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118/日

パトラッシュ!



「おいおい、これは…」



流石にこの光景を前にすると、絶句しかなかった。



「どうやら、ダンジョンも最深部が近いようですね」


「キングダムたぁ、ちっとは歯応えありそうじゃねぇか」


「相変わらずゴブリンは品性の欠片もありませんわね」



見渡す限りのゴブ、ゴブ、ゴブ。右を見ても左を見てもゴブリンの大群勢だ。


こりゃ、コボルトのモンスタールームより酷いな…。 



「そのキングダムってのは?」


「ダンジョンに出てくるモンスターで、集落を形成するようなタイプは、最深部近くの階層に巨大な巣を作っている場合が多いのですよ。一説では、ダンジョンは繁殖でモンスターを増やすことでコストを抑えている、なんて言われていますが真偽は不明です」


「確実なのは、キングダムを支配しているのは王級種で、この人魔ダンジョンのモンスターは、その殆どが集落を形成するモンスターばかりだということですわ」


「簡単に言えば、ここから先はボスラッシュだな!」



差し詰めゴブリンキングダムと言うところか。


ここまで7時間、ゴブリンキングダムは56階層を巨大な一部屋にぶち抜いて存在しており、犇めき合うゴブリン共は正直言って気持ち悪い。


ただ、数だけは無数に蔓延っているのだが、そのレベルに関してはバラバラで、上は確認出来ないが、下は俺のスキルレベルでも確認できる一桁台もそこそこの数がいるようだった。


しかし、寄せ集めと侮ることなかれ。


明らかにヤバそうなのが、チラホラと確認できる。


ホブゴブリンはいないっぽいが、ただのゴブリンと職持ちがその殆どを占めているようだった。



「あの玉座で踏ん反り返っている愚物が、ここのボス〔ゴブリンキング〕ですわね」


「テューラかテネブがいないとレベルは判んねぇけど、こんな雑魚に手間取ってる時間はねぇ!」


「サラ、待ちなさい!」


「さっさとボスだけ倒して下行くのが手っ取り早いだろ!」


「はぁ…。仕方ありません、ルクシア、レンテの安全は私に任せて、ゴブリンキング周辺の掃除をお願いします」


「ゴブリンなど近づきたくもないですけど、仕方ありませんわね!」



遠くで偉そうに玉座に腰掛けるキング目掛けて、一直線に一人突っ込んで行ったサラと、それを追うルクシア。


ゴブリンキングは、目算オーガに迫る巨体で、オーガを引き締まった筋肉と表現するならば、ゴブリンキングは分厚い筋骨といったところだろう。


しかし、なんというかゴブリンに対するルクシアの侮蔑が凄いんだが。


確かに容貌は醜悪で、鳴き声も聴くに耐えないし、身嗜みだって劣悪だ。


だが、ルクシアのゴブリンを見る表情は、思い出すのも嫌と言うような、唾でも吐きかけそうに顔を歪ませていた。



「なあ、ルクシアってゴブリンと何かあったのか?」


「昔、ルクシアが大切にしていたアイテムを自らの不注意でゴブリンに壊されてしまったことがあったんですよ。あの時は収拾が付かず酷いものでした」


「ああ、何となく理解した」



深くは聞くまい。


きっとゴブリンは壮絶な目にあったのだろうし、周辺環境は目も覆いたくなるような大惨事だったのだろう。


だって、ノームはゴブリンキング周辺の掃討を頼んだはずなのに、今現在目の前で、場所関係なく根絶やしにする勢いでジェノサイドが始まってるからな。


サラはゴブリンキングしか見えてないし、立ち塞がる愚か者は全て焼却、ルクシアは荒れ狂う光となって殺戮の修羅と化してしまっている。


ゴブリンさん御愁傷様です。合掌。



《【人魔ダンジョン】56階層ボス〔ゴブリンキング〕が レンテ 以下パーティにより初討伐されました》


うむ。数千規模のゴブリンを殲滅するのに要した時間はたったの30分という恐るべき事実。


精霊は本来、魔術や魔法が得意な種属なので、殲滅戦と相性が良かったとはいえ、やはりこの結果を齎した悪夢の立役者はルクシア君に他ならないでしょうな。いやはや、味方で良かった…。



「もう時間も大してありませんので、次の階層ではさっさと下を目指しますよ。いいですか、ルクシア」


「少しムシャクシャしてやってしまっただけですわ」


ルクシアの肩を持つ訳ではないぞ。でも、殲滅しようとしなければ半分くらいの時間は削減出来てた気もするが、それでも30分は早過ぎるくらいだと思うんだ。


ともあれ、普段のツンツンなルクシアに戻ったみたいなので一安心だな。


パパッと銀箱と玉座を回収して、玉座の下にあった階段から57階層へ。


早速、配信で教えてもらったAP宝玉が人数分入っていた。


これを自分の分は売り払って金策に回すか、使うかは後で決めればいいか。


玉座は取り敢えず回収できたからしてみた。どうやら、エレクトラムとかいう金と銀の自然合金製らしい。


まあ、これもコレクションだな!



