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124/月

それはオメェだけの特権じゃねぇ!


少し聞きたいことがあって情報通のセシリアさんに話を聞けないかな、と先程フレンドコールしたんだが、問題発生。


どうやら精霊界から人間界のような、別の世界にいるフレンド相手にはフレンドコール出来ないようだ。グレーアウトしており、そもそも選べなかった。


いや、でも一部のフレンドには通話出来るっぽいから、もしかしたら同じ加速度合いの世界なら出来るのかもしれない。


きっと通話が繋がる彼らはダンジョンにでも挑戦しているのだろう。


一応だが、ログインログアウトは別で表示されているので、ログアウトしているわけでは無さそうだった。


なので、空間妖精のワープゲートでプリムス大森林まで転移して、再度フレンドコールしたところ今度は繋がった。


ちなみに、フレンドの中からセシリアさんを選んだのは、そこそこ関わりがあって、一番情報通なイメージがあったからだ。


ここ最近増えた攻略組のクランマスターのフレンドは、色々と情報に長けているのかもしれないが、関わりは薄いからな。



「(あら、フレンドコール掛けられないからダンジョンに篭ってるのかと思ってたわ)」


「こんばんは。せ…ちょっとDP足りなくて、あはは」



そう言えば、今の今まで気にしてなかったけど、正規手段以外で精霊界に行ったことは他のプレイヤーに話してしまったが、その後行き来出来ることは当然話していない。


ユズ辺りには話した気もするが、それ以外には言ってない筈だ。


だってこの話はもろに、ワープゲートに関わるからな。


え、誰かに話してないよな?



「(こんばんは。掛けてきたってことは、オーケーってことでいいのかしら?)」


「何のことですか?」


「(メールの件じゃないの?)」


「え…?」



メール…?えっと、これか。


内容は…。



「(そういえば、メールの通知はオフにしてるって言ってたわね)」


「俺セシリアさんにそんなこと話しましたっけ」


「(ユズちゃんから聞いたのよ。それで、祝賀会の件じゃないなら、どうしたのかしら?)」



おい、ユズ!


別にこんな瑣末な情報を洩らすことくらいで目くじら立てる程、懐が狭いわけではないが、時々セシリアさんに俺の情報が洩れてるのは何故なんですかね…?


まあ、俺に連絡つかないことでユズに迷惑かけてるのかもしれないし強くは言えないが、これ俺が悪いのだろうか。いや、悪いのかもしれないが…。


ちょっと納得出来ません!



「少し聞きたいことがありまして」


「(レン君が聞きたいことって言うと、もしかしてランキングの話かしら)」


「おお、当たりです。もしかして、同じような確認が多かったりします?」


「(そこそこかしらね。私よりもマルシェの方が大変だと思うわ)」


「まあ本人に訊ねるのが手っ取り早いですもんね」



マルシェさんは、【高潔なる騎士団】のクランマスターで、闘技大会の準優勝者。そして直近の第三回公式イベントでは、MVPに次ぐ第二位の成績を納めたプレイヤーだった。



「そうね。気になるなら、本人に訊ねるといいわ」


「本人にですか?」



仲介をしてくれるということだろうか。



「(今、雑貨屋えびすのクランホームでダンジョンイベントの打ち上げというか、祝賀会をやってるのよ。メールも祝賀会のお誘いね)」


「そこにマルシェさんも参加してるってことですか」


「(話を聞いた感じ、マルシェの方にもあなたに用事があるみたいだし、丁度いいじゃない)」



俺に用事って何だろう?


まさかレイン相手のリベンジマッチの前哨戦とかじゃないだろうな…。



「そう、ですね。じゃあ、今からお邪魔してもいいですか?」


「(ええ、勿論よ。待ってるわね)」


「はい、それでは」


「(面白いものが見れそうで楽しみだわ)」



そんな捨て台詞を残して、フレンドコールが切れた。


みんなして、不穏な引きを作らなくてもいいんですよ?






