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84/日



「私に出来ることならば、お力添え致しますわ。だって、もうパーティの一員ですものね」


「レンテ、わたくしには何もないのですか?そんな面白いことを後ろで眺めているだけなど、断固として認められませんよ!?一応、我が国に迫る危機ですので、王女としても何もしないわけには参りません!」


「いやいや、本音と建前をだな…」 



毎度毎度欲望に忠実すぎませんかね、この王女殿下は…。



「プリムスにはリンダ様もドルクス様もいらっしゃいますからね。異邦の旅人が力及ばずとも、プリムスが被害を受けることなどあり得ませんので」


「アタシは手を出すつもりは無いさね。ひとの苦労を水の泡にした責任は自分で取りな」


「俺も英雄の試練に水をさすつもりはねぇな。まあ、頑張りな!」



俺は何か師匠の邪魔をしてしまっていたようだが心当たりがない…。ドルクスさんも手を貸してくれる様子はないが、何となく師匠も同じ理由なのではないだろうか。


いや、若干呆れているように見えるので、何か俺が師匠の邪魔をしてしまったのは事実かもしれないな。



「え!?私はいいですよね!?私だけ後方待機なんて絶対嫌です!」


「はぁ…。好きにしな」



師匠は意外と苦労人なのかもしれない。






ところ変わって、プリムスの中央広場。


多くの住民が避難してきているこの場所の中心…には転移陣があるので、その側に陣取っている。


聖霊達が手を繋いで輪をつくる姿は、妖精の輪を彷彿とさせるが、あれの派生元がこれなのだろう。


かなり急いだとはいえ、もう残り時間も3分とない。


住人達は、恐怖に囚われている瞳に僅かな希望を宿してこちらを窺っている。



本当にすみません、すみません!一から十まで私目の愚行が招いた結果でございます…!


天を貫いた極光も、今から訪れるモンスターの襲撃も…。


何故魔力暴発の件が、住民が怯えていることに関係があるのかって?


それは【絶望の王】さんが解説してくれました!


彼の獲得条件、一度に1万人のNPCに恐怖を抱かせることなんだって〜。そりゃ、町の近郊で正体不明の極光が、大地から天に延びれば、誰だって何事かと思うよな!すまん!



「『エンチャント・ライト』複合付与魔術『マジカルエンチャント』複合付与魔術『エンチャントオブスローン』」



妖精達と共に聖霊達にエンチャントとバフを盛る。


エンチャントはステータスが高ければ高いほど効果が大きくなるので、聖霊達に掛ければ補正値だけで俺のステの数倍を誇る可能性がある。


ちなみに、セレスティア殿下に頼んだのは精霊召喚だ。


俺だけだとパーティ上限に引っかかって5人までしか召喚できないので、俺が別パーティでルクシアとテネブ、セレスティア殿下が加護を授かっているサラ、ディーネ、シルフ、ノームの四大精霊を召喚してくれている。



「「「【戮力協心】【一心一徳】【禍福は糾える縄の如し】【塞翁が馬】【精霊の絆】【魔力共鳴】【霊力共鳴】【運命共有】【重なり合う心】『精霊讃歌』『魂の回廊』『文殊の知恵』」」」


