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169/月


今日は精霊界スタートなので、気持ちにゆとりを持って9時にログイン。


昨日は放置レベリング術の確立と、【運命の輪ホイールオブフォーチュン】を味方に付けるという二大成果を挙げたのだが、それに伴って今後の明確な課題も見えてきた。



「支配されてない源泉って何処にあるとか分かったりするものなのか?」


「うーん…。基本的に支配されてない源泉は無いんじゃないかな?」


「人間じゃなくても、魔力が溢れ出す源泉はモンスターにとっても楽園だしな。ボスモンスターっているだろ、あれ魔力を過剰に取り込んで強化されたモンスターのことだぜ」


「魔力の過剰摂取でレベル以上に強化されたモンスターのことを強化種と言ったりしますね。ボス=強化種と語る研究者も居ますが、場所によってはボス以外全てが強化種ということもありますので、ボスも強化種というのが正しい表現でしょう」


「あー、じゃあ源泉にレイドボスが居たってのは、長くそこに棲みついていたモンスターがレイドボス化したってことなのか」



過去にフォルトゥナ達が流した情報によれば、源泉のレイドボスとフィールドボスは別で存在するらしいのだが、つまりレイドボスさえ見つけられればそこに源泉がある可能性は高い。



「まあ、源泉に棲みついてるのが全部レイドボスとは限らないけどな〜」


「ヴェルムへの旅路の途中で大量のモンスターに囲まれたんじゃありませんの?」


「確かに、あそこ、なら」



ヴェルム神聖国へ行くために、街道から逸れて分け入った森の中でのことを言っているのだろう。


あの時は確か、パーティ上限の関係でサラとルクシアは召喚できてなかったか。



「もしかして、レイドボスが居ない場合は、大量のモンスターが棲みついてるってことか?」


「両方ってこともあるけど、あそこはそんなに大きな源泉じゃなさそうだし、ボスはいないんじゃないかな?でも、もう結構時間経ってるし、次も似たような数は居そうだね」



またあの大乱戦やるのか…?


まあ、今回は事前に何が起こるか知ってるだけでも心構え的に違うのかもしれないが、森の中で休みがない長時間戦闘って自分が矢面に立ってなくても、ちょっと精神的に辛いんだよなぁ。


すっごい憂鬱だ。


それに本当に源泉があったとしても、あのフィールドの場合どうしても解決しなければならない重大な問題がある。



「あの時さ、ドラゴンいただろ。あの森ってセントルム王国なのか、ドラゲニア竜皇国なのか、どっちの領土なんだろ」



俺達が必死こいて殲滅している最中、安全な空から俯瞰していた鬱陶しいドラゴンがいたはずだ。


普通に考えれば、国境にあるらしい砦に辿り着いた記憶がないので、あそこはセントルム王国の領土内だと思うのだが、実際にドラゴンがそこに居たという事実があるので、どちらとも判断が難しい。


可能性として考えられるのは、何らかの事情があって不干渉地帯になっていたりするのかもしれないが、これはウェルグ殿下辺りに聞きに行った方が早いか。


別にマーリン爺でも宰相でもいいのだが、テューラに即バレしそうだしな。


その点でウェルグ殿下は安心だ。


なにせ、妥当テューラ同盟の同志だからな!


というか、待てよ…?


何故俺はアレをまた自分達だけで処理するつもりでいるのだろうか。



「そうだよな。どうせあそこが源泉ならミルトンさん達の拠点になるんだし、なら自分達で勝ち取るのが筋ってものだよな」



それに件の情報を明かすのは、あの場所が源泉かどうか確定した後でもいい。


それっぽい理由で、あの大量のモンスター掃討を押し付けて、本当に源泉があったなら、そこの支配権を正当に得た彼らに、放置レベリング術の伝授という引越し祝いをプレゼントしようではないか。


そうと決まれば、それっぽい理由と段取り…は適当にでっちあげればいいか。


クエストか何かですごい数のモンスターが相手で困ってたけど、フォルトゥナに相談したら、数なら【万魔殿】ってことでお勧めされたとかでいいだろう。


段取りはフォルトゥナに頼んで、仲介して貰えば疑念も薄まりそうだし、彼女に任せてしまおう。


約束したのは源泉を見つけることであって、支配してくることじゃないしな。


うん、超絶ガバ計画だけど決定!


