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162/日


最近、クランにもランク制度が追加されたそうだ。


ソロの俺は疎い情報だからあまり多くは知らないが、ランクによって受注できるクランクエストなるものの難易度も変わってくるらしい。


だが、クランランクを上げる最大のメリットは別にあって、それが所属メンバーの上限解放だった。


初期の状態では50人しか…いや、仲間をそれだけ集めるのも大概大変だと思うが、攻略クランからすれば千を片手で数えるようなものだったらしい。


なので攻略クランというのは、サブクランを別で作って、以前からあった同盟システムを用いて一つの巨大な組織に変えていたのだが、クランランクが解放されたことで、その煩わしさも多少は解放されたという。


まあ、ヴァング率いるクラン【風の盟約】なんかは、総勢5000人を超える大所帯なので、焼け石に水らしいけどな。


何が言いたいかといえば、【運命の輪】も例に漏れず、クランメンバーは100を超えるらしい。


これでも攻略クランとしては小規模らしいぞ?



「中は空間拡張されてるのか」


「む、もしや同じような建物を見たことがあるのかの?」


「建物ってより、馬車とテントだけどな」


「まさか、あの馬鹿高い馬車を交換した稀有な存在だったとはのぅ…。豊穣閣に招いたプレイヤーは、皆驚いてくれるんじゃが残念じゃな」


「こんな大きな建物に空間拡張が施されてるのは初めてだから、十分驚いてるよ」



中国風の楼閣だが、日本で言えばちょっと五重の塔っぽいクランホームは、空から眺めて感じたのは、縦に長いが、横の広さはそこそこといった感じだった。


だが、中に入ると明らかに横にも広い。



「ここって自分達で建てたのか?それとも現地人に?」


「豊穣閣は源泉の力じゃな」


「施設拡張か…。まあ、そうだよな」



プレイヤーならともかく、こんな僻地にNPCを連れてきて、大型建築をさせようなんてとんだ酔狂だ。


予想出来ていた答えに納得する。


だって俺がフォルトゥナを情報交換の相手に選んだ理由が、俺以外で源泉の支配者と判明している唯一のプレイヤーだからだ。


源泉を手に入れた最初のプレイヤーだしな。


精霊宮殿と同じく、RPを使用して施設拡張の源泉機能で建てられた施設なのだろう。


精霊宮殿の方が敷地的に10倍以上あるので正確なお値段の方は分からないが、それでもかなりのお値段要求されたのではないだろうか。


精霊宮殿を建てる為に必要なRPが、10世界樹の実+αだったことを考えれば、単純計算で世界樹の実一個分くらいは持っていかれてそうだ。


ただ、精霊宮殿の施設拡張には、豊穣閣みたいな楼閣風の建築どころか、東洋風の建築は無いので、何か条件を満たす必要があるのか、フィールド毎に選べる施設が変わるのかは興味深いところだな。



「ほう?何故坊やがそのことを知っておるのじゃ?」


「それについては後で話すよ」



本来ならもう少し発言には気を付けるべきなんだが、今日は源泉支配のことを隠すつもりがない。


俺が知りたい情報は、これを隠していては話が先に進まないからな。



「おー、お嬢。帰っとったんやな。そちらが噂の師匠はん?」


「レンテです、よろしく」


「へぇ、レンテっちゅう名前やったんか。よろしゅうな」


「西京、いい所に来たの。集会の間に集まるように皆に伝えるのじゃ」


「ほな、伝えてきますわ」


なんというか、胡散臭い人だな。


ML商会のジョン・ドウに匹敵するくらい胡散臭い。


俺には関西弁がエセか本場かなんて聞き分け出来ないが、一度顔合わせただけで友達と吹聴されそうな信用出来なさがあった。



「西京はうちの副マスターじゃからの。もし妾に連絡がつかぬ場合は、アレに連絡するとよいのじゃ」


「…他に選択肢は?」


「確かに胡散臭いが、なかなか優秀なんじゃぞ?信用できぬなら、もう一人の副マスターも後で紹介しようかの」



西京さんには悪いが、俺が彼を信用できるまでは、そのもう一人に彼の役目を変わってもらおう。


というか、別にフォルトゥナと頻繁に連絡するようなこともないし、緊急で連絡を取り合うようなこともないと思うので、別にその役目自体不要だと思うけどな。


色々と建物内部の紹介を受けながらフォルトゥナの後に着いていく。


空間拡張された楼閣は、確かに横にも広がっているようだが、縦にも広がっていたらしい。


疲れない異邦の旅人の体で助かったな。


外観では五階建てくらいかなと思っていたのだが、集会の間がある最上階はなんと10階だった。


空間拡張したせいで、ベランダやバルコニーのような外に繋がる階層と、中部屋どころか窓一枚無い階層が交互になっているらしい。


勿論人気なのはベランダ付きの階層だが、わざわざ個人ルーム決めの為に、クラン内でオークションを開催したんだと。


まあ、幹部だからとかで決めるよりは文句も出づらいのかな?


精神的にゼェハァ心の中で息を乱しながらやっとの思いで集会の間に到着した。


現実なら間違いなく途中でギブしてますぜ、旦那。



「最上階には集会の間と妾の個人ルームだけじゃの」


「毎回ここまで疲れないのか?」


「妾だけの時は、アマルに露台まで乗り付けてもらうから、気になる程でもないのぅ」



露台ってのは、ベランダとかバルコニー的な意味合いらしい。フォルトゥナの視線の先には、気持ちよさそうに寝そべる山羊が居た。


そのうち、源泉がもっと他のプレイヤーにも一般化したら、ホームの中にも転移装置を欲しがるクラン多くなりそうだ。


その時は、元になる精霊結晶高値で売り捌けるかも?


