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134/金



「くぅあぁぁぁあっ!!終わったぁぁぁあ!!」



やっっっっっと解放されたぞぉぉぉおおお!!


期末考査が終わった金曜日。今日で6月も終わりだ。


中学時代を含めても一番頑張ったであろう今回は、割と自信があるくらいには出来が良かった。


世の中には、「本当に頑張っている奴は自分で頑張っているなんて言わないし、思わない。だってそれが当たり前のことなんだから」的なことを言っている人達もいるが、それを当たり前にする前段階に、自分が頑張っていると認めることも重要だと思うのだ。


それにこれまでで一番というのは、何も感情的な話ではなく、実際にVR空間で試験勉強をするというのが初めてだった。


楽しいゲームの中でまで勉強って…と思っていたのだが、存外快適で捗るものなんだな。


いや、快適だったのは、疲れた頃合いを見計らって突撃してくる女教師と看護教諭と…オチの用務員のお陰でもあるか。


ディーネの女教師とルクシアの看護教諭は理解出来る。だが、ヒンメルは何故用務員コスプレという名のお洒落なツナギを選んだのか。


ツナギなんて着ている用務員さん見たことないけどな。ましてや、自分のイメージカラーに合わせてきたのか、明るい緑色を選んだようだが、用務員さんの作業衣は殆どグレー一色です!


え、偏見ですか?


そして幾つかあったらしいコスプレの中で用務員を選んだのは、本人曰くこういうことらしい。



「ねえねえ、この服汚してもいい服なんだよ、知ってた!?」


「あー、良かったな…」



お前の服手洗いしてるの俺なんだからな?と言ってやりたかったが、笑顔が眩し過ぎて言い出せなかった自分が辛い。


洗浄とか、浄化みたいな魔術ってないのかな…。


というか、こんなファンタジー世界に現代っぽい衣装持ち込んだの誰だ!?



「タケ!なんか食って帰ろうぜ!」


「あー、どうしようかな。今日は柚子も帰り早いから、家で待ってるかもしれないんだよ」


「じゃあ柚子ちゃんも呼べばいいじゃん」



そうするか。


とは言っても、帰りの道中で買い食いしようぜ的なノリで誘ってきたが、一番近いファストフード店は家と反対方向なので、せっかくならとバスに乗ってショッピングモールまで行くことになった。


柚子とは現地集合だ。


トモと若葉と三人で、一番後ろの席に陣取りながら雑談する。



「二人は帝国に行ったんだっけ?」


「おう。新しいダンジョンの情報なんて聞かされちゃ、行かないわけにはいかねぇだろ」


「私は友則と一緒ならどこでも良かったもの」



うへぇ。


なんだ、告白してからというもの、若葉が枷が外れたように積極的なのだが、学校でもイチャイチャしやがって、早く付き合えよ鬱陶しい。


まあ学校でのアピールは、他を牽制するような目的もあるんだろうけどな。トモって致命的な部分で付き合えてないが、モテるし友達も多い。


実際は若葉のイチャの押し付けなのだが、トモがタジタジになってるのも面白いので、暫くそのままでもいいと思う。


何より素晴らしいのは、若葉とトモのコミュニケーションに俺を挟まなくなったことで、高みの見物を決め込めるところだな!



「新しいダンジョンかぁ。もう潜ったのか?」


「んや、国からの許可が必要とかで、今は許可貰うためのクエストやってる」


「そこでも許可か」



ダンジョンって国からすれば大事な資源なんだろうし、国が管理しているのは当然と言えば当然だけどな。



「若葉は何かクエストとかやってんの?」


「セントルム王国にいた頃と殆ど変わってないわよ」


「いや、町に着いた初日から領主に歓待されてた奴が何言ってんだよ」


「…それもそうね。でも、待遇面ではどこかの誰かさんのお陰で、変わってないのは本当よ?」



たしかスプラの許可証も王家から貰ったやつだった筈だ。なにせ、相談されてディーネ達から聞いたとおりに教えたのは俺だからな。


だがまあ、セントラリスでもすぐに王城で王女様に迎え入れられていた若葉が言うんだから、帝国でも相応の待遇を受けているんだろうな。


まさか王家の許可証って、紹介状的なものまで含まれてたりするのだろうか。



「タケはあれだよな、妖精印のデュアルポーション」


「あれは素材を卸してるだけで、ここ二週間弱は殆ど何もしてないな」



厳密に言えば、勉強の合間の息抜きに細々としたことは済ませてある。


宰相閣下に謝罪と許可証を貰いに行ったり、セシリアさんとの商談だったり、調合スキルの実験だったり、源泉の設備追加だったり、ディーネ達にスキルのパワーレベリング手伝ってもらったり、調合実験で量産された毒ポーションで回復系スキルを鍛えたりと、思い返せば色々と手を付けてたかもしれない。


でも、息抜きの短時間なので、そう大したことは出来てないけどな。


ただセシリアさんとの商談のおかげで、定期的にそこそこの資金が確保できるようになったのは大きい。


デュアルポーションは、従来のポーションとは別アイテムであり、RTも当然別判定なので、重複して使用できるので、なかなかの需要があるらしい。


とはいえ、アイテムとしてのランクは低いので、回復量も相応に低いけどな。まあ、アイテムとしてのランクが低いので、レベルが低いプレイヤーでも作ることができるのは、メリットと言えばメリットだが。


