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52/日


今日の朝はゆっくり起きて、まったり過ごしたので、もうお昼の時間だ。


今日の昼飯は我らがマグドである。


朝食の席で柚子が食べたがっていたので、朝はゆっくりする予定だった俺が買いに行ってきたのだ。


若干出前にすればよかったと後悔したのは内緒だ。



「おー、お兄ちゃんありがと!いただきまーす!」


「いただきます」



今日も今日とて、バーガー三つにポテトまで平らげる妹様には感服するよ。



「なんか契約に下方修正入ったらしいよ」


「何が修正されたんだ?」


「それが分からないんだよね〜。今日試してみた感じ何も変わらないんだけど、ダメージ補正が下がったみたいなことが書いてあったんだけど、サッパリでさ」



お早い仕事だことで。


もう兄の内心は冷や汗ダラダラよ。決して気づかれないようにポーカーフェイスを保つのだ!



「あとは地形の修復速度が少し上がったんだって。誰が何したのか知らないけど、今の時点で地形破壊なんて誰がやったのかーって大騒ぎだよ」


「ち、地形破壊ってそんなに難しいものなのか?」


「うーん、どうなんだろ?試したことないから分かんないけど、修復速度にテコいれるくらいだから、なかなかやらかしてると思うんだよね」


「まあ、確かに」


「確実にレインと同等かそれ以上の魔術か、スキルは持ってると思うよ」



すまん、ファイアボールなんだ…


でも、魔術は他と比べて火力が高いとはいえ、地形破壊が魔術士の専売特許だとは思えないから、近接職でも工夫すれば地形破壊出来そうだよな。



「それはともかく、お兄ちゃんに聞きたいことあったんだった」


「な、なんだよ」


このタイミングで聞きたいこととは不穏だ。



「聖域ってなに?昨日ログアウト前にヘルプ見てみたけど、見つからなかったんだよね」


「契約できる種族が住んでいるところを総称してそう呼ぶらしいぞ」


「へぇ…」


なんだその獲物を狙う肉食獣みたいな目!やめろ!兄にそんな目を向けるんじゃない!


「お兄ちゃん、何と契約したの?」


「え、い、いや、俺も早く契約したいなー」


「知ってる?お兄ちゃんって嘘吐くとき、左手で左肩揉むんだよ」



なっ!?嘘だろ!?


人間観察まで卒なくこなすようになるなんて…。


妹が立派に成長してて、誇らしいだか複雑だか。



「じゃあ質問変えるね。どこでそれ聞いたの?」


「…情報屋で情報買った」



嘘じゃない、嘘じゃないぞ!


オヤジから買った情報を元に辿り着いた場所で、シルウァヌスさんから聞いたんだから!


この情報だけはほとぼりが冷めるまで俺の中で眠らせておくのだ!



「たしかプリムスの酒場にいるっていう現地民だっけ?そういうのアウラに任せてたけど、今度私も行ってみようかな」



アウラは、柚子のパーティの司令塔兼失礼担当の娘だったか。



「あんまりしつこく聞くのはマナー違反だし、そろそろ勘弁してあげるけど、お兄ちゃんもうちょっと気をつけた方がいいと思うな。妹からの助言だよ」


「お、おう」



たしかにもう少し慎重に言葉を選ぶべきだったかも…


いやいや、昨日のあの時点であの流れは仕方なくないか!?