つまり、俺は俺で別のことが出来るってことだ!



「ヒンメル、約束通り二人旅行くか!」


「えっ、ホントなんだよ!?」



これも立派な約束だったしな。


だが、目的もちゃんとあるぞ!


もう一つモンスターが棲みついている源泉を見つけること。


誰か人が支配しているような源泉は駄目だ。


たとえ奪えるのだとしても、面倒な事になりかねないからな。


そして贅沢を言うならば、あらゆる国々に干渉されることがないような秘境だとなお有難い。


そういう意味では、あの森はハズレだな。


セントルム王国にも、ドラゲニア竜皇国にも睨まれるのだから、たとえ源泉があろうとも肩身の狭い思いをするだろう。



「目的地は人間界で、何処か遠くの秘境にある人に支配されていない源泉だな」


「そりゃまた大雑把過ぎねぇか?」



サラに呆れられてしまったが、心当たりなんて皆無なんだから仕方ないだろう。


寧ろ思い当たる節があるなら教えて欲しい。



「何処かこの条件に当てはまるような場所知らないか?一番重要なのは人間界で、次に重要なのが人に支配されてない、最後に国にとやかく言われない秘境って順に重要視してる」


「はいはい!私に任せてほしいんだよ!とっておきの場所を教えてあげるんだよ!」


「ヒンメルのとっておき…?」



俺がこの世界で信用できないと思っているトップ3というものがある。


1位は勿論テューラの一挙手一投足の全てで、2位はディーネ達の「この前ね〜」「昔ね〜」というタイムスケールだ。


じゃあ3位が何なのかと言われれば、ヒンメルの鳥頭である。


こいつの脳みそは都合のいいことだけを憶える脳内修正スキルでもあるのか疑わしくなるからな。


そのとっておきの場所にどんな理不尽が待ち構えているのか気が気ではない。



「久しぶりにお母さんに会いたいんだよ!」


「お母さんってことは、そのとっておきってまさか…」


「行き先は世界樹だよー!」



おー!とでも言いたげに宣言するヒンメル。


恐らくだが、前に師匠に連れられた忘れ去られた森というフィールドは、世界樹付近なんじゃないかと思う。


師匠が忘れ去られたと表現するくらいだ。


国であれ、NPC個人であれ、その場所を知る人達は極少数なのだろう。


問題は源泉があるのかどうかよりも…。



「源泉?っていうのがあるかは分からないけど、お母さんに絶対に手を出しちゃダメって言われてたモンスターが居る場所知ってるんだよ!」


「なるほど、ヒンメルにしては賢い推測だな」



自分よりも強いモンスターがいる。


その事実と、源泉にはレイドボスが居る可能性が高いという話を照らし合わせて、そこに源泉があるかもしれないと導き出したのだろう。


うん、脊髄反射型のヒンメルにしては珍しく頭をフル回転させたみたいだな。


だが、しかし!



