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33/火

またもや予約のし忘れorz



ゴールデンウィーク四日目。


MLにログインしたのは、太陽が隠れ薄闇が広がり始めてからだった。


理由は単純に、一区切りついたことと、まだ少し終わってなかった課題を終わらせてしまおうと考えたからだ。


その結果、案外時間が掛かってしまい、この時間帯になってしまったのだ。



しかし、前述の通り魔改造もひと段落してしまったわけで。


何をするのかと問われれば、レベル上げとスキル上げになるだろう。


多分だが、【魔法陣】の熟練度を稼ぐには、魔改造魔術を使う他ないと思う。


基本属性コンプリートした手前、派生属性も気になるし、スキル上げは重点的に行いたい。



だが、もう夜だ。


一応【光魔法】も取得しているので、光源魔術の『ライト』も使えるが、一分一秒を争うほど焦っているわけでもない。


それに、スキル上げメインにするにも目処が立っていないのだ。


ということで、今日の行き先はーー



「久しぶりに…いや、何気にちゃんと利用するのは初めてだな」



とある酒場に、久しぶりにお邪魔することにした。






ところ変わって、プリムスの裏路地でひっそりと営まれている酒場『アーテル』にやってきた。


相変わらずの人気の無さに若干安心しながらも、酒場の主人であるオヤジの目の前、カウンターの一席に腰を下ろす。



「オヤジ、サンドイッチとコーヒーで」


「はいよ」



読んでいた本を置き、表情を変えずに厨房へと去るオヤジ。

ML内での初めての食事もここだったんだよな。


メニューも同じ、サンドイッチとコーヒー。



「あの時はまさか本当に出てくるとは思ってなかったっけ」



まだ正式リリースされてひと月も経ってないが、それでもかなり懐かしく思う。


酒場って感じのメニューじゃなくて、出てきただけで驚いた思い出。


食糧アイテムにはバフがあるとはいえ、満腹度システムは今のところ存在しない。


つまるところ、必要ないしお金勿体ないしで、食べようと思えないんだよなぁ。


美味しいは美味しいんだが、序盤の食材だ。


推して知るべしというか、現実でも変わらないというか。


柚子から聞いた限りでは、女性ユーザーには大層人気のコンテンツではあるらしい。


まあ、今回は思い出に掛かる必要経費とでも思っておこう。


何しろ、アプデ直前に金策に走ったので、ある程度の余裕があるからな!



「ほらよ」


「コーヒーの良い香り〜」



重度のコーヒー党ってわけじゃないんだが、ゲーム内でこの香りにありつける感慨深さがある。


もしや俺は既に料理に毒されていた、のかっ!?


ゲームによっては米に次いで…この話、前にもした気がするな。


出てきたサンドイッチをムシャムシャと口に運びながら、本題に入ることにした。



「それで本題なんだけどさ。魔術熟練度を稼ぎやすい方法の情報とかない?」


「婆さんは…いや、この時期はそうか」



婆さん、師匠のことだろうな。


マーリン爺も師匠は忙しい的なこと言ってたし、師匠も元々用事があると言っていた。


オヤジもそこら辺の事情を知っているのかもしれないな。


なんせ、俺に師匠を紹介したのは情報屋のオヤジだ。



「1万Gだ」


「9,000!」


「アホか。そういうのがやりたいなら、表通りの八百屋にでも行け」


「ちぇ〜」



値引き交渉はあえなく失敗した。


まあ、やってみたかっただけなので満足したけどな!


1万Gの金貨一枚と、サンドイッチとコーヒーの代金の銀貨と銅貨をジャラジャラとアイテム化して手渡す。


うーむ。


こういうのは、ボロ袋とかに入れた方が雰囲気出るよな。


今度これ用に大量に用意しておくのも悪くないかも…むふふ。



「プリムス草原を北に抜けた先に、『ドルクスの断崖』と呼ばれる場所がある」



ああ、聞いたことがある。


プリムスの外壁門の先に伸びる街道はそれぞれ、南は始まりの村、西はグレディに繋がっている。


では、北と東は?という疑問が生まれるのは当然のことで、実際俺も不思議に思ったことがある。


何故、宿場町グレディが第二の町と呼ばれているのかを。



答えは、北と東はまだプレイヤーが踏破出来るフィールドじゃなかったからだ。


東は深い森が広がっていて、北を越えるには相応の準備が必要な断崖絶壁が行く道を阻んでいる。


そんな過酷な環境の中、当たり前のように高レベルモンスターが襲ってくるらしく、今は放置されているフィールドだった。



「そこって俺のレベルで大丈夫なの?」


「登ろうとしなければ問題ない。相手にするのは麓のスフィルロックだ」


「スフィルロックってモンスターだよな。強いの?」


「まあ、聞け」



そうだな。

まずは全部聞いて、改めて疑問に思えば質問するか。



「まず、万が一にもそのステータスじゃ、ダメージを与えられない」


「えっ、それって…いや、続けてくれ」



速攻で口を挟んでしまった。


そんな倒せないモンスターで何をするんだ、って思わなくもないが続きを聞こう。



「スフィルロックは基本動かないモンスターでな、仮に動いたとしても極端に鈍い」



ノンアクティブのモンスターってことかな。



「攻撃されても、ダメージがなければ反撃もしてこない。魔術の熟練度稼ぎになら最適だろうよ」


「高レベルのノンアクティブモンスターで、ダメージを与えられないからずっとノンアクティブのまま…ってことか」


「ノン…なんだって?それより、絶対に崖を登ろうとするな。それだけ守れば、安全に熟練度を稼げるはずだ」



ノンアクティブって禁止用語扱いだったのか?

今の反応だと微妙だけど、今後は気をつけるとしよう。



「他には何かあるか?」


「うーん…」


「あら、レン君じゃない」



他に何か欲しい情報はあったかな、と考えていると、ひっそりと続く暗闇に包まれた通路から、セシリアさんが現れた。


前にグレンとセシリアさんと利用した、密談用の個室が先にある通路だ。


オヤジは、そこで話が終わると判断したのか、本を手に取って黙してしまった。


まあ、知りたかったことも聞けたし、情報料も払ったからいいか。



「お久しぶりです、セシリアさん」


「ホント、随分久しぶりに感じるわね」



カウンターから移動して、セシリアさんの連れと三人、端のテーブル席へ移動する。



「セシリアさん、その()は?」


「あら、初対面だったかしら?紹介するわ、攻略組のレインよ」


「レイン、よろしく」



うん、第一印象は“ちんまい”だな。


攻略組の知り合いなんて、リアルでも近しい二人ほどしか居ないので、もちろん初対面のはずだ。



「しょう」


「中学生、すこぶる不愉快」



言い切る前に、苦虫を噛み潰したような顔で即答された。

歪めた顔も可愛いとは、凡面の俺からしたら羨ましい限りだな。


それよりも。



「不躾に失礼かましてごめんな、配慮が足りなかった」


「いい、慣れてる。だけど、次はない」



こわっ!?


目だけ笑ってないってのはよく表現として聞くけど、顔も笑ってないし、なんなら殺気すら幻視出来てしまうほどの…


気をつけよう!!



「ゴホンッ、話進めていいかしら?」


「あっ、どうぞ」



完全にセシリアさんのこと忘れてた。


恐るべし、魔女っ娘レイン。




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