午後10時、王都セントラリスにある雑貨屋えびすのクランホーム。


一階にある広いホールで行われている祝賀会は、立食形式のパーティのようで、もしプレイヤーがTPOを弁えていたら、華やかなパーティに見えたかもしれない。


壁際に佇んでる護衛の騎士ならともかく、兜だけ脱いで鎧姿で飲み食いしてる奴らは、ゲーム内とはいえ少しくらい場に合わせることを覚えた方がいいのではなかろうか。


いや、ゲームなのだから、変に囚われず楽しければそれでいいのかもしれないが。



「来たわね、巷で噂のMVP様の御登場よ」


「やめてくださいよ…」



雑貨屋えびすのクランメンバーに案内された祝賀会場で、セシリアさんのそんな冗談に迎え入れられる。



「お久しぶりですわね。前回に引き続き、あなた方師弟には、またもや苦汁を嘗めさせられてしまいましたわ」


「お久しぶりです、マルシェさん」



実際には一週間そこそこ振りだが、土日は四倍速のダンジョンに篭っていたこともあり、半月振りみたいなところがあるし、ダンジョンはダンジョンでなかなかに濃ゆい時間だったから、緊急クエストが久しぶりな感覚だ。



「入り口で立ち話もなんだし、向こうに移動しましょうか」



促されるままに移動する。



「レンテさんも私に聞きたいことがあるとか」


「はい。他の二人は知らない人だったので、マルシェさんに聞けたらと」


「条件次第では知りたいこと、私が知りうる全てをお話ししても構いませんわ」


「条件、ですか…」



何やらされるんだ…。



「そんなに理不尽なお願いではありませんわ。ただ、ある現地人に会ってほしいだけですわ」


「…もしかして、あの人達ですか?」



プレイヤーの祝賀会という場には似つかわしくない集団がひとつ。


蛇と剣のエンブレムが目立つ騎士団の小隊だ。


壁際で大人しくしているのだが、この会場に入った瞬間から気になっていた。しかし、騎士団のようにある統一装備を身に付けたプレイヤー達以外は近づこうともしないので、俺も触れないようにしていたのだ。


そして、その集団から一人こちらに向かって歩いてくる。


どうやら、俺達が彼等に視線を向けていることで、話がついたとでも思ったようだ。


肩ほどまで伸ばした金の髪に、吊り目がちな碧眼、均整のとれた目鼻立ちのイケメンだ。


顔立ちが少しどこかの誰かに似ているような気がして、嫌な予感しかしない。


高級そうなローブに身を包んでおり、長杖を片手に持つ姿は、身嗜みだけなら魔術士のように思えるが、ローブの上からでも分かるくらいにはガッシリと鍛えられた肉体をしている。



「お前が愚妹の新しい玩具か。マルシェから聞いたとは思うが、俺はウェルグ・ニール・セントルム、この国の第二王子だ」


「王子、まだ了承は得ておりませんわ。それより、了承が得られたらこちらからお呼びするので、大人しく待っていてくださると約束しましたわよね?それなのに、勝手に行動されては困りますわ」


「お、俺は王子だぞ!俺に向かってそのような口の聞き方」


「や・く・そ・く!しましたわよね?」


「お、おう。俺が悪かった、謝罪する…」


「では、了承が取れ次第お呼びするので、向こうで待っていて頂けますわね?」


「仕方ない、しくじるなよ」


「約束は守りますわ」


「ふんっ」



どこか俺様系王子の後ろ姿に哀愁が漂ってると感じるのは俺だけだろうか?



「見事に王子様を手玉に取ってるわね。玉の輿かしら?」


「あれで存外素直な性格してますのよ。少し捻くれてますが、プレイヤーに比べたら可愛いものですわ」


「少し…」



女は強しってことでいいですか?



