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139/日



〈【ヴェルム神聖国】開放ボーナスにより、AP12・SP6を獲得しました〉


〈称号【祈りの(とき)】を獲得しました〉

〈【祈願】スキルを獲得しました〉


《レンテ が【ヴェルム神聖国】を開放しました》



まさかここまで手厚いおもてなしを受けるとはね。


分厚い石壁と冷たい石床、手の届かない高い位置にある子供しか通れなさそうな鉄格子の窓、辛うじて置いてあるのは襤褸屑寸前の木製椅子だけだ。


懲罰室かな?


ディーネ達は気にした様子もなく床でトランプしてるし、それを扉の小さな小窓から監視する見張りの神官は苦虫を噛み潰したような視線を何故か俺に向けるし、こんな状況で俺に解決策なんて皆無だし、どうしろってんだ。


流れるようにこの場所に連れてこられてから、かれこれ30分。


そろそろ夕飯ログアウトの時間なんだが、流石に進展がないと厳しいぞ。



「あの〜、ディーネ達置いてくんで俺だけ取り敢えず釈放してくれたりは…」


「召喚主のお前が外に出れば、精霊王が解放されるのと同義だろう!大人しくしていろ!」


「あー、レンテだけ逃げようとしてる!ずるいんだ〜」


「初めて来たのはオイラ達だって同じだぜ!」


「なになに、お外出られるんだよ?」


「心配せずとも、もうじき解放されますよ」


「やけに確信的だな」


「……」



テネブは隠し事があると黙る癖がある。嘘を吐けない性格というか、嘘がバレやすい性格なので、必死の抵抗のつもりなのだろう。


でもディーネ達まで待てというなら仕方ない。


最悪の場合はここでログアウトも致し方ないだろう。


なので、時間を潰す為にさっきは時間が無くて確認出来てなかった新しい称号でも見てようかな。


まずは地上の森での殲滅戦で獲得した称号【孤立無援の掃討者】。


効果は、敵に囲まれるとスキル・ステータス補正(大)。援軍が来ると効果が無くなるオマケ付きだ。実に使えません!


援軍どころかパーティメンバー以外がその場に居ても発動しないっぽいので、今後使い所があるかどうか。というか、使い所なんて来ないでほしい。


そして、さっき入国…?あの兵士に両脇を固められて碌に景色を楽しむ余裕すらなかった連行現場を入国というかは分からないが、その際に獲得した称号【祈りの刻】とそれに付随した【祈願】スキル。


まあ十中八九、ヴェルム神聖国を開放した特典称号だろうな。


効果は【祈願】スキルの獲得だが、このスキルグレーアウトしていて今は使えないようだ。テキストも曖昧で、祈願した対象に応じた効果を得る。というもの。


祈りが必要なら、今現在のこの状況を嘆いて祈るので助けてほしいけどな!



それから15分程して漸く進展があった。



「こんな所に閉じ込めるとはな、天使共は何を考えてるんだ。イェレミエルを連れてこい!」


「これはこれで面白いですわね」


「え、なんでルクシアが?」



ルクシアとテネブだけがこの国に(ゆかり)があるっぽかったが、何か因縁があるようだったので、特に問題がありそうな方は召喚しなかったというのに、何故お前はそっち側にいる!?



「驚きましたの?驚いてますの?ドッキリ大成功ですわ!」


「何がどういう…」


「ティアやレンテと同じですよ。とはいえ、ルクシアの場合は少し特殊で、歴代の教皇と結ぶ特殊な契約で召喚が可能なので、二人みたいに適性があるわけではないですけどね」



つまりなんだ、俺以外はこの展開が予想できてたってことか?いや、俺とヒンメル以外か。



「お前がルクシアが言っていた新たなる逸脱者だな。我が国の兵士が失礼した、相応の詫びを用意しよう。だが、その前にいつまでもここで過ごさせるわけにもいかない。話は場所を移してからにしようか」


「子供…?」



金髪碧眼のすっごく偉そうな子供がいた。


いや、偉そうってのは悪い意味ではなく、威風堂々たる立ち居振る舞いと、豪奢な祭服からの第一印象だ。


俺のことを逸脱者と呼んだのは、シルウァヌスさんに続いて二人目か。



「この姿は呪いで成長が止まってしまってな。お前のよく知る賢者の半分は生きている」


「いや、そんな当たり前のようにマーリン爺を単位に使われても分からないから」



そもそもマーリン爺のことなんて、殆ど知らないしな。


なんか魔導に狂ってるくらいの認識だ。



「そうか…。しかし終焉では、私の人生など赤子の時よりも短いだろう。まあ、お前よりは先輩だってことだ」


「…ああ、そうですか。それは失礼しました…」



おい。この外見詐欺のショタが教皇なんだろうが、意外とフランクだな〜とか考えてたのが一気に吹き飛んだぞ。


なに、師匠ってそんなに歳とっ…年齢が…いや、長生きしていたのか?


