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167/日


只今、我らが水の聖霊王ディーネ様に叱られております。


場所は精霊宮殿の共有部屋だ。



「もうっ!人が来るなら事前に教えてくれてないとダメでしょ!」


「はい。俺の配慮不足でした…」



支配権を譲り渡されたとはいえ、ここは元々ディーネ達が一から築いた場所なのだ。


人を招くならちゃんと許可を貰ってからにするべきでした。


反省してます…。



「おもてなしの準備何も出来てないじゃん!」


「そこかよ…」



いや、でももっと気を遣うべきだったよな。


ディーネが怒っていた理由は違ったが、親しき仲にも礼儀ありってやつだ。


放置レベリングが上手くいきそうで浮かれていたのも確かにあるが、心のどこかで言わなくても分かってくれると俺の傲慢を押し付けていたのかもしれない。



「大丈夫ですよ、ディーネ様。こんな事もあろうかと、お菓子を焼いておきましたから」


「マリア、ナイスだよ!もしかして未来見えてるのってくらい、気が回るね!」



それマリアに限っては冗談に聞こえないから…。


まさかと思いつつマリアに目を向ける。



「レンテ様が人に会いに行くと仰った時点で、もしかしたらと思ったんです。その…帝国との諍いに向けての味方を集めに行くのかもしれない、と」



なるほど。


理由は別だったけど、結果的には半分正解だな。


精霊界への諸々を明かす為には、最低でも今後敵になってもらっては困る。


そりゃ、今後ずっと今の関係が続くと確信できるわけではないが、何事も始めは信じることが重要だと俺は思う。


でもそうだな…。


味方。仲間。戦友。


言葉は何でもいいが、来るべき戦に向けて仲間を募るべきなのかもしれない。


きっとその時、俺の前に立ち塞がるのはNPCだけではなく、プレイヤーも行手を阻むだろう。


再来週に大挙するであろう第二陣の動きも分からないしな。


最近付け始めた、メモ機能のやる事リストに追加しながら、お山の大将風に後ろにゾロゾロと連れてきたフォルトゥナ達を紹介する。



「こっちは【運命の輪ホイールオブフォーチュン】っていう異邦の旅人のクランの方々だ。帝国と戦争になっても味方で居てくれる、仲間第一号だな」


「よろしくね!」


「うむ、よろしくのぅ」


「異邦の旅人ってさー、この前勇者と話してたぷれいやー?ってやつなのか?」



俺も含めて、この場にいるプレイヤー全員が硬直してしまう。



「…そっか、聴いてたもんな」



聞かれないから此方からは触れなかったが、そりゃ疑問にも思うよな。



「その、プレイヤーとかNPCとか聴いて、不快な気持ちにはならないのか…?」


「私達が何者かに創られた存在、という話でしたね。精霊はその成り立ちが少し特殊ですから、特にどうと言うことはありませんよ」


「俺様もそうだが、精霊ってのはいつのまにか自我が芽生えるもんだからよ。最初の記憶がねぇんだわ。寧ろ納得…はしてないけど、そういう可能性もあんのか、くらいにしか思ってねぇよ」


「あたくし達自身も、力の端が勝手に微精霊に変わっていくのですわ。そういう意味では、あたくしも創っている側かもしれませんわね」


「これまで、長い時間、生きたけど、記憶のことで、不自由したことない、から。大丈夫」



それぞれの言葉で気にしてないと、精霊にとって気になるようなことではないと伝えてくれる。


テネブなんて知らない他人がいて、極度の人見知りが発動しているはずなのに、つっかえながらも俺を安心させようと一生懸命に言葉にしてくれた。



「だからそんな顔しないで、レンテ。わたし達は大丈夫だから。寧ろもっと、本当のレンテのこと聴かせてよ!」


「…ああ、ありがとな」



天野川を真実で殴って、俺だけ放置出来るはずもなかったんだ。


あの選択をした時点で、俺も向き合わなければならない。


何故なら、その始めの一歩を踏み出したのは他ならぬ俺なのだから。



「お互いに大切に想っておるのじゃな」


「当たり前だよ!停滞してたわたし達を救ってくれたんだもん!」


「ディーネ。私達は永久とも呼べる時間を生きてきましたが、レンテと過ごす時間は新鮮なのですよ」


「オイラとレンテは友達だからな!」


「すぐ変な方に突っ走るから見てて面白れぇんだよ」


「ま、まあ友達くらいなら、なってあげても構わないのですわ!」


「僕も、友達…えへへ」



そしていつもの如く、ドンッと扉が力強く開け放たれた。



「ねぇねぇ、私は!?ヒンメルも友達なんだよ!?」


「………ああ、お前も友達だよ…」



もう雰囲気も何もかもぶち壊しだ。


でも今日だけはお前の能天気さに感謝してやるよ。


だって、今すっげぇ恥ずかしいんだもん!


