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今日も今日とて、ここ数日通い詰めている共同生産場に足を運んでいた。


目の前の作業台の上には、色とりどりの握り拳ほどの結晶体、魔石が並べられている。


その数は七つだ。


うち、青の魔石はさっき雑貨屋えびすで買いたてホヤホヤである。


全部砕いてしまったのを忘れてたので、十個ほど追加のご購入。


ついに、1,000Gを下回った所持金に心の中で涙を流したのは内緒だぞ。



「なるほど。言われるまでは気づかなかったけど、無属性ね」



プリムス平原には、全部で五種類の通常モンスターがいるが、その中で唯一魔術を使ってくるのがウィスプである。


なので、属性が重要である今回はウィスプの魔石ばかりにしか目がいってなかったゆえに見落としていた。


プリムス平原の残り四種は属性を持たないが、ドロップアイテムの中にはしっかりと魔石があることを。



ホーンラビット、ファングウルフ、ラージキャタピラー、レッサーイーグル。


どれも属性を持たず、しかし魔石はドロップする。


なるほど。属性を持っていないのではなく、無属性なのだとしたら納得がいくというものだ。


ただ、そうなると気になるのが──。



「属性として無属性なのか、はたまた何ものにも染まってないがゆえの無属性なのか」



グレン曰く、無魔術スキルがあるらしいので、おそらく魔石も属性としても無属性なんだろうけど…


それにしては、モンスターが無魔術を使ってこないのも不思議だと思ってしまう。


それに何より、火は赤、水は青、風は黄緑、土は茶、闇は黒、光は白、と来て無属性はガラスのように半透明な色をしている。


属性を持つための核はあっても、まだ属性という色に染まってないだけにも見えなくはない。



「ま、色々試してみよう」



まずは、下準備として無属性の魔石を砕くところからだ。


それほど掛からず、三十個砕き終わり、[ホーンラビットの魔石粉(無)]が完成。


水と土は昨日の残りがまだあるので、それを使って実験していこうと思う。



「まずは同量混ぜ合わせてみるか」



メモ機能を使い、分量別に成功・失敗の記録を取っていく。


最初は、各魔石粉を三分の一ずつ取り分け、混ぜ合わせてみる。


光の“ひ”すら現れず、失敗。


次は、緩衝材としての役割を期待して、4:4:2で混ぜてみる。無属性が2だ。


そして同じく失敗。


逆に無属性は属性に染まっていないという着眼点から、染まる部分が多い方がいいのかもしれないと、1:1:8、2:2:6を試した。


これまた変わらず無事敗北。


それぞれインク化も試したが、色はどれも濃緑色で、昨日と同じくアイテム名も[深緑色のインク]だ。


これは深緑色だったらしい。


ともかく、無属性を混ぜ合わせても昨日と同じ結果ということは、何も変わってないということだ。



「うーむ…配合比率は関係ないのか?」



それにこの実験、一つ問題があるんだよな。


配合比率を変えて調べる関係上、取り分けた後の使わなかった分は、生産途中の作りかけ判定のように、アイテムとして認識されないのだ。


当たり前と言えば当たり前なんだが、三分の一取り除いて、同じアイテム判定はおかしいだろうし──。


いや、そういうことか…?


閃いたことを実行に移す。



「大きい器…もう鍋でいいか。この中に、一個ずつ入れて──」



混ぜ合わせた瞬間、鍋の中が発光した!



