68/日
前に書いてた掲示板回を10話と11話の間に挟んで投稿しました。
掲示板回って読む側としては結構好きなんですけど、いざ書いてみるとなかなか難しい…
なので、掲示板回については暖かく見守って貰えると嬉しいです∠( ̄^ ̄)
「いやっほぉぉぉおうっ!!!」
俺は今、精霊界スピリタスが誇る巨大な湖で全手動水上スキーを楽しんでいた。
水上スキーといっても引っ張るための動力源が自分の魔法なので全手動な上、少し意味が違ってくるが共鳴同調で俺の身体の中には同乗者が6人いるわけだが。
「お、おい、もう少しスピード緩めようぜ…」
「サラ、ビビってるんですの?なっさけないですわ〜」
「あ゛ぁ゛?いいぜ、後悔するんじゃねぇぞ!!」
「なになに、スピード上げるの?オイラも手伝っちゃうもんね!」
「や、やりすぎゅ…い、いたひ」
「アハハハハハッ!!ねぇ、これ定期的にやろうよ!」
「たまにはこういうのも良いものですね」
乗り気4名、尻込み2名の多数決という世知辛い世界。
水上を滑るためのボードをノーム、ボードと俺の固定とクッションのような役割でバランスを取りやすくしているのがテネブ、浮力で最低限沈まないよう調整しているのがディーネ、風を使った全体的なバランスと加速・減速を担っているのがシルフ、風と併せて爆発的な加速力を生み出しているのがサラ、光と幻影でアトラクションのように視界を楽しませてくれているのがルクシア。
他にもノームとディーネ、ルクシアの合作でジャンプ台や、ウォータースライダーを作っていたり、サーカスのライオンを彷彿とさせる炎の輪をサラが設置したり、忘れた頃にボードをホッピングさせるシルフがいたり、それらの全てで着地する時の衝撃を和らげたりと縁の下の力持ちをやっているテネブ。
魔法とはこんなにも自由なのかと楽しさの裏で感動している俺の役割は、クリエイトファイアでサラが操るための火を生み出すことだ。
なるほど、クリエイト系の魔術の真の使い方は魔法の補助だったんだな。
魔法は自然を操る魔の法であり、0から生み出すのは範疇の外だ。もちろん湖の上に火なんて存在しないので、自分で用意する以外に方法はなかった。
せっかく魔法に昇華させたというのに、魔術を使っている自分に若干釈然としないものを感じつつも、何故こうなったかを思い出す。
念願の、というほど頑張ったわけでもないし、少しズルをした気分ではあるが、ついに【魔力操作】スキルをゲットした。
しかし、魔力操作は目的ではなく通過点だったことを思い出し、嘆息する。
「そうだった、目的は魔法を覚えることだった…」
「それじゃあ、パパッと魔法のレクチャーも終わらせちゃいましょ!」
「え?」
いや、そうだよ。
魔力操作を取得出来たら魔法を教えてもらえるような会話をマーリン爺としたが、別に聖霊達に教えてもらえるのならここで魔法覚えちゃってもいいよな…?
魔法を眼前にぶら下げられてお預けを喰らっているような気分になっていたが、そっかそうだよな…!!
「よし、ディーネ!レクチャー頼む!」
「オッケー!といっても、魔力操作が出来るのならそんなに難しいことはないよ。自分の魔力を集めて、それに属性を与えて、魔法を使って動かしたいものに集めた魔力を送り込むだけ」
言いながら、湖の水でディーネそっくりの水の像が出来上がる。
「まあ、わたし達精霊の場合は、元々魔力に属性が宿っているから、人よりも少しだけ発動が早いんだけどね!さあ、レッツチャレンジだよ!」
「了解、やってみる」
魔力を集める。堰き止めるのではなく、集めるという意識を持って手のひらに集めていく。
前に堰き止めるだけだった時は心臓の逆位置の方がやりやすかったのだが、今では手のひらでも変わらないレベルで操作出来ていた。
最初はそう大きなものを動かそうとする必要はない。
魔力を集めるのにも、通常の流れに逆らうのではなく、流れてくる魔力を吸い上げていくようにした方が集めやすいような気がする。
くしくもそれは、魔力暴発を起こした堰き止めるという方法とほとんど同じだが、あの時のようにMPポーションで過剰供給されているわけでもないので、心配はいらない。
しかし、ここで問題発生です。
魔力に属性を与える、とは?
