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71/月


昨日は本当に久しぶりにのんびり過ごしたかもしれない。


湖のほとりで読書なんて、登場人物が俺でさえなければ絵画に描かれるようなワンシーンだ。読んでた本はよく分からない魔法言語みたいな文字で書かれた宮殿にあった本だけど。


読んでいたというか目を滑らせていたお陰で【解読】スキルが取得可能欄に現れた。何をするスキルなのかさえ分からないので放置しているが。


まあ、シルフが我慢できなくなって、ディーネとテネブに手伝ってもらいながら水上スキーしたりもしたが、最近のプレイに比べるとのんびりと言えるだろう。


すごい勢いでバランスを崩して水の上を跳ねながら水浸しになったが、概ね平和だった。三人とも楽しそうだったし、問題無し!


ノーム、サラ、ルクシアは称号の件でエルフの国に繋がるという異界の扉へ。


もしかしたら騒ぎになっているかもってことで、進化した自分自身を証拠に説明に行ったが、説明だけで帰ってくるとか言っていたので、今日ログインすれば戻ってきていることだろう。


一瞬だけ[連絡の指輪]を使ってマーリン爺経由で、セントラリスに滞在しているだろうセレスティア殿下に言伝を頼めば解決、とも思ったが、また不要な騒動に巻き込まれても嫌だし、そもそもストレージから指輪を取り出せなかった。


そして、進化しただけでそんなに騒ぎになるものかとも思ったが、聖霊というのは辛うじて伝承に残っているくらいで、今現在あの6人しか居ないくらいには珍しいようだ。精霊王の方はあの宮殿に寄りつかないだけで他にもいるらしいが。


ちなみに、聖霊聖霊言っているが、ディーネ達の種族は聖霊王らしい。言葉だけ聞くと音は変わってないから、実情知らずに会話だけ聞くと勘違い起こるよな、絶対。


そんなこんなで放課後。


トモはダンジョンイベまでに限界までレベリングするとかで、さっさと帰ってしまった。闘技大会後に解放されたレベルキャップは50。


キャラLV.20以降は上がりづらくなっているらしく、まだLV.50に到達したプレイヤーは居ないらしい。


まあまだ二週間しか経ってないしな。


しかしトモは大丈夫なのだろうか?


今日から一週間、中間テストが始まって、学校が昼前に終わるとはいえ、あれは一日中ML漬けの顔をしていた。



「お待たせ。はい、これ」


「おっ、サンキュー」



お礼は言ったが、投げ渡された冷たいコーンポタージュは、土曜日の昼から放置してる俺への嫌がらせだろうか?


進捗状況の擦り合わせのため若葉に放課後屋上に呼び出されているのだが、俺の方が飲み物を献上するべきだったかもしれない。



「すみませんでした」


「別に嫌がらせじゃないわよ。わたしこれ好きなんだけどな…」



あ、そう。


まあ、そういうことらしいので、有り難く頂く。


うん、微妙。寒い日に温かいから美味しいのに、何故冷たくしちゃったのか。


脇に寄せて本来の目的に。



「どう、今日入れて残り九日くらいだけどいけそう?」


「テューラが言うには、異界の使用許可が下りたとかで、余裕だって言ってたわ」


「異界の使用許可?」



なんだそれ。


誰にどう頼めば下りるのかも疑問だが…。いや、セントルムなら疑問でもないか。


やはり聖域には異界の扉があって、それを管理している父親、国王にでも許可を取ったのだろう。



「なんかリンダっていうお婆ちゃんがわたしの弟子入りした鍛冶屋に尋ねてきて、テューラに異界が開かれたって。封印が緩むとかで、って難しい話してたわ」



そこで師匠が出てくるのか。



「あんたが何かしたんじゃないの?リンダさんもテューラもレンテがどうのって言ってたわ。テューラは面白そうにしてたけど、リンダさんは面倒そうな顔してたわね」


「うへ、なんで俺が異界に行ったことがバレて…」



あっ、何でもなにも弟子称号か!忘れた頃に悪さをしやがる!


