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125/月

ナカーマ


何故かウェルグ殿下と対峙している現在。


愚妹の従者が〜、と理由を言っていたが、取り敢えず分かったのは、普段散々テューラに手玉に取られているということだ。


大の魔術好きなのは伝わってきたし、あの珍妙な戦闘スタイルのテューラに思うところでもあるのだろう。


何を勘違いしてるのか知らないが、殿下の中で従者(玩具)になっている俺を倒すことで、少しでも日々の鬱憤を晴らそうということらしい。


他にもダンジョンイベントで、俺がマルシェに勝ったことを、彼等兄妹の代理戦争的な感じで捉えてるようで、そっちで負けたことも今回の引き金になっているっぽい。


つまり、完全にとばっちりなんだが!?


でもまあ、仕方ない。というか、千載一遇のチャンス!


先に一撃を当てた方が勝ち、殺すのは無しで、他はなんでも有りというこのルールなら、俺にも勝ち目はある!


場所は最近増設したらしい地下の訓練場、審判はマルシェさんだ。



「双方、構え!一撃を先に与えた方が勝ち、殺すのは無し、準備は宜しくて?」


「大丈夫です」


「いつでも来い!」


「では、始め!」



初動。対人戦慣れしてない俺は、勿論精霊召喚をしようと口を動かす前に、王子が動く。



「『モーリュの魔封じ起動』!」



発動句と共に、空いた左手に嵌められた指輪を掲げる。


なんだこの感覚?


まるで魔力操作スキルを取得する前に戻ったような…。



「態々、同じ魔術士相手に遠距離で撃ち合う必要はないというのは、散々あの愚妹に骨の髄まで叩き込まれたことだからな。悪いがこれはあの愚妹に土をつける為の予行演習だ!」


「【精霊化】!え、発動しない!?」



恐らく魔術・魔法、魔力を使う行動を封じられたので、だったら警戒するのは物理かと精霊化を発動しようとすれば、発動する気配がない。



「ほう、そういう副産物もあるのか。いいことを知れた」


「【魔人化】!こっちは大丈夫か!」



有効過ぎるほどに有効だ。


たとえ魔人化が発動できたところで、魔術を封じられた俺の攻撃手段など、無いに等しい。


とはいえ、ウェルグ殿下も典型的な魔術型な筈。


ローブ姿に長杖という格好からしてもそうだし、でなければ、魔術のことを滔々と語った後にあれ程テューラに対抗意識を燃やしたりしないだろう。


不可解なのは、魔術士の割に鍛え抜かれた身体だが、もしかして格好も、魔術好きな一面も、全てカモフラージュなのか!?


言われてみれば魔術士の杖よりも、装飾が少ない棒術にも使えそうな長杖を両手で構えて、突っ込んでくる。



「無粋な闖入者は参戦させてくれるなよ!」


「くっ、速い!?」



とはいえ、流石に魔術士型のステータスっぽいな。カモフラージュではなかったらしい。


第二王子の振るう杖のひと突きは、避けられない程ではない!



「どうしたどうした!魔術を封じられればその程度か!」


「好き、勝手な、ことを!」



別に殿下の言葉に素直に従う必要はないので、ディーネ達を召喚してしまうのもありだが、召喚は魔術系スキル扱いだった筈。


しかし、守護獣の召喚はスキル由来では無い為行ける気がするので、なんだったら聖霊王が駄目なら神鳥にご登場頂いてもいいのだが、それは最後の手段に取っておこう。


なので、俺は予め腰に帯びておいた2本のハルパーを両手に構える。魔術が使えない状態では、杖という名の枝なんてあってもどうしようもないので投げ捨てておく。


魔術士相手なので、一応物理武器をと思って帯剣していたのだ。もっとマシな近接武器があれば、とも思ったのだが、初心者の剣よりは取り回しやすいこっちかな、と。


それにこの剣に求める役割は、チュートリアルスライム戦と変わらない!



「そんな不恰好な短剣で、構えもなっていない攻撃が通るものか!」


「そう、ですか!」


ハルパーを知らないってことは、マルシェさん達がダンジョンボス討伐で手に入れたのは他の四つの何かだったのだろう。


確かに有効打を与えるという意味では、俺にその技術はないだろう。が、この武器に限ってそんな技術は必要ない。


魔術士に当てるだけなら、レイン級のPS相手でもない限り不可能ではない!



「ここだ、そらよ!」


「投擲だと!?魔力も宿ってないそのような!」


「ほら、もう一本!!」


「ぐぅ!?」


「「「ウェルグ様!?」」」



取り巻き騎士が悲鳴をあげるが安心しろ。あれのダメージはどれだけ急所に直撃させても固定で1にしかならない。


だが逆に言えば、どんな擦り傷でも、たとえ撫でただけでも1ダメージを確実に与えるということだ!