そっかぁ、今のフォルトゥナ達の前でやってたのかぁ…。


顔から火が吹き出しそうなくらい恥ずかしいんだけどぉ!?






粗方案内し終え、最後に精霊大樹の前まで戻ってきた。


精霊宮殿の外は、湖含めて行ってないが、俺も湖以外の外は未だに知らないので、外の案内は俺にも無理だ。


俺よりもヒンメルの方が詳しそうなくらいである。


まあ、あの鳥頭には案内なんて無理だろうけどな。


それに、案内したところでプレイヤーには敵が強過ぎる。


ああ、でも混沌鯰に挑んでもらうのも面白そうだな。混沌鯰君には先程の記憶がフォルトゥナ達から消えるくらいに奮闘してもらいたい。



「最後にこの大木が、さっき食べてもらった木の実各種が実る精霊大樹だ。これ毎日新しい果実を実らせるから、お土産に持って帰ってもいいぞ」



精霊大樹の実のお陰で、幹部メンバーの全員が精霊界の土を踏むことが出来ている。


今回のメンバーがフォルトゥナ達というのは、非常に大きな意味を持つ。


プレイヤーの中でも名の知れた攻略組集団で、極振りというスペシャリスト達だ。


つまり、現在のプレイヤー達の最先端であり、心夜さんやじゃがバタさんほどに、物理属性に尖ったプレイヤーは、居たとしてもごく僅かだろう。


これから先、プレイヤーが成長していけばどうなるかは未知数だが、現時点では精霊大樹の実さえあれば、恐らく全プレイヤーはスピリタスの異界を超えるための条件は満たせるということだ。



「じゃあ、そろそろ戻るか」


「そうじゃの。秋月が戻る時間が迫っておるようじゃ」



いくら四倍の時間が流れているとはいえ、豊穣閣でワープゲートの考察に30分ほど使ってしまったからな。


人間界で残り30分ということは、精霊界では2時間ということになるが、色々と案内していると2時間なんてあっという間だった。



「フェアリーズ、帰りも頼む」


「「「あいあい!」」」



フェアリーズの住処が、バングル型アクセの中では無く、空間創造の世界に変わったことで、俺の身体の胸の辺りに小さなゲートが開いて出てくるようになったのだが、側から見るとちょっとした一発芸のように見えるらしい。


そんな一発芸にも一つ利点があって、バングルの時は妖精の輪(フェアリー・リング)に必要なかったクー・シーも強制排出されていたのだが、空間創造に変わって、呼んでない時は出て来なくてもよくなったようだ。



「「「『妖精の輪(フェアリー・リング)』!!」」」


「『ワープゲート』!」



本日最後の妖精の輪だ。


今日のログインが精霊宮殿だったからな。


フォルトゥナ達に会いに行く前に一度使っているのだ。



「よし、成功したな!」


「どうしたのじゃ?」


「言い忘れてたけど、空間妖精のワープゲートって、異界間転移に限ってもう一つ制限があるんだよ」



本来ならフェアリーズは人間界に転移する場合、プリムス森林の聖域にしか転移出来ない制限があった。


所属してる源泉だからこそ異界間でも転移できる、ディーネ達に言わせれば裏技だそうだ。



「ワープゲートでも異界間転移する場合、所属して許可を得た源泉を目印にしないと転移できないんだ」


「所属させて欲しいとはそういうことでしたか」


「てっきり、友好関係を築く一環だと思っていたでごわす」



豊穣閣に所属して転移許可を貰ったことで、無事に豊穣閣にも転移できるようになっていた。


別に源泉は、ひとつのクランが独占前提のものではない。


どのクランのメンバーかは関係なく、一人一人別のクランでも、同じ源泉に所属することは可能だった。


つまり、複数クランで源泉シェアも可能ってことだな。


しかし、もし豊穣閣に転移出来なかったら、シルウァヌスにも怒られるところだったな。


我ながら本当に浮かれていたようだ。反省。



「では、妾達のホームに戻ろうかの」


「帰ったら色々と設備追加したいねっ!」


「ふふふっ、またアイテム集めからだわ…」



正直言って、俺もあまり理解してない部分が多い精霊宮殿のどこかに、彼らを触発する何かがあったようだ。


でも、分かるぞ。


自分以外のホームとか、インテリア見ると、つい自分も弄りたくなっちゃうよな!


だがしかし!秋月君に検証頼んでるのは忘れちゃダメだぞ!


さあ、放置レベリングの明日はどっちだ!


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― 新着の感想 ―
[一言] ディーネ達とのやりとりで顔から放射能が出そうなくらい恥ずかしがるレンテの姿はやはりスクショされてたりするのだろうか……
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