柚子の口から護国獣と契約の話が出てきたから…、いや、次から気をつけよう。



「それに吹っ切れるのも一つの道だと思うよ。お兄ちゃんの場合、隠そうとしても自滅するんだから、いっそ有名になって有象無象なんて黙らせればいいんだよ」


「いやそれは…」


「ま、そこら辺はお兄ちゃんに任せるよ!じゃあ、私は先に戻るね」



リビングを去る妹の背中を見送りながらポテトをパクリ。


有名になる、ね。


どうにか悪目立ちしないように有名になれるならそれもアリかもしれないな。






時刻は午後2:00。


若葉からチュートリアルを突破したとの連絡を受けた俺は、プリムスの中央広場で合流した。



「名前はスプラにしたわ。こういうゲームの中じゃ本名名乗っちゃいけないんでしょ?」


「まあネットマナーってやつだな。俺はレンテ、好きに呼んでくれ」



スプラは髪をライトグリーンに変えて、一房だけ黄色のメッシュを入れた、それ以外は現実の若葉と変わらなかった。


最低限髪の色だけでも変えておけば、案外印象も変わるので許容範囲内だろう。


スプラに限っていえば、現実だとメッシュを入れる想像もつかないので、それだけでも効果覿面だ。



「取り敢えず冒険者登録しよう。そのあとそこら辺の喫茶店かどこかで基本的な説明かな」


「任せるわ」



少しおのぼりさん状態のスプラに気を配りつつ冒険者ギルドを目指す。


初めてのVRで見るもの全てが新鮮なのだろう。


俺も初日はこんな風だったのかと、客観的に自分を見ているようだった。



「ここが冒険者ギルド、多分よく利用すると思うから場所覚えとくといいよ」


「結構わかりやすいところにあるのね」


「よく利用する施設はこの中央広場に集中してるから、取り敢えず迷ったら中央広場を目指せ、って認識でいいよ」



あとでメニューからマップの見方も教えないとな。



「えっと受付は…、お、冒険者登録受付、ここか」



冒険者ギルドに来るのは実に初日ぶりだが、受付だけで冒険者登録受付、クエスト受注受付、クエスト発注受付、素材買取受付、緊急窓口、サポート窓口と慣れるまでは右往左往してしまいそうだ。



「すみません、冒険者登録お願いしたいんですが」


「はい、冒険者登録ですね。お二人様でよろしいですか?」


「はい、二人ともお願いします」


「え、レンテは冒険者じゃないの?」


「するタイミングがなくてね」


「ふーん」



特に不審がられている様子はない。


ゲーム初心者ゆえに、そんなものかとでも思ってそうだ。



「ではこちらの水晶に手を翳してください」


「はい」


「これでいいの?」


「ありがとうございます。では、冒険者カードを作成している間に基本的な説明をさせていただきます」



まあありきたりな説明だ。


冒険者になるとクエストが受けられるようになって、背後の掲示板に貼ってある発注書から選んで、クエスト受注受付でクエストを受ける、だとかそういうやつだ。


スプラは一言一句聞き逃さないように真面目に聞いているが、俺は大体知っているので適当に聞き流す。



・冒険者ランクは〔A〕〜〔F〕

・受けられるクエストは冒険者ランクと同じランクのクエストまで

・パーティを組んでクエストを受ける場合は、パーティメンバーの中で一番ランクの高い冒険者のランクを参照する

・ランクアップ時には昇格クエストを受ける必要がある

・常設依頼はクエストを受けなくても報告だけでいい

・一部のクエストは失敗すると違約金が発生する。

・冒険者カードを紛失した場合は、5000Gで再発行

・銀行とアイテムボックスのサービスが利用可能になる

・犯罪歴があると登録できない場合がある



その他細々としたことはあれど、大枠はこんな感じだ。


アイテムボックスは、ストレージと違い無制限に預けておけるのだが、預けたものを取り出す際はギルドからしか取り出せないという制約がある。



魔石やら、インクやら、妖精鱗粉の塊やら、やたら数だけは多いが、1アイテム999までスタック可能なのでストレージはまだそこまで圧迫してないが、これから圧迫していくのは確実なので、そのうち利用することになるだろう。


聞いた話では、クランホームや個人ホームを持っていると、自室にアイテムボックスを設置できるらしいので、お金が貯まったら検討してみるのもいいかもしれないな。


今の所万年金欠なので、いつになるか分からないが。



「以上になります。何か質問はございますか?」


「ここでクエストを受けて、別の町で報告しても達成できるんですか?」


「はい、可能です。しかし一部のクエストでは、報告する場所を指定されているクエストもあるため、その場合は指定されたギルドでないとクリア扱いにならない為、注意してください」


「パーティでの受注というのは、全員がその場にいてパーティに参加するメンバーをギルドに報告したりしないといけないのですか?」


「いえ、パーティの代表者と、パーティ内の最高ランク保持者がいれば構いません。その場合ーー」



スプラの問答はそれから15分ほど続いた。



「なるほど、ある程度理解できたと思います。ありがとうございました」


「いえいえ。こちらの冊子に一通りまとめてありますので、分からないことがあれば目を通して見てください。それでも分からないことがあれば、サポート窓口の方で対応しますので、お気軽にお声掛けくださいませ」


「分かりました」



さすが委員長、生真面目なところがでてるぜ…


受け取った冊子がポリゴンになって消えたことに目を白黒させてるのは初心者らしいけどな。


メニューのヘルプに載っていることを教えておく。



「では最後に、こちらが冒険者カードとなります。紛失した場合は再発行に5000G掛かりますので、しっかり保管しておいてください」



燦然と輝くF。


これから俺の冒険者ライフが始まるぜ!!



「それでは、貴方がたのご活躍を心よりお待ちしております」



よし、これで第一ミッションクリアだ!


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