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16/金


未知への挑戦に惨敗した翌日。


弁当をつつきながら、昨日失敗し続けた理由について悩む。



「うーむ…そもそも無理な可能性もあるけど…」



仮に予想通り水魔術と土魔術の先に、樹魔術があるのだとしても、そもそも魔石粉の属性が樹に変わらない可能性だってある。


生産では、新たなアイテムに変わる瞬間は光を放つので分かりやすいのだが、昨日は一度として混合魔石粉は光り輝かなかった。


それは新しいアイテム、つまり樹属性の魔石粉になっていないことを示し、生産途中のままでもあるのだ。


そして生産途中のものは、システム上アイテムとして扱われず、ストレージにも入れられない。


一応、樹属性の魔石粉にはならずとも、魔法のインクにはなるかもしれないと思い、そっちも試したのだがどれも失敗だった。



「まあ、インクにはなったけど」



特殊効果のない、ただの濃緑色のインクだったが。


でも、この結果が完全な間違いではないことを教えてくれているような気もした。


樹魔術の魔法陣は濃緑色だからな。



「何悩んでるんだ?」


「トモか」



相談しようか迷う。


なんとなく、誰かに助言を求めずに成功させたい気持ちもあるが、このまま悩んでいても答えが出そうにない気もする。


いや、そうだな。


昨日トモにはレイドの情報を教えてもらったわけだし、俺も上位属性や派生属性の情報でお返しするか。


まあ、トモにそんな気はなかっただろうし、そもそも知っている可能性は高いが、そこは言わないお約束。


話している中に、何か活路が見出せるかもしれないしな。



「トモは、上位属性とか派生属性とか知ってるか?」


「あー、少し前に掲示板を賑わせてたやつか」


「掲示板?」


「そ。掲示板って時々有益な情報転がってたりするから暇なときに見るんだけどよ、少し前に魔術関連の掲示板でそんな話してたぞ」



掲示板か。


掲示板情報は全てトモからで、自分で覗いたことはなかったな、そういえば。


外部の攻略サイトとかは、MLのリリース前に目を通したけど、そっちもリリース後はそれっきりだ。



「まあ、βでは無かったというか、発見されてなかったからな。今のところ真偽不明だぞ、それ」


「いや、あると思うよ。プリムスの図書館で、魔術関連の本に載ってたから」



まあ、端の方に小さくコラムっぽく載ってたので、気がつかなくても仕方ないだろう。



「お、マジか。でも、その属性の具体例は分からないって話だったぞ。だから、最終的に嘘断定されて話が終わってたんだけど」


「たしかに、具体例は載ってなかったな」


「そうか…いや、MLの中にあった情報なら確定だろうし、先にそういうのがあるって分かっただけでも収穫か」


「いやいや、まだ話はこれからだぞ」


「どういうことだ?」


「実は俺のスキルに樹魔術というのがあってだな」


「はぁ!?」



トモの突然の大声に、少なくない視線が集まる。


最近の昼休みは、課題をその日に終わらせようとする奴らが増えたからな。


教室内には結構人がいるのだ。


このクラスは意外と真面目なゲーマーが多いのである。


まあ、まだ高校生になったばかりなので、クラスメイトにも話したことのないやつも居るが、ゲームのために勉強を頑張っているところを見るに仲良くなれそうだとは思う。



「あ、すまん!」



トモが謝罪すると集まっていた視線は散っていく。



「おい、どういうことだよそれ!」


「小声で強調とは、また芸達者だな…」



今度は周りに迷惑をかけないように、右手を口横に当てひそひそ話をするように問い詰めてくる。



「どうもこうも、取得可能スキル欄に気づいたときにはあったんだよ」


「それって」


「条件らしいものは分かるけど、絶対教えない。というか、それだけは思い出したくない!あっ…」



今度は俺が大きな声を出してしまい、非難の視線を浴びる。


昼休みくらい談笑させてくれとも思うが、最近は俺も向こう側なので、黙って頭を下げておく。



「そこまで嫌がるなら経緯は聞かないけどさ…でも、そうか。実際に樹魔術があるってんなら、また騒がれるだろうな」


「え、これって情報開示した方がいいのか?」


「うーん、どうだろうな。中途半端な情報開示すると、まだ隠してんだろ、とか非難されたりもするし、かと言って、秘匿するとバレたときに叩かれたりもするからな」


「面倒だな」


「ホントにな。ただ、今の時点で王都まで進んでるプレイヤーは、多かれ少なかれ情報を秘匿しているぞ」



かくいうトモも秘匿している情報があるのだとか。



「そういうのってアドバンテージになるからな。有名になればなるほど、許される傾向もある」


「許されるってより、言えなくなるの間違いじゃないか?」


「暴言吐くような奴らは、自分では何も出来ないし何もしない、だけど他者の恩恵にはあやかりたいような連中だからな。えてして、そういう奴らは立場の強い奴を前にすると声が小さくなるもんよ」



なんともまあ、歯に衣着せぬ物言いだことで。


トモの言う通りだとは思うが、過去に何かあったのか?



「まあ、タケが情報開示したいってんなら止めないけど、しなくてもいいと思うぞ」


「やめとくよ。取得条件が特殊すぎて、絶対正規ルートじゃないし…」



半端に情報開示すると、絶対どうやって取得したのかと訊かれるのは容易に想像がつく。


途中で諦めてくれたが、トモだってそうだったのだ。


相手が他人であれば、掲示板では誹謗中傷まで飛び交って問い詰めてくることだろう。



「俺もそれがいいと思うぞ。それはともかく、樹属性ってことは上位ってより、派生属性かね?」


「多分そうだと思う。上位属性は炎みたいな単純強化なイメージがあるから」


「上位属性が単純強化って考えると、派生属性は組み合わせか──」



そこから少しトモの考察を聞いたが、ほとんど俺と同じ答えに行き着いたようだった。


ただ、俺の知らないこともあって。



「だとすると、無属性も上位か派生に…」


「無属性なんてものがあるのか?」


「おう。魔術系のNPCに師事すると教えてもらえるらしい。こっちは、検証も済んで確定情報だな」



無属性か。


名前の響きでは、上位属性か派生属性かの判断は難しいな。


ただ、NPCに師事ねぇ。



「NPCに師事ってさ、称号とか貰えたりするのか?」


「お前、そんなことでポンポン称号貰えるわけないじゃん。今、称号数トップのやつで四つだぞ?タケの三つでも十分異例だっての」


「四つがトップ?」



呟くように言葉が漏れてしまった。


だが待て、それはおかしい。


だって、四つというと、俺の称号も何を隠そう四つなのだ。


チュートリアル称号三つに加え、師匠の弟子たる称号。



「え、なに、もしかしてあれタケなのか?」


「いや、まあ…あはは…」



称号って案外簡単に取得出来るものじゃない、というのをトモに力説されて、そのあとの時間は過ぎていった。


もう話を戻せる雰囲気ではなかったので、助言は諦めてトモの話に耳を傾けることにしたのだった。



※済

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