「では、俺の勝ちってことでいいですね?」



勝利条件は、先にダメージを与えること。



「勝者、レンテ!」



マルシェさんの宣言に鳴り響く拍手と、駆け寄る騎士達。



「クソクソクソッ!俺は妹に負けて、その従者にまで負けて…!どちらもレベルは下だと言うのに、何故だ!?」


「ウェルグ殿下、あれに真正面から勝とうとするからダメなんです」



(こうべ)を垂れて地面にへたり込む殿下に手を差し伸べながら言葉を掛ける。



「なに!?貴様は一生俺に負け犬で居ろと、そう言いたいのか!!あの愚妹は、テューラは、毎日毎日毎日毎日!朝早く連れ出しては訓練と称し、この俺をボロ雑巾のようにしたかと思えば、思い出したように魔道具を作れと無理難題を押し付けてきやがる!見ろこの身体を!俺は魔術研究に没頭できればそれでいいというのに、何故肉体改造などさせられねばならない…!」



う、うん…。色々と鬱憤が溜まってるようだ。



「そうではなく、あれは普通の魔術士が正面から敵う相手ではありません。なんてったって、リンダ師匠の弟子なんですよ?」


「それは、そうだが…」



いや、実際はもっとレベルを上げてステータスで殴れば勝てそうではあるが、俺達はそういう話をしているのではない。


あの才能に勝つ方法について話しているのだ。



「実はつい先日、テューラ殿下の弱点を発見したんです」


「なんだと!?あの愚妹にそんなものがあるというのか!?」


「ええ、殿下もギリギリのところで人間だったのでしょう」



この食い付き様、きっとテューラに一泡吹かせるための友になってくれるに違いない!



「殿下の弱点は、接触による魔法破壊です」


「接触?遠隔では駄目なのか?」


「殿下の弱点に思い至ったのは、バイオレットオーガ戦でした。なんと、あの戦闘のことしか頭にないテューラ殿下がですよ?バイオレットオーガが拳に纏う魔法破壊スキルに為す術なく、後衛に甘んじたのです!信じられますか!?」


「あの愚妹が!?」


「テューラ殿下の戦闘スタイルは、掌に発動させた魔術で、超近距離でパリィ。だから、そのパリィする魔術を無効化させてやれば、純粋な力比べになります。近接職より筋力が劣るテューラに勝てる道理はないんですよ!」


「なるほど!いやしかし、悔しいが俺達ではあの愚妹と正面切って戦うのは無理だろう」


「そうなんですよ…」



さっき俺との勝負で使っていた魔術系スキルを封じる魔道具も間違いなく有効だろうが、あれは俺たちが使ってもテューラ相手には万に一つも勝ち目がない。


そういう意味では、魔法破壊スキルも同じように思えるが、あれは接触の瞬間に発動できるので、俺達でも何かしら悪用できそうだしな。


とはいえ、だからこそ!



「だから、これから一緒に考えましょう!ウェルグ殿下、貴方とならテューラ打倒を成し遂げられると、そう信じています!」


「…こんなに真剣に俺の悩みに答えてくれたのはお前が初めてだ、レンテ。友よ、いつの日か必ず、あの愚妹に土の味を!」



いや、俺は一泡吹かせられればと思っているだけで、そこまで考えてないけど、まあ意気軒昂なところに水を差す必要はないか。



「ええ、ギャフンと言わせてやりましょう!」


「ふふっ、楽しそうで何よりです。ギャフン、これで宜しいですか?」



今一番聴こえてはいけない声が聴こえた気がするんだが…。


声がした方を恐々と振り返ると、案の定天使の笑みを絶やさない悪魔がそこにいた。



「…お、おう、奇遇だな、こんなところで」


「…テューラか、城の外で顔を合わせるとは珍しい」


「いえいえ、お兄様がレンテと決闘していると爺やから伺いまして、是非に私も混ぜて頂こうかと。先ほどから聞いていれば、アレやコレと、可愛い妹と仲間を物のように。果てにはまるで化け物のような言い草、流石の私も怒っていますよ」



くそっ、あのジジイ余計なことを!


直接聞かれているのだから言い訳出来るはずもなく、第二ラウンド開始。


ええ、それはもうボコボコにされましたとも!土の味を覚えさせられましたとも!


アホか!魔術があっても勝てるヴィジョンが浮かばないというのに、魔術封じられて勝てるわけあるか!


ウェルグ殿下、それ途中で解除できる機能付けないと危なくて使えないって!


どうやら、魔術を封じれば近接職は有利になるのかもしれないが、魔術士二人程度では荷が重いようです。


だが、唯一無二の戦友は確保できました!

第7回キネティックノベル大賞の一次選考通過してた?みたいです!多分!

応募方法がタグ付けるだけだから完全に忘れてました…


同じペンネームの作者様が居ないことを祈りますww

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― 新着の感想 ―
[一言] 何度も床ペロならぬ、土ペロさせられたかwww
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