「でも、お前よりも強いモンスターが蔓延ってるような場所は却下です!」


「なんでなんだよ!?」


「危険過ぎるからだよ」



まだ魔物召喚スキルを試してすらいないが、俺の未来のテイムモンスターにあまり重荷を背負わせるわけにはいかない。


適度でいいのだ、適度で。


でも、まあ。



「目的地は決まってないし、そっちに向かう道中で目ぼしいフィールド見つかるかもしれないし、取り敢えず世界樹目指してみるのもいいか」


「決定だよ!」



世界樹近辺に源泉があったとして、俺が望むような条件を満たさないだろうが、お母さんに会いたいというのなら、それに付き合ってやらないとな。


守護獣として召喚してしまったことで、故郷や親から引き離してしまったという後ろめたさもある。


まあ、巣立ち云々の話を聞いているから、本人にしてもそんな重く考えてはいなさそうだが、自分以外の考えなんて基本分からないものだ。


小さなすれ違いの重なりが、決定的な溝にならないような努力は惜しむべきではないだろう。


「じゃあ、夏休みにでも行くか、世界樹に」


「夏休み?それっていつなんだよ?」



あー、いつの予定を立ててるのか言ってなかったな。



「二週間後だな」


「遅いんだよ!?」


「んなこと言っても、源泉を見つける為に遠出するのに、夜に視界が悪い中行くわけにはいかないから仕方ないだろ」



平日昼間の学生は無力なのです。



「じゃあ来週でもいいじゃん!レンテがいつも昼起きてる日があるんだよ!」


「聞こえが悪い言い方すんなよ…」



まるで昼夜逆転の自宅警備員が珍しく昼に起きていて驚かれるような響きがある表現に嫌気が差す。



「うーん、夏休みにゆっくり探すつもりだったんだけどなぁ」



まあ、取り敢えず世界樹に行っといて、いつでもワープ出来るようにしておくと考えれば、多少は効率的かもしれない…のかは疑問だが、多少の意味はあるしそうするか。



「源泉は夏休みにみんなで探して、二人旅は世界樹を目指すことに予定変更だな」


「やったー!お空の旅なんだよー!」



嬉しそうにはしゃぐヒンメルを見ていると、予定を前倒した意味もあったんだと、すっと納得できた。



「あ、あの!」


「ん、どうしたマリア」


「その…」



そんな予定を組んでいると、ルクシアという幼女保護者に背中を押された聖女様がモジモジと何かを言いたげに話しかけてきた。



「わ、私も、そのお二人の旅に連れて行ってはもらえないでしょうか!ご迷惑でなければで、よろしいのですが…」



尻すぼみに小さくなるお願いに、つい答えを言い淀んでしまう。


ヒンメルに二人旅と約束した手前、第三者を連れていくということにも小さな抵抗は感じる。


だが、それよりも旅と言えば聞こえはいいが、聖霊王のお守りがない状態で未知の危険地帯を空から巡る、正しく言葉にするとこういうことなのだ。


即座に帰還させられるヒンメルと違って、もし危ない状態に陥った時にマリアを逃がす術がない。


プレイヤーである俺が死ぬのは最悪構わない。


だが、NPCのマリアを危険に晒すわけにはいかないのだ。


だから申し訳ないが断ろう、とする直前にヒンメルが答えてしまった。



「ヒンメルはお姉ちゃんだから、マリアのお願いを聞いてあげるんだよ!三人旅なんだよ!」


「レンテ、心配しなくても大丈夫ですわ。マリアは回復のスペシャリストですわよ、聖女の称号は伊達ではないですわ。絶対に足手纏いにはならないのですわ。それに、未来視スキルを持つマリアは、自ら望まない限り死ぬことなんて有り得ないですもの」


「…それもそうか。そういうことなら、ヒンメルがいいなら俺がとやかく言うことはないよ」



寧ろ安全性が担保されるってことだ。


旅のお供にマリアは必須なまである。



「有難うございます!」


「礼はヒンメルに言ってやってくれ」


「ヒンメル様、有難うございます!」



なんか知らんが、姉ズラしたいっぽいからな。


ここに来た順で言えば、マリアが来るまではヒンメルが一番最近と言えなくもない。


クー・シーはフェアリーズの一員だから微妙だし、そもそもこっちに来たことも殆どない。


だから、マリアに対して後輩のようなイメージがあるのかもしれないな。


側から見れば背伸びしたいだけの子供だが、お互いが気にしてないなら好きなようにやらせておこう。


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