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147/木


勇者が神聖国を訪れるのは二日後の土曜日。


アウラに助けられた経験がある俺としては、勇者を守る必要があるのかは甚だ疑問だが、守れというなら身を挺してでも守ってみせよう。


そもそも、俺の周りには常にディーネ達がいるのに、ミドリ様が俺に頼んできた理由だが、現状の神聖国において聖霊王はとにかく動きづらい。


もし仮に、祝福の儀という神聖な場で子供達の目の前で凶行が起こったとして、たとえそれがこちらに落ち度が無かろうとも、守るためであったとしても聖霊王が信徒を攻撃したというのは、神至上主義派の大義名分を助長させるし、子供達を思想誘導する恐れさえあった。


敵は聖霊王が神聖国にいると知っている。ならば、必ず何か対策を講じるはずで、一番簡単なのが祝福の儀の最中に襲撃してくることではないかと思っている。


それ以外の場所で襲撃される分には、正教派が多数を占めるので、目撃されても問題は少ないだろうが、そうなると今度はどういう対策を取ってくるかが未知数になってしまうというジレンマ。



「よし、キタぞ!」



混沌鯰の掛かった釣り竿をみんなで引っ張り上げる。


残り二日、俺があの国にいて出来ることは皆無だ。


土地勘もなく、正教派と神至上主義派の見分けなど付かず、変に行動しすぎて悪目立ちすることも避けたい。


ならば俺が出来ることは、時間が引き延ばされた精霊界で、限界まで熟練度稼ぎするのが最善だと考えたのだ。


取り敢えず神聖国への転移許可はショタ教皇から貰ってあるので、今度は問題なく入国できる。


神聖国への転移許可は、祝福の儀のための転移許可は一度限りの制限付きで、恒久的な許可は神聖国からも貰うがある必要らしい。


ちなみに、次結界の外から入ってこようとしたら、いくら聖霊王同伴でも牢屋行きだと忠告されました!


どうやらイェレミエルの最初の対応は間違ってなかったみたいだぞ。ちょっと私怨が混じってただけで。



「【魔人化】『マジックブースト』『クリティカルマジック』『マジックバリア』『魔術の心得』『アンチマジックエリア』【畏怖】【絶望覇気】【英雄覇気】!」


「レンテ、頑張って!」


「本当に危ねぇ時は助けるからビビンじゃねぇぞ!」



何度か相手にしたナマズ野郎も、今日だけは正直チビってしまいそうだ。


何故なら、トリプルスコアでさえ届かない相手とサシで勝負しようとしているのだから。


理由は色々あれど、二日後にはきっと格上と戦うことになる。それも聖霊王がいる状況で、聖霊王に期待できない場面で。


日頃全く使わない杖術の武技を使ってるのは、ちょっとでも慣らしておくためだ。


咄嗟の判断で使えるようになるには時間が必要だろうが、効果の把握はしておいた方がいいだろう。


それにエンチャント系を戦闘前に掛けるのと比べて、こっちを戦闘開始後にブッパするのは、武技は魔術に比べて効果時間が短いからだ。



「『カースド・メルト』!マジで傲慢ぶっ壊れてるよな…。『カースド・スチーム』『カースド・ミスト』『カースド・グローブ』『カースド・アイス』『カースド・サンダー』複合呪詛魔術『フィジカルカースド』複合呪詛魔術『マジカルカースド』複合呪詛魔術『カースドオブスローン』」



〈称号【万能の呪詛士】を獲得しました〉

〈称号【万能の呪詛士】が称号【万能の呪詛師】に変化しました〉



あれ、万能の呪詛士までは前例があったから、そうなるだろうと予想してたけど、なんか追加報告が。


何か条件を踏んでたらしい。


確認は後でいいか。


まずはこのデカブツを倒してからだ!


陸上に水揚げされたコイツの攻撃手段は主に魔術系で、近づけば六本生えてる髭や、体をくねらせて物理攻撃もしてくる。


つまり、魔術を封じて遠くからちまちま攻撃すれば完封勝利間違いなし!


