133/火
何か前書きに書くことがあった気がするのに思い出せない…
やっちまった…。
雨の中走って帰った阿呆は何処のどいつですかね?
38度を越える熱なんて赤ん坊の頃以来かもしれない。貴重な土日を無為にして、月曜日は学校まで休んでしまう程に長引いたのも、久しぶりだな。
昨今のVRゲーム機器には、法律で定められている体調管理機能があり、少しでも体に異変があればログインできないし、プレイ中であっても強制ログアウトの措置まで取られることも珍しくない。
そして現在、漸く復帰してログインした俺は、土日月と寝込んでしまったことで湧いた二つの問題に直面していた。
一つ目は、宰相閣下に無理矢理ねじ込んでもらった面会予約を、黙ってすっぽかしてしまったこと。
これについては、さっきマーリン爺経由で連絡を取って、また後日に直接謝罪を兼ねて、越境許可の件は改めて相談することになった。
ただ二つ目が問題が…。
「なーんーでー!早く行きたいんだよぉ!」
「だからごめんって。俺の認識が甘かったのは謝るからさ」
二つ目は、来週に迫った期末考査によって、旅計画を延期せざるを得なくなったことだ。
これには理由が二つあって、まず最大の要因は俺の認識が甘かったこと。
正直、別の国と言っても休日を使えば一日、二日で辿り着けるだろうと楽観的に考えていたのだが、よくよく考えると、セントルム王国以外の情報が聞こえ始めたのは、もう一ヶ月以上も前のことだ。
それなのに、先週の金曜日に漸くオレメア王国が開放された。
許可が必要ってことだし、距離だけの単純な話ではないのだろうが、目指すのが町ではなく国だということをもう少し考えるべきだった。
距離的に一番近いと言われているオレメア王国でさえ、王都から町を二つ挟んだ向こう側にあり、どれだけ熟達した御者に馬車を任せても、王都からは国境まで一週間以上は掛かるらしい。
最近は精霊界やダンジョンに篭っていた時間が長過ぎて、無意識にタイムスケジュールを4倍速基準で考えてしまっていたが、人間界は等速なんだよな…。
「勉強しないとまずいんだよ。今度埋め合わせはするから、頼むよ」
「勉強?」
「一応学生だからな」
こっちの世界じゃそうは見えないかもしれないが、現実に戻れば平凡な高校生だ。
中間考査は科目数も若干少なくて、範囲もそれ程広くなかったが、学期末の集大成である期末考査前に遊び呆けるほど勉学に自信があるわけではない、というのが二つ目の理由である。
「あ、じゃあわたしが教えてあげるよ!どこだったかな…前にみんなで遊んだ女教師セットが、どこかに…」
「形から入るのやめようか」
ただ、便利な世の中になったもので、このご時世、教材も課題もデータとしてタブレットに送られてくることが殆どで、VR機器と連動させればゲームの中でも勉強出来るのだ。
ゲームタイトル選択前のロビーなんかで集まって、離れた場所にいながら一緒に勉強出来る便利機能で、ゲーマーじゃなくても勉強会の為にVR機器を購入する学生もいると聞く。
VRのロビーにも快適に過ごす為の家具なり、アイテムが用意されているほどで、ゲーマーよりそういった学生の方が無駄に居心地が良いロビーになっていることが多かったりするそうだ。
「あー、分かった分かったから。煮詰まったら教えてもらいに来るから、お願いだから勉強の邪魔だけはやめてくれよ」
「「「はーい」」」
不安だ、何が不安ってヒンメルまで返事してるのが一番不安だ。
共有部屋を出て、自室に戻る。
VR機器に読み込ませておけば、ロビーでなくとも、MLの中だって勉強は可能だ。つまり、他のプレイヤーより、現実でするより4倍の時間勉強できるということ!
