転移陣から、王城の最下層にある[人魔ダンジョンの間]に移動できます。さあ、張り切って行きますよ!」


「「「おー!」」」


「「お、おー」」



元気3名、戸惑い2名。


これ以上目立つ言動はやめなさい!もう手遅れであろうともです!



混雑緩和のために、パーティリーダーが所属する職業協会からの転移陣で移動して、[人魔ダンジョンの間]とやらに跳ぶ。


まだ職業協会に所属していない者は、冒険者ギルド地下から転移できるらしい。


既に転移してきたであろうプレイヤー達の波が向かう先。


重厚で荘厳な巨大な門扉に目を奪われる…暇もなく、逸る王女殿下に手を引かれ、漆黒で見通せない門扉の先に突入した。


我先にと駆けるプレイヤーと同じくらいウキウキした様子のテューラ殿下の横顔は、それはそれは嬉しそうに輝いていた。


不穏です!


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