となればいいなっていう希望的観測です。



「【貫通撃】『ウィンドボール』!」



そしてこの貫通撃スキルこそが、俺がソロナマズの挑戦権を得られたMVPスキルであり、テスト期間中に息抜きを兼ねて、わざわざダンジョンに潜ってDPで取得したスキルだ。


コストが二倍になる代わりに、防御を貫通してダメージを与えるスキルなのだが、どれだけ彼我の差が開いていても、絶対に1ダメージを確約してくれる優れものだ。


もはやハルパー要らずである。


ダンジョンイベ後のDP稼ぎは、モンスター討伐のみでパーティ頭割りになっていたせいで、ダンジョンボス周回しても1000DPずつしか稼げなかったので、スキル一つに150周もする羽目になったせいもあり、手に入れたのはこのスキルだけだ。


どうやらイベント中限定報酬とかも中にはあったみたいで、貫通撃スキルは恒常報酬だったようで助かった。


このスキルがあったからこそ、ディーネ達に守ってもらいながらナマズ相手に安全に魔術スキルの熟練度稼ぎできたのだから、15万DPの価値もあろう。



「【貫通撃】『ファイアボール』【貫通撃】『ダークボール』【貫通撃】『ライトボール』【貫通撃】『ヒートウェーブ』【貫通撃】『ディメンションストライク』!」



そしてこのナマズの頗る厄介なところだが、灼・空間魔術以外の派生魔術が効かず、基本魔術も水と土はダメ。水・土・樹に至っては回復してしまうという鬼畜仕様だ。


樹属性が一番酷かったです!


耐性ガン無視スキルである傲慢が何故効かないのかというと、ノーム曰くダメージが無かったり、回復したりするのは、耐性ではなく属性との親和性が高いからなのだとか。


属性との親和性が高いと、ステータスとの相乗効果でダメージを無効にしたり回復したりするっぽい。


水性生物相手に得意なはずの火がダメージが通って、水が効かないのはそのせいだな。



「【貫通撃】『ウィンドボール』【貫通撃】『ファイアボール』───」



俺も称号や諸々で属性との親和性はずば抜けているらしいが、ステータスが低いから…。


ディーネ達はステータスとそれ以上の親和性の暴力で殴ってたけどな。


この疑問が晴れたお陰で、そういうものだと不思議にも思っていなかったある事実が明るみになった。


混沌鯰、熟練度稼げない問題である。


スキルの熟練度とは使えば使うほど上がっていく仕様なのだが、混沌鯰に関してはピクリとも動かなかった。


気づいてみればおかしな話だ。


だって、スフィルロックでの熟練度稼ぎは出来たのに、混沌鯰では出来ないってのは矛盾している。


その理由は、どうやら親和性によって無効・回復されると、熟練度が稼げない仕様になっているらしい。



「これも喰らっとけ!」



杖を左手に持って、貫通撃のためのダンジョン周回でも数の増えたハルパーを、ついでのようにヒョロヒョロと右手で投げる。


これも当たれば立派な確定1ダメージだ!


とはいえ、在庫は72本しかないので、のそのそと近づいてこようとする水揚げナマズと距離を保ちながら、落ちているハルパーを拾って数を誤魔化す。


MPが切れそうになったらポーションを飲んで、ただ繰り返すだけの機械だ。


エンチャントもカースドも、杖術の武技も、効果が切れれば癖づける為に継続して使っているが、正直に言えばこの戦闘においては無駄な労力かもしれないな。


何しても1しかダメージが通ってないのだから。


いや、ワンチャン魔術の方は2、3くらいにはなってるかもしれないが、10を越えないだろう。


こんな図体(ずうたい)しといて、通常モンスターなせいでHPも確認できないから判断のしようがない。


だから魔術に関しては、多分1ダメージだ。


前に試した時に、貫通撃に妖精の輪(フェアリーリング)、一撃粉砕(魔)まで乗せて怯みすらしなかったのは軽い悪夢だったよ。


そして、ボスならば特殊行動の一つや二つや三つや四つあるだろうが、こいつはただレベルが高いだけの通常モンスターだった。



三時間後。


流石に同じことの繰り返しで集中力が途切れそうになりながらも、ついにやり遂げた!



〈LV.42に上昇しました〉


〈【貫通撃】LV.10に上昇しました〉

〈【知力強化】LV.20に上昇しました〉

〈【器用強化】LV.20に上昇しました〉

〈【MP自然回復】LV.20に上昇しました〉

〈【MP回復速度上昇】LV.20に上昇しました〉

〈【MP貯蔵】LV.10に上昇しました〉

〈【範囲拡大】LV.20に上昇しました〉

〈【効果増大】LV.20に上昇しました〉


〈称号【大物喰らい(ジャイアントキリング)】が称号【下剋上】に変化しました〉

〈称号【甚振る者(ドS)】を獲得しました〉


〈【手加減】スキルを獲得しました〉



精霊界でレベルまで上がってしまって、やり遂げたという達成感もあるが、どちらかと言えば疲労困憊具合の方が勝っていたのだが、クソみたいな称号が生えたせいで、それも吹き飛びそうなんですが!?