取り敢えず、集めた魔力に対して「水属性になれ〜、水属性になれ〜」と念じてみるとあら不思議、無色のオーラのように感じていた魔力が、薄らと青みを帯び始め、最終的には完全に青のオーラへと変化してしまった。
ちなみに、オーラ云々は魔力感知で感じられる魔力と色だ。
「そうそう、やるじゃん!そこまで出来たら、その魔力を水に流してみて。最初は魔力を遠隔で飛ばすのは厳しいと思うから、直接操作したいものに触れて流してみるといいよ」
ちょっと気になって、湖の水まで集めた魔力を飛ばしてみようとするが、1メートルも手から離れると空気に溶けていくように霧散してしまった。
「こればっかりは慣れが必要だから、地道にやっていった方がいいぜ」
「そうみたいだな」
魔力操作でピクリとも魔力を動かせなかった時と同じ途方もなさを感じる上に、魔力操作の時と違って別のアプローチへの取っ掛かりが絶無だ。
ということで、大人しく水に手を触れ、魔力を浸透させるように流し込んでゆく。
湖の水で試しているせいか、水量が果てしなく、比例して必要な魔力量も膨大なせいで、底無し沼に魔力を注いでいるような気分になってくる。
ただ自分が集めていた魔力がどのくらいの水を操れるのかは大体理解できるようになっているようで、そんなに悲壮にはならないが。
大体、足を伸ばせる風呂くらいの水量に魔力が浸透したところで、用意していた分の魔力は全て使い切った。具体的に言うと、MP10といったところだ。
魔術のウォーターボールが消費MP8の直径30センチほどだと考えれば、中々の効率があるのではなかろうか。レベルが上がって効率がさらに上がる可能性を考えれば、将来性はグッドである。
「そこまで出来たら、あとは動かすだけだね。魔法に発動句は要らなくて、自分のイメージ通りに動かすだけなんだけど、形だけでも言葉にするとイメージが付きやすかったりもするかな」
「なるほど…。ディーネ!」
湖から切り取られ空中にふわふわと浮かび上がった水が形を変えてゆく。
イメージするのは目の前のディーネと、さっき見せてくれた魔法で形作られた水のディーネだ。
「ぷっ、うくくっ…、ディ、ディーネ、ふ、ふはっ、太ったな!ぶふっ」
「毎日水に浸かってるからふやけたんじゃありませんの?ふふっ」
「笑っては失礼なのでしょうが、これは…」
「やーい、ディーネのでぶっちょー!」
「み、みんな、ディーネがお、怒っちゃうよ!」
すまんディーネ、わざとじゃないんだ。
水膨れしたディーネみたいになったことは許してくれ!
心の中で言い訳していると、津波が押し寄せてくる。
マズイ、これは逃げられーー。
「ぶわっふ!?」
「おい!危ねぇじゃねぇか!」
「んだよ、ちょっと揶揄っただけじゃんかよ!」
「まったく、堪え性というものがありませんわね」
「間一髪ですね」
「なによ!みんなが悪いんでしょ!」
いや、そんなことより!
「あ、あの、レンテが…」
「「「「「あっ!?」」」」」
〈【水魔術】が【水魔法】に昇華しました〉
〈【水魔術】は【水魔法】に統合されます〉
〈称号【水操術の使い手】を獲得しました〉
〈称号【スキル昇華の導き手】を獲得しました〉
《匿名 がスキルの昇華に成功しました》
《一部情報を開示します》
《一部スキルの中には、進化とは別の昇華という変化が起こるスキルが存在します》
《昇華は、今まで出来なかったことが出来るようになる、新たな機能が追加されるなど、より便利になる変化です》
《昇華するための方法は様々ですが、進化と違って追加のSP消費は必要ありません》
《その他詳細はヘルプをご確認ください》
あ、こっちはワールドアナウンスされるのね。
って、違う!た、たすけ…
という一幕があり、聖霊達の仲直りや、他の魔法昇華を経て冒頭だった。
魔法汎用性が高くて楽しいです!
まあ、今のところ自分では使ってないんだけどね?




