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86/日

1月が爆速で流れていってしまった…


ちょっと暇だったので、休憩がてらログアウトしてきて再度ログイン。


この壁自体は聖霊王の誰かが近くにいれば消えないとのことだったので、セレスティア殿下が召喚しているディーネ達がいることだし、壁の維持を任せて休憩させてもらったのだ。


まあ、クエスト始まってからログアウトは二度目だったんだけどな。一度目は割と早い段階で昼飯休憩、二度目は夕飯だ。


かれこれ10時間ほど経過しているのだが、下の彼らはちゃんと現実でご飯食べているのだろうか。ちなみにユズは昼には現れませんでした。



「しっかし、こりゃまた…別の意味で壮観だな」



プレイヤーが次から次に空中へ打ち上げられる様は、ポップコーンが弾け飛ぶ光景を連想させる。



「あれでLV.29だってよ、お兄ちゃん」


「ユズか、どう登ってきたんだよ」


「壁面走行は忍者の基本だよ!基本!」



アホか!よく怖くないな!


こっちは慣れない浮遊でちょっとちびりそうだったというのに…。



「ちなみにお兄ちゃんってLV.29だったりする?」


「プレイヤー鑑定できるスキルか?確かにLV.29だけど」



ボスウルフを倒してもビクともしなかったレベルが、お試しスフィルロック殲滅作戦を2回経たことで、五つ上昇していた。


前よりもレベルが上がりづらくなっているのは、前の時より俺のレベル自体が上がっているのもあるんだろうが、多分下方修正か、経験値取得に条件が付けられたか、何かスフィルロックのあの倒し方がテコ入れされたのだと思っている。


そうだとしても異界が解放された今、多少キャラレベルが先行したところでスキルレベルは追いつくだろうし、スキルレベルが低過ぎることに前ほど悲観はしてない。



「残念!プレイヤー鑑定スキルはまだ見つかってません!正解は、レイドボスがLV.29だからでした!」


「その心は?」


「中ボスの王子ウサギは観てたと思うんだけど、あれのレベルは各方面で一番レベルが高いプレイヤーと同じだったみたいなんだよね。北はヴァングさんの42、南はミルトンさんの39、東は東郷さんの47、西はマルシェさんの43」


「それで何で俺ってことになるんだよ」


「そりゃ、攻略組のレベルを参考にしたにしては低過ぎるし、それ以外で可能性がありそうなのだと、このクエストを起こしたプレイヤーくらいだからね!ってアウラが言ってた」


「正直だな、妹よ」



でもそうだとするのなら、中ボスの王子ウサギよりレベルが低いわけだし、レイドボスの姫ウサギの方が簡単に倒せそうなものだが、実情は異なるようだ。


王子ウサギ戦は、どこも時間は掛かりそうだったが危なげなさそうだった。一番レベルが高いはずの東にいたっては、目を覆いたくなるくらいにボッコボコだったしな。


戦闘愛好家さんがですね…。


なのに、姫ウサギはちぎっては投げ、ちぎっては投げの大暴れ状態。作戦会議で聞いたように、レイドボスというのは厄介な特性でも持ち合わせているのかもしれない。


プリムス草原のボスでさえ通常種より強化されていたのだから、レイドボスなんて当然それ以上の強化を施されているのだろう。


それを裏付けるように、プレイヤー側は総力戦であるはずなのに、半数以下どころか、限られたプレイヤーという感じに減っているように思える。


まあ、時間帯的に夕飯休憩のプレイヤーが多いのかもしれないが。



「苦戦してるのは、今まで見たことなかった(・・・・)スキルを使ってくるからなんだよね〜」


「何だその微妙な言い回し、見たことなかった?」



まるで直近で見たような。



「お兄ちゃん、今朝東郷さんと戦った時に、最初の一撃をスカしたスキル、あれなに?精霊化とか言ってたよね」


「うん?あれは物理攻撃を透過して、自分の魔術系ステを強化してくれるスキルだよ。東郷との決闘で使ったのは、あからさまに物理攻撃だったからだな」


「デメリットは?」


「何でそんなことまで…ってまさか、あのデカブツが使ってくるのか…?」


「多分。確証はないけど、物理が軒並みダメになる瞬間があるの」



マジか。明らかに近接仕様のボスが物理透過って反則なんですが…。


10メートルを超えるドレス姿でおめかししたウサギは、大きさに目を瞑れば愛くるしく見えるのだが、いかんせん状況もスキルも殺伐としすぎだ。



「仕方ないか。デメリットは、精霊化中は魔術ダメージに極端に弱くなること。ひとつの属性しか使えなくなること。最大リミット10分で、使った時間の倍のRT(リキャストタイム)が必要になること。他の変化系スキルと併用できないこと。くらいかな」


