表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/185

156/土

遅刻癖がついちまう…


言い訳は…帰ったら寝落ちしてまして…。


アッハイ、言い訳なんていいわけ(ドゴォッ


殴らなくてもいいじゃん!?


祝福の儀が始まった。


俺みたいな見学者はそう多いわけではない。


俺と天野川のハーレム、あとは多分参加してる子供達の親が数人ってところだ。


推定親は身なりがいいので、貴族とか大店の商家とかそんな感じだと思う。


祝福の儀は思ってた数倍地味だ。


聖書なのか、経典なのか外典なのか禁書なのかは判らないが、何かしらの分厚い本を片手に、ありがた〜い教えをバラキエルが説いている。


それをかれこれ一時間、子供達の三分の一はとっくの昔に船を漕いでいる。


校長先生の話よりなげぇんだ、これが。


やっと、訓戒や規範みたいな説法を終え、この世界の成り立ちらしき話に映る。



「遥かな昔、何もないただ白い、どこまでも白いだけの空間に、光が弾けました。始まりの神様の誕生です。神様はそれぞれ──」



始まりの神様はそれぞれ11柱いたそうだ。


創造神、火と闘争の神、水と生産の女神、風と勇壮の女神、土と豊穣の神、光と知識の神、闇と輪廻の女神、時間と空間の神、星と重力の女神、精霊と調和の神、破壊神。


星の女神は何もなかった空間に世界を生み出し、創造神はそこに人や動物、植物などの生き物を創り出した。時空神は生き物が成長する為に時を与え、精霊神は出来たばかりで不安定な世界の偏った力を循環させることで安定させた。


そうやって創り出された世界に息づく新たなる命に、火の神は生きる為の力を、水の神は道具の作り方を、風の神は一歩踏み出す勇気を、土の神は糧を得るための恵みを、光の神は凡ゆる知識を、闇の女神は疲れを癒す為の安らぎを与えたそうだ。


そして破壊神は、世界が前に進む為の試練を与えているという。



「(この話、どこまで本当なんだ?)」


「(わたし達も生まれる前だから、分からないかな〜)」


「(これは世界の成り立ちというより、神々がどのような事物を司っているかという話ではないでしょうか)」


「(実際、精霊神然り、存在しねぇ神もいるしな)」



まあ、人や動物の始まりは単細胞生物で、それが10億年以上の歳月を掛けて進化を重ねて多細胞生物になってね…なんて言われるより、こっちの方がファンタジーらしくて良いけどな。


それにこの世界で同じような説明をするなら、人族の祖先はスライムと言っているようなものだ。


ほら、スライムって単細胞生物っぽいじゃん?


それに最近のスライムって分裂するらしいから、あながち世界の始まりはスライムからと言われても、そういう別の異界があっても驚かないな。



「(それにしても動きがないな〜)」


「(マリアは大聖堂にはいるんだろ?)」



子供達だけでなく、シルフも退屈そうだ。 



「(別室で待機してるみたいですわね。でも幸福?スキルとやらのせいで聖女スキルの反応が点在している上に、マリアと全く同じ反応が二つ同じ場所にありますわね)」



その二つある反応ってのは、マリアと偽マリアだろうな。


他の聖女スキルを貸し与えられている者達と違って、偽マリアは光属性の偏りまで全く同じってのがどういう理屈か分からないが、そのせいで現れた瞬間に確保と動けないのが煩わしい。


ルクシアには幸福スキルの存在を隠していた辺り、かなり前からマリアの中で計画は練られていたのだろう。



「では、祈りを」



どうやらやっと終わったらしい。


子供達は各々好きなように祈っている。


手を合わせて拝んだり、膝をついて敬虔な姿勢で崇めるような子もいるし、「お願いしますお願いしますお願いします」とあの子が一番自分の中に神様を持っている気がする。


特に祈りに形式的なものはないっぽいな。


バラキエルの説法は、第一印象が最悪過ぎて耳を傾けることにも嫌悪感を抱いていたが、話の内容は至極真っ当だった。


まあ、定型文なんだろうけどな。


あんな人を小馬鹿にしたような薄ら笑いしていたとは思えない真面目な表情で、ツラツラと心にも無さそうなことを述べていたが、本当にこんな二面性が激しいやつを八大天使とかいう役職に着かせていていいのだろうか。