「レンテさんが私に訊ねたいことが、どうやってダンジョンを攻略したのかということならば、その答えはきっと今貴方が思っている通りに、()が答えですわ」


「第二王子とパーティを組んだってことですか?」


「ええ。そして、それは私とレンテさん以外の二人も同じ筈ですわ。王子や王女でないにしろ、強力な現地人とパーティを組んだのでしょう」


「MVPランキングの上位者の中に、攻略組に混じって無名プレイヤーが散見されるのは、恐らく強さに差はあれど現地人とパーティを組んでいるプレイヤーがいたんでしょうね」



ダンジョンをクリア出来るほどの強さを持つNPCとパーティを組めたのが4組なだけであって、そこそこの強さのNPCとパーティを組んだプレイヤーは割といたのかもしれない。



「なるほど、それが最大到達階層ランキングとMVPのカラクリですか」


「それでも圧倒的大差を付けてMVPを掻っ攫っていったレンテさんの攻略法も気になりますわね」


「俺はあれですよ。シークレットにあった通り、ダンジョンボスをグルグルしたら、あんなことになってしまっただけで…」


「あれを何度も討伐など、馬鹿げたことを当たり前のように言わないで欲しいものですわね」



まあ、あのダンジョンを攻略出来たということは、あの王子様はテューラよりも強いんだろうが、周回出来るほど余力を残しての勝利ではなかったのだろう。


いや、これは飽くまでも俺の予想だが、テューラはきっと俺とセレスに気を遣ったんだと思っている。


なんというか、あの状況下であってもテューラが負ける想像が付かなかったと言えばいいだろうか。


それに、あそこにいるマルシェの尻に敷かれている王子様が、テューラに勝てるヴィジョンも思い浮かばないしな。


きっとあのお転婆王女様は、一人なら最後までクリアしていたと確信してしまう。



「もうひとつ気になることがあって、累積ボス討伐回数が五百とかなってたのって、どうやったのか分かりますか?」


「それは簡単ね。レン君みたいにダンジョンボス周回なんて非常識なことじゃなく、10階層のホブゴブリンを永遠と周回してたプレイヤー達が居たのよ」


「累積踏破階数も同じく、浅い階層で数を稼いでいたみたいですわ」


「でも、どちらも失敗だったみたいよ。今回のイベントはダンジョンを深く潜るほどポイントが稼げる仕様だったから、ランキングに名前は載っても、DPは極貧生活だって嘆いてたみたいね」



へぇ、ランキングは特定のプレイヤーが総取り出来ないような仕様になっていたらしい。


宝箱ランキングとかは、ボス宝箱は勘定されてないみたいだから、中堅プレイヤーやエンジョイ勢にもチャンスがあったのかも。


まあ、俺が一個で3位タイだった金箱ランキング堂々の1位だったフォルトゥナは、ボス宝箱以外で3個見つけたってことだから、ステータスのLUCに加えて、リアルラックまで高そうだよな。



「でも雑貨屋えびすのメンバーも何人かランキング入ってましたよね」


「生産アイテムのランキングね。あれは、生産したアイテムを使うのが他のプレイヤーでも良かったから、とにかく数を作って使ってもらえる、うちみたいな知名度があるクランは有利だったのよ」


「レンテさんの弟子も、師匠を抜いて堂々の1位を飾ってらしたじゃないですか」


「さすが闘技大会優勝者ですよね」


「あら、喧嘩なら買いますわよ」


「まさか、喧嘩なんて」



是非遠慮させてもらいます!



「それで、俺の方は聞きたいこと教えてもらったので、マルシェさんの用事ってのはやっぱり?」


「レンテさんとウェルグ王子の顔繋ぎですわ。ダンジョンイベントで力を借りる為の条件がそれでしたの。いくらメールしても返事が無いので焦りましたわ」


「まさか今日この場に連れてくるとは思わなかったわよ」


「イベント中のパーティメンバーを連れてきていいかは事前に確認しましたもの」



そりゃまた強引な…。


まあ、セシリアさんも怒っているというわけではなく、逆に面白そうに口許を歪めているが。



「その顔繋ぎっていうのは、俺は何をすれば?」


「さあ?私がお願いされたのは、レンテさんを紹介することだけで、その後のことは王子本人がお話しなさるのではないでしょうか」


「えぇ…」



なんと投げやりな。



「ですが、王子があまりに無理難題を言い出すようなら、私が止めますわ。意趣返しにしても、迷惑をかけ過ぎるのは良くありませんものね」



いや、意趣返しは俺じゃなくてレインに直接して欲しいんだけど…。


総合評価10,000有難うございます!


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