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89/日

※姫ウサギは主人公が参戦する前から、取り巻き全排除されたことで一つ目の発狂モードを既に発動しています。


うん、諦めることも肝心だな!


聖霊達にはこのままプレイヤー人気を稼いでもらって、俺の防波堤になってもらう方向で!


さっき名も知らぬプレイヤー達の会話で気づいてしまった。



「おい、お前ら大丈夫か!?」


「大丈夫だ!上手く回ってる!その証拠にさっきから誰もデスってねぇ!」


「私たちも段々と姫ウサギのスピードに慣れてきたのかしらね!」



今更、聖霊達に自重を促して現状を瓦解させる方が面倒な未来が待ち受けているに違いないのだ。


基本的に、ディーネとノームが危ないプレイヤーの保護、サラとシルフが迎撃、ルクシアが回復、テネブが行動阻害と隙がなくサポートしてらっしゃる。


妖精達のバフデバフもあって普段よりも快調に動けていることだろうし、俺の存在が段々薄くなっていくような感覚ががが。


そのうち、俺のことを付属品呼ばわりする奴が現れても驚かないぞ!


まあ、変に問題が大きくなるよりはまだマシなのだが、複雑な気分ではあった。



「発狂モード入った!また風だ!」


「更に速くなるぞ、気をつけろ!」



レイドボスとはいえ、何故何時間も戦い続けられるのかといえば、単純に回復スキル持ちらしく、HPだけではなくMPまでも自動回復しているのだからタチが悪い。


だか、テューラ殿下の助言もあり、聖霊達と妖精達のサポートもありで、回復速度をダメージが上回ったことにより、遂に発狂モードまで漕ぎつけた。


五本あったHPゲージを3本削り切ったところで一度、4本目を削り切ったところでもう一度、つまり二度目の発狂モード発動だ。


一度目はプリムス草原のボスのように風を纏っての速度強化と属性付与だけで、行動変化はなかったのだが、今回はそうは行かないだろう。



「来る!タンク踏ん張れよ!」


「来いやァァァアぁ?くそっ、後衛狙いだ!」



三角飛びのような動きで、並ぶタンクの前で地を蹴り、タンクの頭上で空中を蹴り、後衛まっしぐらで突っ込んでくる姫ウサギ。



「はーい、お帰り下さ〜い」



魔術なのか魔導なのか、巨大な水の網が弾丸のような姫ウサギを包み込み、元居た位置よりも後方へと弾き返す。


うん、もう悩むことはやめたので、気にしてませんはい。



「さすが、ディーネ様!」


「ディーネたん、ありがとう!」


「麗しのディーネちゃん…」


「ハァハァ…」



最後の変態がもし何か危害を加えてくることがあれば、徹底的に粉微塵にする許可を出そう、そうしよう。


しかし、被害はなかったとはいえ距離を離し過ぎたか?


いや、速度がさらに二段階上がっている今の姫ウサギなら、この距離も一足で詰めて来るだろう。


と思ったのだが、姫ウサギは想定外の行動に出た。



「乳白色の魔法陣だと!?」


「なにあの魔術!?レイン何か知らない!?」


「分からない。見たことも、聞いたこともない」


「お兄ちゃんは!?」


「分からん!ルクシア、あの魔術は何か分かるか!?」



乳白色とはいえ、白。光属性関連だと思うのだが…。



「あれは月光魔術ですわね。夜、月明かりに照らされる場所でのみ使える魔術ですわ」


「月!?」



その場にいた多くのプレイヤーが月を見上げる。かくいう俺もその一人だ。


月から降り注ぐ淡い光が姫ウサギを包み込む。


警戒していたような魔術ではなかったが、その効果は劇的。残り1ゲージだったHPが、2ゲージ目の半ばまで回復していた。



「おいおい、そりゃあねぇぜ」


「ふっ、楽しめる時間が延びただけだ」


「東郷さんは余裕そうですわね」


「あちゃ〜、また一割切ったら発狂モード追加できちゃったり?」



ヴァング、東郷、マルシェ、アウラの順だ。


他にも口々に言葉を交わしているが、攻略組の殆どが知らない顔で誰が誰か分からない罠。辛うじて分かるのは闘技大会の時に話したアッシュや、かにかま達くらいだ。あとはユズとグレンのパーティメンバー。


今頃になって参加メンバーに顔を向ければ、知らないプレイヤーばかりだが、割と知っている顔もいることに安心感を覚えた。



「月光魔術は再使用までの時間が長い魔術ですわ。この戦闘中に同じ魔術が使われることはまず無いと思っていいのですわ」


「聞いての通りよ!最後のひと踏ん張り、誰も欠けることなくクリアするわよ!」


「「「おう!」」」



セシリアさんの喝で沈みかけた空気が持ち直した、流石だ。


光を霧散させた姫ウサギが特攻の構えを取る。発狂モードを三重に纏う姫ウサギは、前衛を吹き飛ばして後衛を塵に還るのを幻視しそうなほどの威圧感がある…。


俺には目で追うのも難しい速度で突っ込んで来た姫ウサギは、先ほどの焼き直しのようにタンクを躱して後衛に迫ろうとする。



「単調過ぎないか、お姫様よぅ!『獅子落とし』!」



タンクの頭上に到達するよりも先に、ヴァングさんの踵落としの武技がクリーンヒット。姫ウサギはタンクの眼前に叩きつけられた!