いや、出来ることなら今日この場で失脚させておきたいのが本音だが。



「「聖女マリア、入場!」」



入り口を固めていた二名の聖騎士が声を張る。


誰が触れたわけでもなく、扉が開いていく。


マリアを先頭に、イェレミエルと偽マリア、他に四人を引き連れている。



「(ルクシア、変装してる可能性は?)」


「(あり得るとしたら、マリアとマリアンヌが入れ替わっているくらいですわ)」



偽マリアもマリアンヌもどちらも、あの修道女のことだ。


マリアとの対比で判別つけづらいから、別にどっちで呼称しようと大差ないな。マリアンヌは偽名説がある程度だ。


マリアはバラキエルがいる壇上に登ると、講壇よりも一歩前に位置取る。



「(じゃあ作戦通り、マリアが動きを起こしてからだ)」



どちらが本物のマリアだろうと、禁呪を発動させるのはマリアだし、祝福の儀の中核を担うのもマリアである必要があるらしい。


祝福の儀の魔法陣を発動させるのは、マリアにしか無理というわけではなく、創造神の加護持ちである必要があって、それが教皇かマリアの二択なんだと。


何かアクションを起こした方が本物の可能性大だ!



「未来を照らす子供達に祝福あれ」



魔法陣が輝く。



「フェアリーズ!やれ!」


「「「『妖精の輪(フェアリーリング)』」」」


「『ワープゲート』」


「【閃光】!ルクシア行け!」


「(『共鳴同化・解除』!)」



出てきて早々申し訳ないな!


お帰りは精霊界へどうぞ!


眩い光が祝福の間を満たす。


きっと今頃、マリアの真後ろにワープゲートが開き、ルクシアが無理矢理マリア押し込んで、ワープゲートの中に連れ去ろうとしていることだろう。


本当なら足元にワープゲートを開いて、言葉通りの足元にお気をつけ下さいをしてやりたかったのだが、仕様上無理っぽかったので、『ワープゲート〜泣く泣くルクシア特攻隊を添えて〜』に変更されたのだ。


聖霊王の最速が誰かご存知だろうか?


細かな動きならサラは得意だし、初速ならシルフも負けてない。


だけど、こと最速においては間違いなくルクシアだ。


だって文字通り光速なのだから。


そして俺が使った閃光スキル。


今日この日の為に用意した最後のスキルだ。


ただ光を撒き散らして一瞬視界を奪うだけのスキルで、有用なように見えて実はそうでもない残念スキルの一つ。


なにせ、味方の視界だけでなく自分の視界まで無差別に奪ってりゃ世話ないからな!


しかし、ルクシアだけは違う。


この中で光の申し子たるルクシアだけは、何も影響されずに動けるのだ!



「マリア、絶対に貴女を死なせたりなんかさせませんわ!」



まともに相手してやれなくてすまんな、勇者!


でも安心してくれ。


妖精の輪(フェアリーリング)にRTが設定されちゃったからな!


その時間、なんと30分。


一戦闘中に一回しか使えないんです!


やってくれたな、運営!?


いつの間にと思えば、ダンジョンイベ後の修正パッチで調整されてたみたいだ。


修正対象者にだけ、メールで通知来てたっぽい。


代わりに、攻撃なら火力、ワープゲートなら持続時間、リフレクションなら許容上限なんかがかなり上がっているみたいだが、連続使用不可ならそんなの誤差だろう。


戦闘以外では連続使用しないから気付かなかった罠!


人間界と精霊界を往復するにしても、それなりに必然的に時間空けて使ってたからな。


つまり何が言いたいかと言うと!


僕達、逃げられまへん…。


他の邪魔者に追っかけられても拙いし、ルクシアとマリアが通過したら閉じる手筈になっている。



「レンテ、ルクシア様離脱したよ」


「よっし、空間妖精閉じろ!」



勝負だ、天野川!


お題目は鬼ごっこ、異論は認めません!


お前が鬼で、俺が逃走者でいいよな?


時間制限は30分、スタートはこの閃光が治った瞬間だ!


ラウンド2、ファイ!


反省してます、お許しくださいm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 別に殴りもせんから、がんばりーや
[良い点] はい勝ちー(鬼ごっこに勝とうが負けようが聖女が戻ってくることはないため)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