表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/185

78/金



「それでお兄ちゃん、何か申し開きはあるかね」


「いえ、返す言葉もございません…」



王城であてがわれた一室。初めて王城を訪れたときと同じ部屋だ。


そこで俺は、なぜかあの場にいたユズのパーティに詰問されていた。



「うはぁ、ここ王都が一望出来ちゃうよ。勇者の私より良い部屋宛てがわれるって、お兄さん只者じゃなかったんだね!」


「そんな事より、テューラ様とパーティ結成ってズルイですよぅ!私も入れて下さいぃぃ!」


「「さすが兄者」」



司令塔と無礼担当アウラ、無自覚失礼と自称まとめ役アイギス、双子盗賊ミズキとハズキの順だ。


しれっと勇者とか重要そうな単語を混ぜないでほしい。


絶対その悪目立ちする槍が関係していますよね?



「異界、境界、魔力暴発、精霊界、精霊王とその進化、妖精の国、幻想級のアイテム、終焉と賢者の弟子、世界樹、源泉」


「並べられると酷いな…」



今日聞いて不思議に思ったのであろう単語を淡々と羅列するレイン。


よくもまあ、あのやり取りだけで覚えていられるものだ。



「魔力暴発は魔力操作と関係ある?」


「オススメは出来ないけどモロ関係してる」


「そう、今度教えて?」


「教えるだけでいいなら」


「二人だけで分かる会話しないの!わたし達にも分かるように話して!」



ユズに怒られた。


どうやらレインは魔術士協会での約束を守って、昇華や魔法についても話していないらしい。俺が秘密にして欲しかったのは妖精のことだったんだが、キチンと伝えるべきだったな。



「魔術スキルを昇華させるために必要な魔力操作ってスキルの取得方法についてだよ」


「えっ、昇華もお兄さんなの!?」


「攻略組の誰かだと思ってたけど、違ったんですねぇ」


「も、と言われてもな。一連の流れで色々起こっただけで、何度もやらかしたわけではないぞ」



魔法という名のジャガイモを引っこ抜いたら、2個目3個目のジャガイモ的な新要素が蔓に付いてきただけで、狙ってやったわけじゃない!



「レインは知ってたの?」


「私じゃないならレンテだと思ってた。負けてしまった、残念」


「偶然魔術士協会でレインと会って、そこでマーリン爺から魔法と昇華について一緒に聞いたからな」


「秘密だって約束してたから、黙ってた。ごめんなさい」



頭を下げるレイン。


秘密にさせたのもバラしたのも俺なので、少しバツが悪い。



「そんなことで怒らないけど、秘密の割にはスラスラと話すじゃんお兄ちゃん。何が秘密だったの?」



うぐっ、鋭いぞ妹よ!



「あっ、私が当ててあげる!ズバリ、聖域でしょ!」



こっちも鋭いぞ頭脳担当!何故バレた!?



「そんな愕然とされても困っちゃうよ。簡単な推測、わたしはお兄ちゃんから聖域について少し聞いてたけど、他のプレイヤーからは聞いたことがない。アウラ達もわたし以外からは聞いたことなかったんじゃないかな」


「なのにレインは疑問に思ってなかったみたいだからね!それ以外のことは知らなかった様子だから、もうこれでしょ!ってなわけでござりますよ」


「むぅ…。そんな罠が…」



何が秘密だったのか聞きつつも、その秘密にまで気づいていた様子のユズ。


アウラにしても、普通そんな些細なことで、ともすれば聞き逃しでも通るようなことで、言い当ててしまうのがすごいのだ。



「あっ、お兄さん、そんなことで言い当てられるかよ!とか思ってるでしょー!違うんだな〜。レインはね、名実共にトッププレイヤーなんだよ!普段の些細な会話でも、自分が知らないような要素があれば、聞き逃さないし、常にメモっておく几帳面さも持ち合わせてる。そんなレインが、あれだけスラスラ知らない単語を並べたのに、唯一聖域だけは省いた。私はレインのそういう真面目なところを尊敬してるからね!レインに限って聞き逃すことはないよ」


「恥ずかしいからやめて…」



アウラの袖口をちょこんと摘むレイン。何この可愛い生物。


照れるレインの破壊力がですね…。


しかし、信頼しあっているんだな。このアウラの期待が重いと感じるか、信頼されていると感じるかは人それぞれなのだろうが、レインは信頼への重圧どころか、それをしていることが当たり前かのように、気にもしていない様子。


照れてはいるけどな。



「話してもいい?」


「バレてしまってるんじゃ仕方ないな」



このまま意固地になって隠し通しても、悪い方に転がることはあっても、良い方に転がることはない。


今のやり取りだけで、少しの隠し事くらいで関係が悪化するようには思えないが、人間関係は第一印象のあとはチリツモだと思っているので、変に溜め込ませることはないだろう。


それになにより、本当に隠したかったのは聖域ではない!会議の場で話が出てこなかったからユズ達も疑問に思ってないしな!