まあ、ゲームタイトルの中には、より快適な勉強空間を実現しました!みたいな宣伝文句のゲームもあって、そういうのは8倍速の時間設定が出来たりするから、マジの勉強漬けを考えるなら、そういうゲームの方がいいんだろうけどな。
高倍速になると制限も厳しくなるけど、学生が平日の帰宅後に頑張るくらいの時間なら、適度な休憩さえ守れば、制限はどうということはない。
よし、まずは昨日休んだ分をノートを書き写すところからだ。
グレンからコピーさせてもらったコレをそのままコピペするより、一度自分で纏めた方が頭に入る。
一通り写し終われば、問題集に取り掛かる。
「んー、あー、作者の心情なんて過去に戻って聞いてこいよ…」
どの科目のどんな問題より、国語のお気持ち問題が一番理不尽だと思っているのは俺だけだろうか?
だって、教科書や試験で取り上げられるような作品の著名な作家は大体故人だ。生前に、「ここを書き上げた時にはこんな事を想っていたなぁ…」なんて実際に遺している事実を聞いたことがない。
だから百歩譲って、試験用に現代の芥川賞作家に新しく書いてもらった作品なら文句の付けようもないけどな!
こんなの、作者の心情じゃなくて、問題の作成者が思う作者の心情を答えよ、である。
出題者の胸先三寸次第で答えが変わる問題なんてクソ喰らえだ。
「うんうん、数学はちゃんと答えが出るから安心して解けるな」
国語と違って数学は良い。
なんてったって、出題者が何を考えてようと答えは変わらないからな!
数学にも答えが導き出せなかったり、複数の答えがあったりする問題は多い。
だが、導き出せないものは導き出せないと、答えが複数あればコレとコレとコレと、天才によって定理が覆されない限り、答えが変わることはないのだ。
まあ時として『6÷2(1+2)』みたいな二極化する問題もあるわけだが、それはそれで面白いだろ?
結局のところ、好き嫌いでしかないんだろうけどな。
あ、ちなみにこの算数問題の俺の解答は『9』です。
数学的に考えると『1』、算数的に考えると『9』になるそうですよ?
「古墳ねぇ…。こっちだと魔剣とか出土してもおかしくないよな」
そう考えると夢があるかもしれないな。
どう考えても墓荒らしか盗掘でしかないんだが、遺跡を発見したら探索って許されているんだろうか?まず近くの国に報告義務があったりして。
なんか随分昔のように感じるが、前にマーリン爺に言われたっけ。
「魔導士にとって──、過去との対話が何よりの近道じゃと覚えておくといいじゃろう」
もしかして、過去に高度魔法文明が滅んでたりしてな。
「なんで数学はよくて、物理は受けつけないのか自分でも不思議だな。現実でも魔法が使えれば、半世紀は物理学ばなくて済みそうなのに」
きっと魔法なら物理学のアンチテーゼになってくれるはず!
そうすれば、今までの常識を崩壊させて、天才によって理論が組み上がるまで、一般人高校生は物理の勉強から解き放たれるかも…!!
もし現実世界で魔法が使えたら、真っ先に重力魔法で林檎を宇宙まで飛ばそう、そうしよう。
アインシュタインよ、重力は時として宇宙へ旅立つものなのだよ。
重力魔法はノーム達があるって言ってたから、その為にも早く見つけないと!
「混ぜたり分離したり…、でも調合スキルで役立ちそう」
ポーション一つ作るにしても、混ぜ合わせる前に不純物を取り除いたり、三つ以上の素材が必要なら反応させる順番が大事だったり、温めながら混ぜるのか、冷やしながら混ぜるのか。
今度MPポーション作成に挑戦する時にでも、色々と試してみようかな。
「ワタシ、ニホンジンデース。エイゴ、ワッカリマセーン」
ああ、駄目だ。
【解読】スキルと【念話】スキルを取得したのに、全く英文の内容が頭に入ってこない。
解読スキルなんてSP3消費したというのに、解せぬ…。
念話スキルなんて、鳥語まで理解できる超越スキルなんだぞ!?なんで英語には非対応なんだよ!
あれか、念話を繋げる相手として教科書では不十分だということか。これが魔導書であったなら、話すことも出来たかもしれないのに!
ほら、知能武器とかありそうじゃん?
「あー、休憩!ここで勉強してると、思考がファンタジーに囚われて危ない…」
やっぱり現実の自室で勉強するべきかな。
スキルまで取得し始めるのは流石に末期症状だ。
何か後書きに書くことがあったのに思い出せない…からテンプレ投下ですww
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