87/日
攻略組クランのマスターおかわりです〜
100話達成したらこれまでの人物紹介的なの載せられるように、今のうちからせっせこ書いとかなきゃ…
セレスティア殿下が休息を取っていた宿屋を経由して、作戦本部的なプレイヤーの中心地になっている南門外の天幕を目指している。
「なんでこんな可愛い妹がいること黙ってたの、レンテお兄ちゃん?」
「そうですわ、レンテお兄ちゃん」
「わ、私もお兄様とお呼びした方がよろしいかしら…」
「やめろ!まるで俺が呼ばせてるみたいに聞こえるだろ!セレスティア殿下も真似しなくていいですから!」
くっそ、プレイヤーの視線が痛い…。
こんなことなら、さっさとユズを一人で行かせておくべきだった!聖霊王達に会いたいというから紹介すれば、とんだ誤算だ!
「ねね!わたしも!ユズお姉ちゃんって呼んで!」
「ユズお姉ちゃん!」
「聴いた!?お兄ちゃん今の聴いた!?絶対に幸せにするから、ディーネちゃんをわたしにください!」
「何バカなこと言ってんだ、ほらもう目的地だから落ち着け!」
まったく、ユズもユズだが、ディーネ達もディーネ達である。特にディーネとルクシア!サラは、出会い頭に抱きつかれてからというもの、顔を真っ赤にしてセレスティア殿下の後ろに隠れてしまった。意外だったが、どうやらグイグイ来られるのは苦手らしい。
男の子型聖霊3人に対しては快活に友達のように接していたのだが、女の子型聖霊3人に対しての方が感情が爆発している。大丈夫なのだろうかうちの妹は…。
ところ変わって、作戦会議室という名の天幕の中。
「レンテ君はいいの?スキルの弱点を晒すようなことをして」
「俺は別にPvPを積極的にしたいわけでもないし、特に広まっても実害は無いと思ってるので」
セシリアさんの最期通告に答える。端的に言えば、時すでに遅しだ。
ユズが俺に確認してきた時点で、掲示板なのか、伝聞なのかは知らないが、俺のスキルがコピーされている説とでも言えばいいのか、この予想は一般的にされているものなんだろうしな。
「最強という肩書きを甘く見ている嫌いがあるが、レンテが良いと言うのならば甘えるしかないと拙者は思うがな」
「ふむ、確かにこの情報がなければ攻略は困難を極めるだろうな。いや、攻略というより説得だが」
「既に一部のプレイヤーが、レイドボスの仕様はクソゲーだと運営へ非難囂々という話ですわ」
まあ、予告もなくレベル制限を突然喰らったら、文句の一つも言いたくなるか。このクエストの本来の適正はLV.20以下だと明言されているわけだし、急に前提をひっくり返されたと捉えることも出来るからな。
「非難の目が運営からそこな坊やへ向くだけじゃないかのぅ」
「それは許容できませんね。彼を切り捨てるには、あまりにも功績が大き過ぎる」
庇ってくれそうな流れのところ悪いが、誰だっけ?直前に意見を出した中華風美少女はクラン【運命の輪】のフォルトゥナだが、今庇ってくれそうな発言をした好青年はたしか…。
いや、この場にいるってことは攻略組の有名クランのマスタークラスのプレイヤーなのだろうし、会見の時に見た顔でもある…。
うーむ?
「きちんとしたご挨拶がまだでしたか。【万魔殿】のクランマスターを務めているミルトンです。以後お見知り置きを」
「あ、悪い。レンテだ、よろしく」
顔に出し過ぎていただろうか…。気をつけねば。
「その、庇ってくれそうな流れだけど、今回のことは殆どが俺の不始末なわけだし、その責任くらい俺が持たないと…っていうか」
滅茶苦茶嫌だが、身から出た錆過ぎて言い訳のしようもございませんです、はい。
「それは違いますよ。いくらレギオンレイドとはいえ、我々は貴方がフラグを建てたクエストに便乗しているに過ぎません。感謝こそすれ、非難するなど勘違いも甚だしい」
「そもそも、クエストが始まった時点で、一度獲物を譲ってもらっているわけだしな。その上で俺たちだけじゃクリア出来なかった。さらに文句まで言うってのは格好悪過ぎるじゃねぇか」
ヴァングも続けて擁護する理由を述べてくれる。
「なにも礼というだけではありません。これからも宜しく、という打算も多分に含まれていますので、気にし過ぎないでください」
「商人殿にそう言われると、師匠君も間に受けてしまうかもしれませんぞ」
ホッホッホと笑うのは、彼の方が商人と言われても不思議ではない恰幅の良いローブ姿のおじさんだ。たしか【正邪の偽典】とかいう魔術士職専クランのマスターだったはず。PNは忘れた!取り敢えず、その呼び方は直して欲しいな!