1/2マーリンの法皇が赤子以下って、多少温情を加えても師匠は70マーリンくらいってことか。


いや、よく分からん!


恐らくマーリン爺の年齢が、師匠の一年くらいの認識なのだろうが、この単位で表してしまうと途端に思考がチープになってしまう。


あれだ、寝られない時に羊が1匹…と数えるみたく、羊の代わりにマーリン爺が駆け抜けていく嫌な思考に囚われそうだ。


まあ師匠が何歳でも俺には関係ない。


教皇猊下(げいか)、師匠にこの会話が聴かれてないといいですね!俺は失言しませんよ!


居場所が把握されてるなら、会話を盗み聴かれてても不思議じゃないからな。精霊界やダンジョンならともかく、流石に人間界では地獄耳を発揮してても驚かない。



そうして連れられたのは、都市の中央に鎮座する大聖堂…ではなく、大聖堂に程近い豪邸だった。その応接室。



「大聖堂は祈りを捧げる場だからな。そういうのに天使は煩いんだ」


「教皇とは思えない言葉ですね」


「最も信心深いのは下っ端の天使達だが、最も神という存在を理解しているのは私達だ。アイツらの信心とは真逆に、神ってのはずっと俗物的なんだがな」



神をも恐れない言い草だことで、そのままの意味でな。



「変な事件に巻き込まれたくないので、聞かなかったことにします」


「お前の場合は既に手遅れだろう。ルクシアを召喚出来る時点で、一部の天使から目の仇にされるのは確定事項だ」


「あたくしのせいではないですわ。勝手に自分の立場が危うくなると思い込んだアホ天使達の暴走ですわよ」


「それにルクシア以外の聖霊王を召喚出来るというのも拙い。エルフの精霊信仰を嫌う者達もいるからな」



うーむ、実際に神様がいる世界でも思想の違いは如何ともし難いらしい。



「我らが主は神であり、決して精霊などではない!ってのが、彼らの主張でな」


「精霊神さえいれば、あの子達も嫌な目を向けられなくて済むのにね〜」


「精霊神関連の本、持って帰った、のに進展はゼロ、だったから…」


「何が足りないのでしょうか」


「俺様は一回天使をぶん殴ればいいと思うけどな」


「オイラもさんせー!」


「既にイェレミエルを何度もボコボコにしてますわ。改善の余地は皆無ですわね」


「おい、ルクシアが蛇蝎の如く嫌われてるのってそれが原因だろ」


「ふんっ、あの愚図天使ムカつくんですもの、仕方のないことですわ」



ヒンメルにはオヤツを渡して一旦送還した。代わりに召喚したサラは少し不機嫌だったが、思ってたより怒ってる様子はなくて一安心だな。


本人も森の中ではどうしようもなかったと分かってくれていたのだろう、多分。


しかし、色々と判明したな。


天変地異に等しいような大災害を起こそうとも精霊神に至ろうとしてたのは、エルフ族の為だったらしい。俺が軽はずみに精霊神への可能性を口にした時に、諭されたりしたのもその想いの大きさ故だったのだろう。


精霊の自由奔放さというのもあったのだろうが、その話を聞いた時には軽く引いてしまったので、ちゃんと理由もあったようで安心したよ。


そして、一部の天使に嫌われているのは、聖霊王全員ではなく、ルクシアとテネブであり、正確には過去に神聖国に訪れたことのあるテネブはルクシアに巻き込まれているっぽい。


あとは、俺が解読スキルを取得可能になった本や、精霊宮殿の未だタイトルすら解読出来てない大量の本は、この国から持ち帰ったものなんだろう。


そんなことを考えていると突然、力任せに扉が開けられた。


なんかこんなこと前にもあったっけな。



「グランベル!何故、あの罪人共を解放した!」


「罪人とは随分なご挨拶ですわね、イェレミエル」


「ヒィッ!?ち、近寄るな穢らわしい!」



おおう、大の大人が随分と怯えてしまっている。


イェレミエルは俺達を結界の外から連行した時にいた、神官の天使だった。


どれだけの扱きを受けたら、この偉そうな天使がこんな醜態を晒すのか。


あ、この偉そうな(・・・・)は、勿論悪い意味での他人を見下してそうって意味です!

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