「でも、その精霊化?中も四属性の魔術使ってるよ?もしかしたら別のスキル…って、他にも同じような変化系っていうスキルがあるの?」


「俺が知ってるのは魔人化っていう、物理透過とかの劇的な効果はないけど、魔術ステ系を主に、全体的にステ強化してくれる魔術寄りの万能型なやつだけだな」


「もしかしてそのスキルも持ってたり…」


「する。それと、精霊化中に複数の属性魔術を使ってきたんだったら、思いつく可能性はひとつ。精霊を召喚して共鳴同化してるのかもな」


「共鳴同化は精霊を身体に宿すんだっけ。いつのまにか精霊が消えたと思ってたけど、なるほどね」



これ、どう考えても俺のレベルだけじゃなくて、スキルもコピーしてるってことだよな。


四属性の魔術ってことは全部のスキルがコピーされてるわけじゃないんだろうが、その上で精霊化をピンポイントでコピーしてくる殺意の高さよ…。精霊召喚も持ってるみたいだし尚更だ。



「じゃあ、自分のレベル以下の相手のステータスを下げたり、状態異常[絶望]を振り撒くスキルは流石に持ってないよね、お兄ちゃん」


「そんなクソみたいなスキルあるわけない…」


「流石にないか〜。ってことはアレは姫ウサギ特有のスキルか、称号か」



いや、待て。さっき見た気がするぞ…。手持ち無沙汰の暇つぶしにステータス確認してた時に。


【絶望覇気】スキル。


自分以下のレベルの敵と、自分に対して畏れを抱く対象に、ステータスデバフと状態異常[絶望]の付与。


状態異常[絶望]は、スキル使用不可だ。魔術も武技も勿論使えないクソッタレな状態異常である。



「…すまん、ユズ。今朝取得したばかりの【絶望覇気】ってスキルがあったわ」


「なに、お兄ちゃん魔王でも目指してるの?」



違うんです!今朝のは不可抗力だったんです!だからそのジト目をやめろー!



「それと」


「え、まだ何かあるの!?」



すみません…。



「予想でしかないんだけど、【畏怖】スキルってのがあって、対象に状態異常[畏怖]を付与するっていう単純なスキルなんだけど、範囲じゃなくて単体対象のスキルだから成功率が高いらしい」


「らしいって何さ、らしいって」


「俺も今朝手に入れたばかりで使ったことないから分からないんだって!それで、絶望覇気の効果見る感じ、畏怖状態だと絶望覇気を確定で付与できそうだな〜、と」



ほら、畏れを抱く対象に、ってところとか、悪さしそうじゃないか?


状態異常[畏怖]は、ランダムに身体が硬直して行動がキャンセルされてしまうらしい。なんだか[痺れ]の下位互換みたいな状態異常だが、身体が動かしづらくなるだけの痺れよりも、場合によっては面倒かもしれないな。



「見事に未知の状態異常ばかりで、プレイヤーが対策出来なさそうなところがポイント高いね!」



今現在出回っている状態異常回復薬は、毒なら解毒薬、痺れなら解痺薬、といったように薬毎に特定の状態異常しか治せないものばかりだ。


魔術でも、治せる状態異常は魔術毎に決まっていて、俺も最近使えるようになった光魔術LV.10『リフレッシュ』では、[毒・痺れ・眠り]の状態異常しか治せない。


つまり、今日初めて聞いた[絶望]やら、[畏怖]やらは、状態異常を癒すための手段が分からないのだ。



「でも今のところ[畏怖]は情報上がってきてないから、そっちはコピーされてないのかな?いやぁ、お兄ちゃんが順調に成長してるようで妹として鼻が高いよ」


「本当にそう思うなら、そのジト目をやめろ」



俺としては、大勢のプレイヤーに順調にスキルバレしているようで頭が痛いです!


自分からバラすのと勝手にバレるのは、こう精神的に色々と違うから…。


多分本編では触れないので補足。


姫ウサギが四属性しか使えないのは、そういうモンスターだからです。

四方に現れた王子ウサギは、それぞれ火・水・風・土の属性持ちだったりします。

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