見事に聞いたことのないスキルばかりだが、それらを重ねに重ねた聖霊達の周囲の空間が歪むように見えるのは、魔力が荒れ狂っているからだろう。


妖精の輪と対比すれば似ているように感じるかもしれないが、あっちを綺麗と表現するのなら、こちらは猛々しいだろうか。


名称的に精霊の絆か精霊讃歌が、妖精の輪と同じ類に該当するのだろうが、どのスキルがどう言う効果なのかは聞くだけでは分からないな。



「「「集団精霊魔術『精霊晶壁(クリスタルウォール)』!!」」」



明確な変化。



《緊急クエスト【ウサギの国の舞踏会】が発令されました》

《クリア条件は、レイドボス〔殺人兎の狂い姫マーダーラビット・プリンセス〕の48時間以内の討伐、又は48時間【プリムス】の防衛成功です》



ここからでも視える外壁よりもなお高い精霊結晶の壁が現れたのと、緊急クエストが発令されたのは同時だった。






ただいま精霊晶壁の上からお届けしております、どうもレンテです。


最初はシルフの助けで現場上空を浮遊していたのだが、慣れないとなかなかの恐怖体験だったので、しっかりした足場である精霊晶壁の上に移動したのだ。


ただこの壁は一応魔術なので、時間が経てば消えるそうな。


それでも3日は大丈夫らしいが。



「いや〜、壮観だな!プリムス草原がこんなに賑わってるのって、リリー…一ヶ月以上振りだな」


「たしかにこれだけ高い場所から眺める戦場は壮観ですが、実情は殺伐としていますわ」



プレイヤーが一丸となってウサギの大群に立ち向かう戦場は、まさに圧巻。リリース当初の煩雑とした雰囲気ではなく、一糸乱れぬ…とまではいかなくとも、各々の役割を理解しそれに準じるプレイヤーと、取り敢えず物量で押し潰せ!のウサギの大群の対比は新鮮で面白い。


と感じたのはプレイヤーだからだったのか、一緒に観戦しているセレスティア殿下は苦い顔をしている。


そりゃそうか、死んでも簡単に生き返るプレイヤーと違って、蘇生が間に合わなければNPCに訪れるのは本当の死だ。そんな戦場に対して面白いと思うのはプレイヤー的思考でしかなく、NPCからすればただの狂人だな。


まあ、いちいちプレイヤーとNPCの違いを気にしていればゲームなんてやってられないので、今後も俺がプレイヤーである限りこの思考は変わらないだろうが、NPCの前での発言には極力配慮しないとな。


現実と一緒、余計なことは言わないに限る。



「何故、私はあの場にいないのでしょうか…。テューラだけズルいですわ」


「そっちかよ!?まさか、セレスティア殿下までそっち側だったとは…。パーティ組んだのは早計だったか…?」


「いえ、私はテューラと違って戦闘愛好家ではありませんわ。ただ、せっかくパーティを結成しましたのに、隣で戦えないなんて悲しいではありませんか…」


「愛好家…」



戦闘愛好家。なんというミスマッチな単語の組み合わせでありながら、あの狂った王女殿下にピッタリな造語なのだろう。



「分かるぜ、ティア!俺様もなんであっち側じゃないのか悔しくてしょうがねぇ!」


「ティアは昔っから甘えん坊なんだから!」


「寂しがり屋だからな〜」


「幼い頃は、本当に泣き虫でしたね」



いや、これは甘えん坊とか、寂しがり屋とかそう言う話なのか?



「や、やめてくださいませぇ…。私だってもう立派に大人になりましたわ!」


「本当かなぁ?この前だって、夜中怖くてトイレに行けないって【精霊召喚】で呼び出したじゃん」


「なっ!?それはレンテ様には秘密ですわ!?レンテ様、エルフの姫はお、おお、お花なんてつ、摘みませんのよ?本当ですわよ…?」



そんな顔を真っ赤にされて言われても反応に困るんだが…。


ちなみに君たち、これ配信されてるからね?伝わらないだろうから言ってないが。



「わ、私はこーんなにも大きくなりましたのに、ディーネ様はいつまでもお子様体型なのですわ!」


「あー!ティアが言っちゃいけないこと言ったー!知らないからそんなこと言えるんだよ!わたし達だってレン」


「おいっ!ストップ!」


何を口走ろうとしてるんですかね、この聖霊王様は!だから、配信してるって…言ってないのか。


危ねぇ、事前に配信機能調べておいてよかった!ミュート機能が付いてて助かったぞ…。


大体、進化して少し身長伸びたからって反論出来るほど、そんなに変わってないだろうに。



「誰が聞いてるか分からないのに、お口ゆるゆるか!さっきそれは秘密だって約束したばかりだろ!」


「レンテはティアの肩を持つの!?いいもん、わたしだってあと5000年もしたらナイスバディな大人の女になるんだからね!ヨボヨボのお爺ちゃんとお婆ちゃんになったレンテとティアを見返してやるんだから!」


「気が長すぎる!俺絶対生きてないぞ…」


「その頃にはエンシェントハイエルフに進化して、不老の種族に至ってますもの。ディーネ様にはいつまでも負けませんわ」


「ぐぬぅ…。ティアのバカ!」



勝者、セレスティア殿下!



「レンテ〜、ひーまーでーすーわー」


「ぼ、僕は暇なままで、いい、けどなぁ」


「ルクシア様、テネブラエ様!お暇なら私とお話ししませんか?皆様からお二人のことは窺っていたのですが、昔からお話ししてみたかったのですわ!」



拝啓、プレイヤーの皆様方。


私は壁の上で楽しく過ごせております。そちらは楽しめておりますでしょうか?



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