だがそのお陰で、漸く誤魔化し誤魔化しながら手持ちの素材を切り崩してきた極貧生活ともサヨナラだ。


あとは、とあるパワーレベリングの為に人魔ダンジョンにDP稼ぎに行ったりもしたな。



「俺としては、トモはともかく、若葉までテスト期間にがっつりMLやってたことに驚きだけど」


「今着いていかないと、また追いつくのに時間掛かるもの。レンテ師匠が送迎してくれるなら、後追いも考えたけどね」


「俺は若葉みたいに勉強しなくても出来る優等生じゃないからな。そんな時間はありませんでした」


「あら、私が勉強してないみたいに言わないで頂戴。毎日八時間、オンライン家庭教師付けて勉強してたわよ」



八時間ってことは、VR空間に家庭教師呼びつけて勉強したのだろう。家庭教師も家に居ながら仕事出来るから、普通の家庭教師より楽なのかもしれない。


それに俺が目指す次の国は帝国じゃなくて、神聖国だ。


せっかくトモを捕らえたのだから、もうタコの吸盤のように二度と離さないでほしい。こっちにとばっちりが来ないためにも。


そんなたわいもない近況報告をしていると、ショッピングモールに着いたようだ。



「あ、お兄ちゃんこっちこっち!おーい!」


「恥ずかしいから大声で呼ぶなって…」



元気が良いのは素晴らしいことだが、元気が良過ぎるのは玉に瑕だな。



「ゴチになります!」


「奢られる気満々かよ」



合流した柚子と連れだってフードコートを目指す。


久々にマグドが食べたいと柚子が言うので、今日の昼飯はハンバーガーに決定した。


トモはステーキ、若葉はうどんと、それぞれ好きなものを頼めるのは、フードコートの利点だろう。



「昼飯によくそんな金出せるな…」


「最近MLばっかりで小遣い貯まる一方だからな。テスト終わりにパーっと美味しいもの食べたくなったんだよ」


「あ、わたしももっと高いのにすれば良かったかな?せっかくお兄ちゃんの奢りだったし」


「バカ言え。肉ならMLでたっぷり食わせてやるから、昼はバーガーで我慢してろ」


「オーク肉は勘弁!この前食べたドラゴンステーキは美味しかったなぁ…」



今にも涎を垂らしそうなだらしない顔をしている我が妹を見て想う。


兄から見ても整った顔をしているというのに、何故こんなにも残念なのだろうか。


俺の周囲には美男美女が多いが、もしかしたら天は二物を与えないというのは本当なのかもしれない。


つまりテューラは偽物だな!



「え、柚子ちゃんもうドラゴンなんて倒したのか!?」


「違うんですよ、お兄ちゃんが宮廷料理食べさせてくれて、そこでドラゴンのフルコースが出てきて…。それはもう、えも言われぬほどの美味でした!」


「宮廷料理って、国の選りすぐりの特産品を使って一級料理人が腕に縒りをかけた料理ってイメージがあったけど、そんな豪華料理が振る舞われたのか。今度俺も食べさせてもらおうかな」


「へぇ、私もテューラに頼もうかしら」



ドラゴン肉、凄く気になります!



「お、おい、是非俺にも…」


「国間転移ってクソ高いんだろ?そんな事のために戻ってくるのか?」


「くっ…」



滅茶苦茶葛藤してそうだが、選択肢なんてないだろ。


何の制限もなしに国同士の行き来ができるとは思ってなかったが、どうも国間転移は決められた転移装置からしか出来ないらしく、一度の片道転移で最低七桁ぼったくられるらしい。


空間魔術も各国がそれぞれ国全体に張り巡らせている結界のせいで、国内は自由だが、国外への転移を制限していた。


ちなみにセントルム王国の国間転移装置は、プリムスの神殿にあるらしい。


王都じゃないのは、多分国の中枢に設置するのは拙いからとかそんな理由だと思われる。



「柚子ちゃん達はフェアリアスだっけ?」


「そですね。アウラ経由でテューラ様の護衛クエスト受けてるから、今はフェアリアス目指して旅の途中ですね」


「護衛クエストってログインしてない時間帯ってどうなるんだ?」


「あー、そういう意味では護衛クエストじゃなくて、同行クエストかも。他の護衛クエストと違って、馬車の中でログアウトしてる最中も進んでるんだよね」



楽そうなクエストだが、雇い主がテューラというのが、怪しさを倍増させてるよな。


此度の生贄はアウラみたいだが、健闘を祈ろう。なむなむ、安らかにお眠りください。



昼飯を済ませた俺達は、ゲーセンで軽く遊んだり、書店に寄ったりして過ごして帰宅。


貯金が貯まっているなんて嘯いていた馬鹿は、若葉にアクセサリーを買わされていたが、自業自得だと言いたい。まあ、着実に進展しているというか、外堀埋められているみたいで良かったんじゃないかな。


何故か流れで三日月のヘアアクセを柚子に買わされたのは納得していないけどな!


試験前と試験中はサクッと流してしまいましたが、気が向いたら閑話で何話か書こうかなと思ってます。

それ以外でも、ここの話が見たい!とか感想もらえれば、閑話か幕間的な感じで書くかもしれませんので、ドシドシ感想お待ちしておりますw


と、考えながら、章分けもしないとなぁと思ったり思わなかったり。

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