「『フレイムスロワー』!」


「『兜割り』!」



なるほど、魔術を先に当てることで精霊化の選択肢を排除したのか。よく即興で組み込めるものだ。


田中さんと東郷から始まった反撃は、攻略組の様々な必殺技が叩き込まれ、あっという間に回復されたHPを削り飛ばす。


堪らず後退する姫ウサギ。



「逃がすな!畳み掛けるぞ!」


「やっちまえ!」



誰が言い出したのか、一部のプレイヤーが飛び出す。



「おい、待て!隊列を乱すな!」



ヴァングさんの声も虚しく、ラストアタックがどうのと競うように突撃するプレイヤーを一瞥した姫ウサギは、空を駆け、天に舞った。


その高さは、地揺れを起こした時の比ではなく。


風の内側に乳白色の光を纏った姫ウサギは、落下の勢いと回転までを加え、まるで意趣返しかのようにその怒れる踵を叩きつけた。



「こ、れは、保ちそうにありません!早くそこから退きなさい!」



咄嗟に土魔法で飛び出したプレイヤーを守ったノームだが、冷や汗を流して警告の声を叫ぶ。


月光属性を纏った影響なのかなんなのか、地揺れのときは反動で動けなかった筈の姫ウサギは、再度天に身を躍らせる。



「何をしている!?早くこっちへ戻れ!」


「おかしいぞ!アイツら倒れて動かない!」


「そういえば、地揺れがこっちには来てない…?」



局所的な攻撃に変わった結果、なんとか回避しても範囲内にいるだけで[気絶]のような状態異常が必中したのか?


くそっ!これではあそこにいるプレイヤーはデスしてしまう!


プレイヤーが可能な蘇生手段が発見されてない今、ここでデスれば、復帰は不可能だ!


勝手に功を焦ったプレイヤーの尻拭いなんてする必要はないが、せっかく完全勝利目前なのだ。ディーネ達の頑張りを無駄にするようなことも出来れば避けたい!


かと言って、ノームが補強するだけでは次も耐えられるか分からないし、一応やり過ぎないように事前に頼んでいる手前、6人で力を合わせて…なんてことはやらない筈だし、流石にそこまでされるのは困る。


しかし、このギリギリの攻防こそ俺が求めていたもの!このままやり過ぎに見えないように完全勝利出来れば、最高の結果で終わることが出来るかもしれない!


なにか、なにかないのか!?


窮地のプレイヤーが助かって、このままギリギリの演出ができて、完全勝利まで可能な、そんな一手…!



「【魔人化】!」


「っ!?レンテ!?」



近くにいたレインが止めようとするが、構わず駆ける!魔人化を使うと、ちょっと速く走れる様になるのだ!


出来るだけ、出来るだけ前に!


初めて使うせいで、その有効範囲が分からない。出来るだけ近くで発動しなければ!



「おい、レンテ!死ぬ気か!」


「戻ってお兄ちゃん!」



グレンとユズの静止の声を無視して二人の隣に並ぶ。


上昇していた姫ウサギが高度を保ち、空を蹴る体制に入った。


これ以上進んでも大して変わらない、ここから試すしかない!



「お前だって使ったんだ、使われたって文句言うなよ!【畏怖】!からの【絶望覇気】!」



俺の低レベルの魔物鑑定では分からないし、そもそも距離が遠すぎて鑑定できない。


だが確実なのは、身体を硬直させた姫ウサギが高所から地面に叩きつけられたことだ。[畏怖]は確実に罹ったはずだ!


全力の一撃を耐えたノームの土魔法は、ただ落ちてきただけの衝撃を耐え抜いていると思うが、土煙に覆われて状況が判然としない。



やがて晴れた土煙の先には、満身創痍の姫ウサギ。HPを残りゲージ半分まで減らしているのを見るに、きっちり[絶望]にも罹ってくれたようだ。ステータス低下で、想定以上の落下ダメが入ったに違いない。


落下ダメであれば、称号【地形を利用する者】の効果も働くしな!


って、あれ?


いやいや、これは独断専行したプレイヤーを守った結果、HPを減らしてしまっただけだからセーフ!セーフだよな!?攻撃はしてません!



そんな葛藤など知ったことかと、必要以上にヘイトを稼いでしまった俺に猪突猛進の姫ウサギ。


これはまっずい!


先程までより明らかに速度の落ちた姫ウサギだが、発狂モード以前よりも明らかに速いし、赤い月の光を浴びる姫ウサギはどう見ても、発狂モードの替え玉ですありがとうございます!