変なところから恨み買いそうだからやらないけど。


それ以前に転移装置の作り方から学ばないとだな。


未だに転移装置の魔法陣が解読できない件について。もしかして解読スキルの熟練度稼ぎ必要説出てきたか…。



「すぐに集まるはずじゃから、しばし待って欲しいのじゃ」


「別に急がなくてもいいぞ。こういう台も源泉産なのか?」


中華料理店でしか見たことないような、中央が回転する円卓台だ。


この回転テーブルって実は日本発祥だというのは前にテレビで観た気がするが、そこは景観を損ねないなら気にしないのだろう。


他の調度品も中華風に統一感を持たせた設えで、うちの共有部屋とは大違いだ。


マリアは二日目にして頭が痛そうにしていたが、早めに諦めることをお勧めしたい。


あのゴッチャゴチャのグッチャグチャは、きっとこれから加速することはあれど見直されることは多分ないからな。


というか、あの聖女様神聖国に帰らなくていいのだろうか。


攫った側が言うのもあれだが、神聖国でマリアを脅かそうとする阿呆は壊滅したわけだし、戻ってもいいと思うんだけどな。


とはいえ、また自ら犠牲になろうとされるのも困るし、暫くは精霊界で過ごしてもらう方が安心ではある。


居たいなら居ればいいとも思うけど…。


別の問題が湧き出てこないかが、一抹の不安である。


既に俺の頭の中では、「別の問題」というプラカードを掲げたテューラが土から顔を半分ほど覗かせているけどな。


あれほどの厄介の種はいない。



「これはプレイヤーのオーダーメイドじゃな。豊穣閣と維持費でRPがカツカツでの、家具に回せるほど潤沢なRPはないんじゃ」


「まだアイテムのランクが低いからなぁ。もう少し先に進んで、高効率なRP変換出来るようになれば、色々と使えるようになりそうだよな」



守護獣のアルマをどこまで育てているのかは分からないが、あれにも大概ポイント吸われるからな。


あれもこれも手を出そうとすれば、メンバーが100人居たとて厳しいだろう。


豊穣閣にしても、空間拡張は追加オプションだろうし、そこにもRPは別途必要だろうし、現在【運命の輪】は源泉の充実に全振りなのかもしれない。


それから暫く世間話をしていると、ポツポツと西京を含めて八人のプレイヤーが円卓を囲んだ。



「集まったのぅ。情報交換の前に、お互いが欲する情報を明らかにしておくかの」


「そうだな」


「妾達が欲するのは、ユニークスキル【運命操作】の獲得方法とその効果じゃ。見返りは、その情報に釣り合うものなら、【運命の輪】が全力で叶えてみせる、というところかのぅ」


「俺から出せるのは、称号【黎明の岐路】の鑑定結果と【運命操作】スキルの効果だな。申し訳ないけど、【黎明の岐路】については、他の称号と違って獲得条件が曖昧どころじゃなく不親切だから、獲得した時の状況と併せて推測を話すくらいしか出来ない」


「鑑定結果が貰えるなら十分じゃな。それで、見返りに坊やは何を望む?」



ニヤリと不敵に笑うフォルトゥナだが、トッププレイヤーってつい人を試したくなる病にでも侵されているんだろうか。


俺が出会った中で直球勝負してきたのって東郷だけな気がする。


あいつもあいつで嫌な方に振り切れてるし、やっぱトッププレイヤーって癖が強くないと生き残れないのかもな。120%偏見だが。



「源泉について俺が尋ねたことに答えて欲しい。もし、称号とスキルの情報に釣り合わないと感じたら黙秘してもらっていいし、俺が聞いてないことまで話せってことでもない」


「それだけで良いのかの?」


「おう。ただ、俺もフォルトゥナと同じ源泉の支配者ってことを加味して判断してほしいな」


「まあ、そうじゃろうのぅ」



ここで騒ぎ立てるような奴は集められた中にはいないようだ。


事前に交わした自己紹介曰く、彼ら彼女らは【運命の輪】の中核メンバーらしく、無闇に場を荒らすようなことはしなかった。


とはいえ、物言いたげな視線をフォルトゥナに向けたり、こちらを興味深げに凝視したり、両目を瞑って傾聴していた巌みたいな男は、つい片目を開いてしまったりと反応は様々だが、関心は引けた様子。



「先程からやけに源泉について詳しい様子じゃったからの。相手が同じ源泉の支配者なら、隠すようなこともないじゃろう。皆も良いな?」



静かに頷く一同。


もしここで源泉の支配者か疑われるようならヒンメルを召喚しようと思ってたが、事前に匂わせといたのが功を奏したな。



「じゃあ、まず俺から話さないと情報の価値も判断出来ないだろうし、こっちから話すぞ」


「うむ、頼むのじゃ」



そこまで多くを話せるわけじゃないし、さっさと話してしまうか。


黎明の岐路さんは、マジで獲得条件「始めの一歩」は反省した方がいいと思います!


寸分の狂いなく九州人なので、関西弁は完全に偏見です!

これから数話、なんちゃって関西弁が出てくるので、こんな使い方しない!みたいな違和感あれば教えてもらえると助かりますm(_ _)m

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