「私が知っていることは少ない。レンテの契約種族が妖精で」


「いや、ちょっと待とうかレイン」


「なに?」


「聖域の話では…」


「契約種族が住まう場所が聖域と呼ばれているのはユズからみんな聞いている。だから、あの場での隠し事は妖精関連だけ」



いや、ってことはユズ達も聖域のことは知ってたってことじゃないか?


何故、レインが疑問に思わないことに疑問を持ったなんて話に…。



「あー。私はてっきり聖域と精霊の関連性の話が聞けるのかと…」


「水の精霊王に並んで話に登場してたシルウァヌスって人のことかなぁ、って…」



たしかに精霊王と並んで語られれば重要人物にも聞こえるか。


これは思わぬすれ違い!?


レインは聖域の話題全般を秘密と捉えていたから、聖域の話題には触れないようにしていて、ユズとアウラは聖域に関しても知らないことが多いはずなのに、疑問に思わないのはおかしい、と。


だから、俺とレインの隠し事は聖域だと思い当たり、レインは「秘密は聖域のことだ!」と言い当てられ観念。俺の許可もあり秘密を話すも、それはユズとアウラが思っていた内容とは違い、俺が本当に隠そうとしていた内容だった、と。


ってか、レインが言うように、あの時マーリン爺がバラしたのは聖域の話がメインではなく、妖精の話がメイン。


そもそも、俺があまり関係してない聖域というワードに過剰に反応してしまったのがダメだったのでは!?反応しなければ、言い当てられたなんて事にもならなかったはず…。


五体投地したい気分です!



「続き。レンテの契約種族は妖精、それも特殊なやつ」


「護国獣が提示した種族の中にはいなかったよね?」


「そう、だから不思議に思って尋ねた。これは、マーリンの言葉からの推測だけど、王都以外に別の聖域がある。それも、プリムスから王都の間に」


「なんで、その間になるの?」


「お兄ちゃんの行動範囲がそこだからね。王都から先にはまだ進んでないみたいだし」



いーなー、バルコニーの方楽しそうだなー。


アイギスとミズキハズキは話についていけなくなってから、早々にバルコニーで楽しそうに王都を見下ろしてはしゃいでいる。


俺が目指したプレイスタイルは本来あっち側ののんびりプレイだったはずなのに、どうしてこうなった。



「たしかに王都の先には進んでないけど、装備見て言ってるんなら、魔力暴発で吹き飛んだだけで、普段はもっと良い装備…はしてなかった、なんでもない」



俺が装備してたのは雑貨屋えびすで買った二束三文のローブと杖だ。初期装備よりちょっとだけマシなやつ。


今思えば、精霊界では装備してなかったってことだし、杖さえあれば、魔力操作も魔法ももっと楽だったのでは…?


マーリン爺だって魔法使う時は杖を使っていたわけだし。


防具より先に杖新調せねば…。



「お兄ちゃん、なんで剣士装備なのさ」


「チュートリアルはスキル取らずにやったから。今でも若干後悔してる…」



いや、そのお陰で鉄剣手に入れられたりしたわけだし、その売ったお金がスクロール発見に繋がったりもして、全部が全部悪いことではなかったがな。



「チュートリアル称号持ちなのに魔術士やってるんだ?珍しいタイプだね」


「別に運動神経が良い方じゃないしな」


「それで、妖精ってどんな子なの?強いの?」



可愛いより強いが出てくるあたり、ユズの性格を表してるよな。


しかし、良い機会かもしれない。自分からバラしてしまうのは何となく嫌だったが、バレてしまったのなら教えてしまった方が動きやすくなるのも事実。


フェアリーズは今のままだと人前で出せないから、ちょっと不便だったんだよな。ユズのパーティになら教えても良いかもしれない。スプラも知ってるしな。



「じゃあ、妖精達のお披露目会しようか」


「たち?」



強さを目標に据えた以上、あの放置してた称号も狙っていきますかね。



いつも感想・評価・ブクマ等々、励みにさせて頂いておりますm(_ _)m



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