おかしいだろ!![絶望]ってスキル使用不可じゃなかったのか!?


発狂モードみたいな強制発動系のスキルには効果が無かったオチですか?!



「『我、遍く人の子の守護者なり 導き灯す勇者なり 無垢なる魂に救いの手を 黄金郷(エルドラド)』!!」



俺の方が逆に絶望を植え付けられそうになったその時、突如黄金の光が神殿を築き上げ、姫ウサギから俺を護った。



「『神敵を穿ち、邪を祓え 神意に叛く愚者に裁きを 黄金(アウルム)』!!」



俺を護ると霧散した黄金の神殿を構成していた光が、護ってくれたのであろうアウラの黄金の槍に吸収され、姫ウサギの眉間を穿ち、黄金光で追撃、貫通した。


一連のそれを唖然と眺めていると、槍を収めたアウラの一言が意識を引き戻させる。



「やったね、お兄さん!大勝利!」



額に大穴を開けた姫ウサギの五本あったHPバーは全損し、消えていく姫ウサギだったポリゴンが、勝利の花吹雪のように舞う。



《レイドボス〔殺人兎の狂い姫マーダーラビット・プリンセス〕が討伐されました》

《討伐タイムは 11時間23分 です》


《緊急クエスト【ウサギの国の舞踏会】がクリアされました》


《参加者に貢献度に応じた報酬が配布されます》


《参加者の中からランキング毎にトップのプレイヤーへ特別報酬が配布されます》


《最多撃破数報酬は かにかま が獲得しました》

《防衛貢献度報酬は 匿名 が獲得しました》

《戦闘外貢献度報酬は ジョン・ドウ が獲得しました》

《指揮貢献度報酬は ヴァング が獲得しました》

《全体貢献度報酬は セシリア が獲得しました》


《レイドボス〔殺人兎の狂い姫マーダーラビット・プリンセス〕戦のリザルトを発表します》


《最大ダメージ報酬は アウラ が獲得しました》

《累積ダメージ報酬は 東郷 が獲得しました》

《累積被ダメージ報酬は ブラン が獲得しました》

《累積回復報酬は 星海きらり が獲得しました》

《累積支援報酬は 匿名 が獲得しました》

《ラストアタック報酬は アウラ が獲得しました》

《MVP報酬は 匿名 が獲得しました》


〈防衛貢献度報酬の称号【プリムスの守護者】を獲得しました〉

〈累積支援報酬の【範囲付与術】スキルを獲得しました〉

〈MVP報酬の【月光魔術】スキルを獲得しました〉


〈称号【禍いを呼び起こす者】が称号【無欠の英雄】に変化しました〉

〈【英雄覇気】スキルを獲得しました〉


《以上、緊急クエスト【ウサギの国の舞踏会】のリザルトを終了します》

《奮ってのご参加誠に有難うございました。これからもMLの世界をお楽しみください》



〈LV.30に上昇しました〉

〈【杖術】LV.5に上昇しました〉

〈【魔人化】LV.2に上昇しました〉

〈【火魔法】LV.12に上昇しました〉

〈【水魔法】LV.12に上昇しました〉

〈【風魔法】LV.12に上昇しました〉

〈【土魔法】LV.12に上昇しました〉

〈【光魔法】LV.12に上昇しました〉

〈【闇魔法】LV.12に上昇しました〉

〈【魔法陣】LV.6に上昇しました〉

〈【精霊召喚】LV.2に上昇しました〉

〈【MP増加】LV.5に上昇しました〉

〈【知力強化】LV.9に上昇しました〉

〈【器用強化】LV.11に上昇しました〉

〈【魔力感知】LV.9に上昇しました〉

〈【魔力操作】LV.15に上昇しました〉

〈【範囲拡大】LV.7に上昇しました〉

〈【効果増大】LV.5に上昇しました〉

〈【状態異常強化】LV.3に上昇しました〉

〈【夜目】LV.7に上昇しました〉


〈称号【華麗なる付与士】を獲得しました〉

〈称号【不遜なる者】を獲得しました〉


〈【傲慢】スキルを獲得しました〉



怒涛のレベルアップ!


流石にレギオンレイドともなれば、経験値も熟練度も美味しいな!

もう少し格好良い詠唱が思いつく頭脳が欲しい!

誰か詠唱考える助手してくれないかな…ww



この小説が『面白い!』『続きが読みたい!』『う○こは食べたくない!』と思ったらブックマーク、下の評価★★★★★をお願いします!!ダイレクトにモチベに繋がるので、ウッキウキで続き書いちゃいますww

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― 新着の感想 ―
[一言] 大罪が来たと言う事は美徳も登場しそうね
[一言] 中二病御用達の「必殺技事典」なんてのがあってだね。10年近く前の本だけど そこの技から逆引して詠唱を読み、勉強とかどう。
[一言] ボス(姫)に畏怖と絶望をかけたのが不遜ってことかな? 大罪系スキル獲得で魔王化が進みますね
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