1ダメージずつ削ったのが敗因でしょうか…。


しかし、それでもやっぱり疲れたな。


身じろぎ一つで即死だと考えると、意外と攻撃よりも位置取りに精神を削られていた気がする。



「やったね!」


「頑張りましたね」


「やるじゃねぇか!」


「感心しましたわ」


「お、おめでとう」


「相当時間掛けてしまったのに、ずっと応援してくれてこっちこそありがとうな…」



声援は届いていたが、答える余裕がなかった。


常に口は魔術でフル回転だ。


そして緊急回避的に一応だったが、絶望の状態異常が治ってしまった時のために用意していたアイテムもあった。


バイオレットオーガはボスだったからか、何らかの耐性でもあったのか解けてしまったが、幸いにも混沌鯰はかかり続けてくれたお陰で嵌め殺してしまったので、使わなかったけども。



「まあ用意はしておくことに意味があるよな」



友の忘形見[モーリュの魔封じ]。


まあウェルグ殿下は死んでないんだがな!


貸してくれと頼んだらこんな欠陥品くれてやると投げ渡されたのだ。


どうやらこれを使ってさえテューラにボコられ、次の日には鍛錬でいつも以上にボロ雑巾のようにされ、思い出すのも忌々しいんだとか。


祝賀会では東郷やマルシェに迫られても、殆ど情報すら落とさなかった殿下が渡してくれたのだから、そこそこ信頼してくれてるのだろう。反テューラ同盟として。


そして、何故か気まずそうにしていたシルフが口を開く。



「なあなあ、言うか迷ったんだぞ?でもさ…共鳴同化すればいいんじゃないって…」



思いついてしまったそうだ。


ぐふっ。


そ、そうだよな。共鳴同化して俺の中に入れば自由に力も使えて、相手にもバレないよな…。


敵にバレても、子供達にバレなければ、そこまで大きな問題にもならないわけだし…。


それ、クリーンヒットです!


杖術武技とカースドについて、本編に書くの忘れてたのでこっちに載せときます!


杖術武技

LV.1

『マジックブースト』

一定時間、魔術の威力に補正

『クリティカル・マジック』

一定時間、魔術のクリティカル率を上げる

LV.3

『メディテーション』

MPの回復速度を上げる(戦闘中も可)

ただし、少しでも動くと効果が切れる

LV.6

『マジックバリア』

対象の魔術耐性を上げる

LV.10

『魔術の心得』

INTに補正

LV.15

『アンチマジックエリア』

一定範囲内の魔術の威力を下げる


カースド

『カースド・メルト』

溶魔術のVITデバフ

『カースド・スチーム』

灼魔術のSTRデバフ

『カースド・ミスト』

霧魔術のMNDデバフ

『カースド・グローブ』

樹魔術のINTデバフ

『カースド・アイス』

氷魔術のDEXデバフ

『カースド・サンダー』

雷魔術のAGIデバフ

複合呪詛魔術『フィジカルカースド』

STR・VIT・DEX・AGIデバフ

複合呪詛魔術『マジカルカースド』

INT・MNDデバフ

複合呪詛魔術『カースドオブスローン』

全ステデバフ


です!


基本エンチャント系と属性以外の部分で違いはありません。作者が見落としてなければ…。


そして、無理矢理差し込んだ作者の見落としという名の、矛盾の話なのですが…。


スフィルロックの熟練度稼ぎと、混沌鯰熟練度稼げない問題って盛大に矛盾していることに気がつきまして…。


もし気づいていた方がおられましたら、こういうことにしておいて欲しいデス…。


そのせいで何故か回復するようになったのは、ドンマイ主人公!


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― 新着の感想 ―
[一言] 会ってないが本物マリアを犠牲にしてできる糞神程度なら天使(極一部)は滅ぼしても問題はないよね?羽根毟って飛べない様にし上から目線で尊厳踏み躙って死なないギリギリまで痛めつけてしまいたい程度に…
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