「おっ、やっぱり!」



合計三つ出来たアイテム名を確認する。



「[劣化した混合魔石粉(樹)]か」



成功してしまった…。


混合魔石粉ってのは、ウィスプとホーンラビットの魔石を使ったからか、そもそもこの製法の魔石粉は混合と付くのか、のどちらかだろうが、今はどっちでもいい。



「問題は『劣化した』って部分だけど、配合比率を変えれば変わるのか、はたまたこの製法で作れるアイテムがこれなのか」



この一応の成功を見せた方法だが、至ってシンプル。


配合比率は、先ほど試した1:1:1だが、その混ぜ合わせる分量を変えてみた。


取り分けるのではなく、分かりやすく各一個ずつ入れて混ぜ合わせてみたのだ。



「そっか。取り分けたあとがアイテムとして判定されないんなら、混ぜ合わせた方もアイテム判定もらえてないのは分からなくもないな」



この結果を受けてするべきことは、さっきやった配合比率ごとの実験だな。


そして、その結果は以下の通りだ。


4:4:2だとそもそも成功せず、1:1:8だと劣化した魔石粉になった。


そして唯一2:2:6の場合だけ、[混合魔石粉(樹)]という結果を残した。



「よっしゃ!かなりのアイテムがゴミになったけど、最後に上手くいくと、なんかすっげぇ嬉しいな!」



込み上げてくる笑みを抑えきれないが、自分の語彙力には落胆ぜずにはいられなかった。


しかし生産職ってのは、こういう喜びがあるからこそ、やめられないのかもしれないな。


実際俺も、さらに物づくりへの衝動に掻き立てられいる。


まだ時間もあるので、その物づくりの衝動に抗わず、判明した最適な配合比率で、他の属性でも試していく。


配合比率的に、無属性の魔石が多い比率でよかった。


2:2:6ってことは、属性魔石が各二個に対して、無属性魔石は六個必要だということだ。


いや、1:1:3でもいいのか?


試してみよう。



「サラ〜、サラ〜、サラララ〜。グルグル…ピカーーー!!」



ヤバイ、嬉しさのあまりテンションがヤバイ。


しかし、予想通り1:1:3でも問題ないようだ。


[混合魔石粉(雷)]というアイテムが、それを物語っている。


ちなみに混ぜ合わせた属性は、風と土。


数も節約できそうなので、次々と混ぜ合わせていく。


結果、判明したこと。


火+土で溶属性、火+水で霧属性、火+風で灼属性、水+土で樹属性、水+風で氷属性、風+土で雷属性、光+闇で空間属性、だった。


そしてもう一つ。


混ぜ合わせて無属性を別属性に変えられるなら、同じ属性を二つにして混ぜ合わせたら上位属性に変わるのではないかと考えたのだが…。



──結果、半分だけ成功した。



半分だけというのは、1:1:3ならぬ、2:3で混ぜ合わせた魔石粉は、混ぜた属性魔石粉を五個にするに留まった。


つまり、火属性二つと無属性三つを混ぜた結果、火属性が五つになったのだ。


そこまで都合良くはないか、と少し落胆したが、俺にとっては朗報でもある。


今現在市場を溢れさせている魔石は、圧倒的に無属性の魔石が最多だろう。


プリムス平原において、属性魔石を落とすのはウィスプのみな上に、基本六属性からランダムで一つしか落とさない。


属性魔石はウィスプ一種から六属性のランダムなのに対し、無属性は他四種からドロップする。


いくら供給過多とはいえ、単純計算で無属性の魔石は、各属性魔石の二十四倍の在庫があると考えられる。


まあ、魔石の使い道は多く知られているが、魔石粉なんてアイテムは他で聞いたことがないので、俺以外に需要があるかと問われれば、頭を捻らざるをえないが。


ただ、それでも俺にとっては朗報だし、派生属性がほぼ判明したのは快挙と言ってもいいのではないだろうか。


一応、グレンにはメールしておくか。


無属性という突破口の糸口を示してくれたお礼と、少しの自慢を添えて。


実際のところ、自慢九割なのは否定しないがな!


自慢出来る相手がグレンしかいないのが寂しいところだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

宛先:グレン

件名:派生属性について


グレンのおかげで派生属性判明したから

お礼ついでに報告しとく!

やっぱり、派生属性は組み合わせだったぞ!


火+土=溶属性 火+水=霧属性

火+風=灼属性 水+土=樹属性

水+風=氷属性 風+土=雷属性

光+闇=空間属性


いやぁ、何というか生産って楽しいな!

最後になったけど、

グレンも明日レイドあるなら早く寝ろよな!

おやすみ!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



送信、っと。


若干うざい気もしないが、まあいいだろ。


相手はグレンだし。


よし、今日はよく眠れそうだ!


片付けを済ませて最近の定位置、中央広場の端にやってきた。


そこで、ログアウ──。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

差し出し人:グレン

件名:今、どこにいる!?


今行くからそこで待ってろ!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



え、いや、返信速すぎないか!?


っていうか、今彼奴王都にいるんじゃ…。


一応プリムスの中央広場にいることは返信したが、王都からプリムスまで戻ってくるような時間は待てないことも追記した。


だが三分後には、グレンは目の前に現れやがったのだ。


何故か、雑貨屋えびすのセシリアさんを連れて。


※済

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