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164/日

効率への第一歩。


それから幾つかの質問が飛び交った。



「精霊界との行き来は可能なのですか?」


「特殊な移動手段で俺と一緒なら他のプレイヤーも」



ローリエの質問に端的に答える。



「僕達も連れてってもらえないかなっ?」


「話が纏まったら」



すた君のお願い。


すたぁく本人にそう呼べと言われたので…。クランメンバーにはそう呼ばれているらしい。


俺達の居城にプレイヤーを招くのも、親睦を深める為に必要ならそれも構わないだろう。


今まではソロプレイ真っしぐらだったからな。


これからは少しずつプレイヤーとも交流を図っていく良い機会だ。



「ふふふ、源泉を一人で管理しているの?」


「譲り受けた時点でRPはかなり蓄えてあったのと、ディーネ達にも管理権限はまだあるから」



源泉の所属階級は上から順に、支配者、管理者、所属者の三つだ。


所属者に出来ることは極端に少ないが、支配者と管理者の違いは守護獣を召喚出来ること以外に少しあるくらいで、殆ど違いはない。


つまり、カースさんの質問への答えは、プレイヤーという意味なら一人だが、NPCも含めるなら7人ってのが正しい回答だな。



「守護獣はどんなモンスターでごわす?」


「フォルトゥナは一回見てるぞ」


「妾が?そんな記憶なぞないんじゃが…」


「ほら、雑貨屋えびすのクランホームで、グレンに飛び蹴りかましてた女の子居ただろ?」


「まさかヒンメルちゃんが〜?」


「守護獣って人でもなれるじゃん!?」



じゃがバタさんの質問に答えると、シロヤミさんと紅さんから驚きの声が上がる。



「人もなれるのかどうかは分からないな。あれは源泉の機能で守護獣にスキル覚えさせられるだろ?本人が【人化】スキル欲しいって言うから、あれで覚えさせたんだよ。本当の姿は緑のヒヨコなんだ」


「本人が…って、その話を信じるなら当時ヒヨコで意思疎通出来なかったのではないですか?」


「俺は無理だったけど、なんか普通にディーネ達がしてたから聞いたら、念話スキルを使えば意思疎通出来るんだと。最近では俺も、ヒンメルが鳥フォームの時は念話スキルで話してるぞ」


「あの内緒話しか取り柄のないスキルにそんな使い道があったでありますか」


「クラマスっ!アマルも人化スキル覚えさせようよっ!」


「どうやら無理っぽいのじゃ。何か条件を満たしてないのであろうのぅ…」



フォルトゥナがチラッとこちらに視線を送ってくるが、そんな条件に心当たりなどあるわけがない。


なんてったって、最初から取得可能スキル欄に表示されていたんだからな。



「ふふふっ、アマルは寝ること以外興味無さそうだものね」


「本獣の気持ちがスキルに影響するんかいな」


「一概にしないとも言えないよね〜」


「一応、人化は一部スキルが使えなくなったりするデメリットスキルだぞ。今のところ人型になれる以外にメリットはないな」



寧ろ小回りが効くようになって、制御不能になるかもしれないぞ。うちのヒンメルみたいに…。とは心の内に閉まっておこう。


あの鳥頭どうにかならないものか。


それを考えると、個人的な頭の良さではなく、種族的な頭の良さだろうから、進化していけば覚えられるようになるのかもしれない。


あのバカ鳥、種族だけは一丁前に最上位っぽいからな。



「考察はまた後にして、そろそろ本題に入るとするかの」


「ってことは、俺が源泉の支配者ってことは信じてもらえたってことでいいのか?」


「妾は最初から疑っておらぬのじゃ。皆も既に疑念は欠片もないじゃろうよ」


「それは有難い」



俺も幹部メンバーを見渡して確認するが、一部自堕落な人はいても、疑っているようには見えなかった。



「じゃあ本題を。キャラもスキルも含めて、俺のレベルは攻略組より数段劣るんだけど、最近もっと強くならないとって思わされることが続いてな」


「プレイヤー最強の師匠でもじゃん?」


「いや、最強は依然東郷のままだから」


「プレイヤーで最強でも、あの精霊王と堕天使の戦いを特等席で見せられては、強くならなければと思うのも仕方のないことでごわすな」


「無視かよ…」


「ふふふ、無視と言うより東郷では師匠さんに勝てないのは、純然たる事実ですもの。精霊王だけじゃなくて、強力な守護獣まで従えてるなんて、それこそ絶望よね。ふふふ」



ウェルグ殿下と模擬戦した時みたいに精霊化を封じられたり、他に精霊召喚を封じる手段だって今後無いとは限らない。


そうなれば、そこに残るのはただのソロ中堅プレイヤーだけなのだ。


…俺もう初心者じゃなくて、中堅名乗ってもいいよな?