まあ、普段スキル取得でお世話になってるから文句ばかり言えないんだが。



「じゃあ、その封印が緩んでる異界で鍛治修行ってことになるのか?」



よく考えたら異界は戦闘職以上に生産職垂涎の場所なのかもしれない。戦闘職は未知のエリアがあって、そこで戦えるのならどこでもいいだろうが、生産職は生産道具さえあれば戦闘職以上に場所を選ばない。素材アイテムさえ供給されるのなら、人間界にいる意味が薄いからな。



「多分別の異界だと思う。ワールドアナウンス?ってのがあまりにもタイムリーだったから、わたしも不思議に思って後からテューラに聞いたのよ。ダンジョンってのでレベル上げるのかって」


「ダンジョンイベ知ってたのか」


「公式サイトはこまめにチェックしてるわ。そしたらテューラが、リンダ様の異界は特別で、モンスターもいない、他に誰も居ないから邪魔されずにスキル熟練度稼ぎ放題だって。ダンジョンっていうのがあまり理解できていないけど、モンスターがいっぱい居る場所なら違うのかなって」


「脳筋王女はリンダ様の異界って言ったのか?マーリンか、爺やではなく?」


「マーリンも爺やも聞かなかったわね」



当てが外れたかもしれない。


俺の予想では、聖域を管理しているのならマーリン爺だと思っていた。師匠と違ってマーリン爺はセントラリスから離れないし、脳筋王女の【賢者】としての師匠でもある。


EXスキルの弟子っていうのは、継承させるという意味を持つそうだ。国の中心にある聖域の異界の扉なわけだし、脳筋王女により深い関わりがある人物だからマーリン爺だと思っていた。


護国獣というからには、国を護る為の契約か何かしているのだろうし、トモや柚子の話からすれば護国獣は意思疎通ができる。尚のこと、無条件に人の国を護ったりはすまい。護国獣もマーリン爺関連で何か契約しているものだとばかり。



なるほど。だから「この国を滅ぼすつもりか」になるのか。宰相の息子の騎士が、俺を師匠の弟子だと知った上で丁重に扱わなかった警備兵に向けて放った言葉だ。


あれは師匠の所業や【終焉】の危険性からの言葉ではなかったのだ。いや、もしかしたら少しくらい加味されているかもしれないけども。


国の中枢に、EXスキル持ちと何らかの契約をした獣がいて、そいつに国は護られている。しかもそのEXスキル持ちは、国の中枢、王家とは特に関わりもない。強いていえば、近接魔術士とかいう意味の分からない流派の王女の師匠だということくらい。


何故そんな状況になっているのか知らないが、セントルム王国とは、リンダという諸刃の剣を心臓に突きつけられた国なのだろう。今はダンジョンから国を護ってくれているが、いつ機嫌を損ねてその刃がコチラに向くかも分からない…。


まあ、師匠が本当にそんなことをするかはともかく、事情を知っている下っ端はそう思ってしまうということだ。


ただ、一つ疑問が消えて二つ疑問が現れる負の連鎖的なナニカ。


師匠の異界というからには、師匠か護国獣が異界を創造、又は隅々まで管理できるような立場なんだろうが、素直に受け取るなら護国獣じゃくて、師匠が異界創造できる?


異界創造はEXスキルの力?じゃあ何故、今後王女に渡るかもしれないマーリン爺の【賢者】ではなく、師匠に国の守りを任せているんだろうか?異界創造は【終焉】だけに許された力、若しくは別のスキルの力?


それに、この疑問を全て一旦棚上げしたとして、セントラリスには二つ異界の扉があることになる。師匠の異界の扉とダンジョンへの扉。


いや、これは師匠の異界の扉が後付けなのだろう。護国獣はダンジョンから国を護っているわけだから、ダンジョンが後から出現して同じところに現れたというのは少し確率がバグっているように感じる。異界の扉同士は惹かれ合うとかそういう特性がある、と言われれば崩壊する予想だが。


取り敢えず、今なにか関係あるわけでもないし放置でいいか。


もしかしたら今後、師匠が王国に牙を剥いたら即バッドエンドになる可能性があるくらいだ。


若葉も品評会の目処が立ってるみたいだし万事オールオッケーだな!



「まあ、あれだ。鍛治に使えそうな素材ゲットしたから脳筋王女か誰かに渡しとくよ」


「ありがとう。これだけみんなに手を尽くしてもらってるんだもの、絶対良いものを作り上げてみせるわ」



あっ、護国獣が師匠関連の蛇なんだったら、今度見せてもらおう。特に爬虫類好きなわけでもないけど、デカい蛇見てみたい。



主人公のこの考察は穴だらけです。

異界創造が出来ようが出来まいが、護国獣と契約して国を護らせることに関係はないですし、リンダが王家の関係者ではないと決めつけているのもガバ。護国獣が契約に縛られないと人の国を護らないというのもガバですね。

色んな考えの人がいるように、色んな考えの護国獣もいるかもしれないですからね。

主人公は勝手に深読み考察して、よく分からなくなって投げ出すよ〜っていう、そういう話でした。

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