庇うだけのメリットが自分達にもあるとフォロー…うん、多分フォローしてくれたのはジョン・ドウ。
「聞いての通り、レンテ君を見捨てる選択肢なんて最初からないわ。決めるべきは、どう事態を収束させつつ、レイドボスを倒すか。それだけよ」
「そもそもなんですけど、レベルは低いんですよね?参加人数無制限のレギオンレイドとはいえ、何がそんなに手こずる原因になってるんですか?」
さっきまでログアウトしていたので、レイドボス戦の詳しい様子が分からない。ユズから少し聞いたとはいえ、デバフは俺のレベル以下の、言ってしまえば中堅以下のプレイヤーが参加出来ないだけのはずだ。攻略組と呼ばれる彼らにはなんの制限もない。
「まずとんでもなく初速が速い、気づいた時には懐まで迫られているな。幸い物理特化ではないらしく、基本の爪撃は同レベル帯であれば魔術士でも即死するようなダメージは出ないが、ノックバックとついでのように見舞ってくる魔法のダメージがえげつない」
「妾のクランの盾が魔法一つで瀕死に追い込まれた、と言えば分かりやすいかのぅ」
運命の輪は極振りの巣窟だ。つまり、そのタンクはVIT極振りだったわけで。
魔術防御はMNDとはいえ、半分くらいはVITも関係している。攻略組のタンクともなれば魔術対策はしていたはず、それを一撃で瀕死は些か過剰火力に過ぎるのでは…。
「気になったんですが、魔術ではなく魔法なんですか?」
「姫ウサギが使った魔術は火と水だけだ。風と土の魔法陣は今のところ確認してねぇな」
「おそらく、魔法もコピーしているのだと思われますわ」
精霊が共鳴同化しているみたいだし、精霊の魔法は属性指定しなくていいお陰で、他の種族より発動までの時間が速い。
「拙者としては物理透過がこの上なく厄介だな。縦横無尽に跳ね回るヤツをやっと捉えたかと思えば、空振ったときの無気力感よ」
「こちらの魔術は、生来の俊敏さでなかなか当てられないのが悔しいところですな」
「これはレイドボスの仕様だと思うのだけど、既に発狂モードに入っているのも苦戦している一因ね。どうやら、一定数取り巻きを倒すたびにステが強化されてたみたいなのよ。スキルで追加召喚される以外の取り巻きは殲滅してしまってるから、最も力を発揮しているのが今の状態かしらね」
つまり纏めると。
スキルのせいで参加人数が限られ、縦横無尽に駆け回りながら高火力の魔法を撒き散らしてくる、やっとの思いで反撃しても、物理攻撃はスカされる。生半可なPSでは魔術も的を絞れず当てられない。
姫ウサギの物理攻撃も、いくら魔術士が即死ではないとはいえ、空中に打ち上げられていたのを観たあとだと、通常ダメージ+落下ダメージを喰らえば近接職も危ないかもしれない。
といったところだな。
だが、今更俺が参加して、聖霊達の力を借りて一撃のもと葬り去る、というのが悪手の中の悪手であることは馬鹿でもわかることだ。
きっと、「ボスまで独占するつもりか!」などと騒ぎ立てる輩が出てくるからな。
「つまり、俺の役目は、その諸々の問題点を解消するようなサポートってことですか?」
「申し訳ないけど、そうしてもらえると助かるわ」
「簡単そうに言ってくれるじゃねぇか。レイドボス相手にキャリーしろって言ってるようなもんだぞ、出来んのか?」
「やり過ぎないように良い塩梅に調整しないとですね」
「ハッ、言いやがる。だが上等だ、背中は預けるぜ!」
いや、割とマジで、ディーネ達に頼めば低レベルのレイドボスなんて、グルグルに拘束して殴り放題!なんてことになりかねない。かと言って俺一人で全体のサポートなんて無理だ。
みんなの力で何とか勝てました!という演出が何よりも俺に求められている重要な役割!
まあ、一部の厄介プレイヤーの為にここまでの気遣いは面倒だが、その他のプレイヤーに向けても、最初くらいは好印象を残す努力はすべきだろう。
何者にも囚われない奔放さも、他者の誹謗中傷など物ともしない精神的強さも、俺には無いものだ。だったら、自分の努力で多少なりとも大衆の意見を誘導できるのならば、それくらいのことはやってみせる!
待ってろ、レイドボス!
総合評価8000達成!
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書きたいこと書いて評価してもらえるとやっぱり嬉しいですね…。
これからも物語がより面白くなるよう頭の中の厨二病パワー全開にしていくので、拙作を今後もよろしくお願いします!