「師匠、最近掲示板でどう呼ばれてるのか知らないでしょっ?極一部だけど、絶望の王、勇者の天敵から派生して、絶望の魔王って呼ばれてるよっ!」


「天野川の野郎…」



次は出会い頭に畏怖+絶望覇気をお見舞いしてやる!



「まあ、最強が東郷なのは譲らないけど今は置いとくとしてだ」



話が進まないからな。



「つまり、効率的に強くなる方法を思案中なんだよ。気づいているのか分からないけど、源泉ってそのポテンシャルがあると思うんだ」



俺の予想通りなら、その他機能はあれど、源泉はただ拠点を構えられる場所じゃない。


確かに源泉を支配することによって享受できるメリットは、今のままでもかなりのアドバンテージだろう。


フォルトゥナ達のように、最前線とはとても言えないような僻地でも全力でリソースを注ぎ込んでしまうくらいには、アドバンテージの塊と言っていい。


だが、その機能が偏っているのだ。


どう偏っているのかと言えば、戦闘よりも生産に偏っていると言っていい。


施設機能や防衛機能を使えば、RPで建築さえ可能だが、無論プレイヤー手ずから生産スキルで建築することも可能だ。


源泉の支配領域内でのスキル熟練度上昇効果も、拠点の中で戦闘スキルが使える場所なんて限られている上に、強力なスキルを試すことなんて出来ないだろう。


まあ、生産スキルも設備を用意しなければいけない点は、訓練場みたいな場所さえあれば使い放題な戦闘スキルと対比になっているのかもしれない。


だが、それでも源泉内で可能な行動は、圧倒的に生産スキルの方が多いのだ。


そもそも源泉システムが、生産職向けのコンテンツだと言われればそれまでだが、一つそうではない可能性を思いついた。



「クランメンバーにテイマーって居るか?」


「秋月だけじゃな」



その秋月さんを呼んでもらっている間に、核心部分を伝えておこう。



「俺が思うに源泉の機能を悪用…じゃなくて、正しく活用すれば、全プレイヤーが血眼になって源泉を求めるくらいの騒動に発展すると思う」


「そこまでかの」


「そりゃ、誰だって欲しいだろ。古い時代からMMOにあって、VR時代に淘汰されてしまった放置レベリングが出来るかもしれないんだからな」



これが俺が考えついた中で最も効率的なレベリング方法だ!


経験値も熟練度も稼がないといけない。


だけどそんな時間ない…。


だったら、経験値だけでもログアウト中に稼いでしまえばいいじゃない!


贅沢言えば、熟練度も稼いでしまえばいいじゃない!


源泉はその可能性を秘めている。


知ってるか?


契約種族やテイムモンスターがモンスターを倒すと、一部の経験値は召喚者に還元されるらしいぞ。


精霊召喚が特別なのか、ディーネ達とレベルが隔絶しているせいなのか、ディーネ達を召喚していても倒した経験値は殆ど入ってなかったのと、フェアリーズは基本攻撃しないから気付かなかったが、掲示板では既に立証された事実だという。


フェアリーズがそうであったように、契約種族は源泉に所属可能だ。恐らくテイムモンスターも可能だろう。


本来なら不可能なログアウト中の召喚維持だが、多くのテイマーがそうしているように、拠点にお留守番させておくことで、パーティ上限以上のテイムモンスターが管理されている。


つまり、拠点なら召喚維持以前に、召喚前の状態で待機しているのだ。


勿論、フェアリーズの前の住処であるバングルみたく、アクセサリーの中に住まわせることも可能だが、その場合の大きな違いは、生産行動だ。


ログアウト中にも生産行動が可能なことは、フェアリーズ然り証明されているからな。


そんな諸々を考慮すれば、源泉に所属させて防衛の一端を担わせることで、ログアウト中の放置レベリングが可能なんじゃないか?


源泉はフィールドのど真ん中に存在する。


それが街中にあるクランホームとの大きな違いだ。


現状、俺とフォルトゥナ達だけが可能な、出来てしまえば全プレイヤーを暴徒に変貌させかねない圧倒的なアドバンテージ。


その夢が、源泉には詰め込まれていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] たしかに放置レベリングはできればうれしいけど、レベルキャップあるゲームなら正直別に……って感じよね。スキルレベルの方が放置で上がるなら最強通り越してぶっ壊れになるけど、キャラレベルは上限が決…
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