そして、階段を降りた先に広がっていたのは、小鬼が犬顔に変わっただけの、その他は変わらない光景。


今度はホブゴブリンの王国かと思っていたのだが、当てが外れたようだ。


しかし、ホブゴブリンの後は当然コボルトだろうとは思っていたので、あながち完全な想定外とも言えないのだが。


うむ、リメイク版の再放送です。



《【人魔ダンジョン】57階層ボス〔コボルトキング〕が レンテ 以下パーティにより初討伐されました》



階層の雑魚モンスター全てを殲滅しないと宝箱は出現しないらしい。


なので、ボスを倒した後、またもやキングが踏ん反り返って座していた玉座だけを強奪して階段を駆け降りている現在。


どうやら、雑魚モンスターは階段までは追ってこないようで、一応階段も擬似的な安全地帯と言えるのかもしれないな。


今回は雑魚を殲滅することなく、ボスだけ倒して駆け抜けたわけだが、よく考えると、今までのボス部屋みたくレストルームとステアーズルームが別になっていて、ボス部屋だけ扉で隔離されているような構造じゃなくて良かったよな。


であれば、雑魚を全て倒し切るまでボス部屋から出られなかっただろうしな。


加えて、その場合ゴブリンと違って、コボルトには仲間を呼ぶコマンドを発動してくるシャーマンがいるので、永遠に終わりの見えない戦いを強いられる説もあり得るわけだ。


実際に頭蓋骨を装備した悪趣味な犬面をチラホラと見かけたので、殲滅力が足りなければ、無限に湧いて出る雑魚に押し潰されてゲームオーバーなのだろう。


因みに、玉座は総銀製で、宝石が散りばめられた豪奢なやつ。


ノーム曰く、背凭れの上に配置されている一際目を引く真紅の宝玉があるのだが、[カーバンクルの秘宝]というアイテムらしく、あれひとつで王都の一等地に屋敷を買える(維持費別)くらいの大金になるらしい。


もう精霊宮殿のどの部屋のどの配置かまで脳内で吟味し始めてるので、売る選択肢なんて皆無だけどな!



「次はオークですか」


「まあ、変わんねぇよ。さっさとぶちのめして、ダンジョンボスの顔を拝まねぇとなぁ!」


「この調子で行けば、時間は余裕で間に合いますわね」



本当にボス一直線で攻略してしまったので、15分も掛からず突破してしまったのだが、やはり火力が過剰に足りてしまうと、通常階層よりも探索しないで済むので、大幅な時短に繋がる模様。


さて、お次はオーク君の登場です!



《【人魔ダンジョン】58階層ボス〔オークキング〕が レンテ 以下パーティにより初討伐されました》



予想違わずオークキングダムだったが、結果も予想通りの瞬殺。


ただ、ゴブリンやコボルトと比べて一匹一匹が巨漢なので、圧が凄かった。


ゴブリンなんかは、1メートルほどの身長しかないので、犇めいていても奥まで見通せたのだが、俺よりも縦にも横にもデカいオークだと、ボス部屋の全容が掴みづらいのは、俺たちが次にパーティで挑みにくる際には注意しないといけない点かもしれないな。


例によって宝箱は出現せず、玉座はウルフバルト鋼の触り心地が悪そうなやつだった。


正直、今のところ個人的には一番のハズレ枠である。まあ、コレクション的には飾りはしますよ、一応ね。


グレンあたりに知られたら、大目玉喰らいそうな扱いだが、魔術士には使い道のない無用の長物だから、仕方がないので諦めて欲しい。



《【人魔ダンジョン】59階層ボス〔オーガロード【ブルータル】〕が レンテ 以下パーティにより初討伐されました》


〈称号【ネームド討伐者】を獲得しました〉



あれは無理なやつです、ありがとうございました。


今の俺では逆立ちしても敵わない強敵だった…が、あっさりとサラが勝ってしまった辺り、何度も聖霊王の強大さを実感させられる。


ドス黒いオーラ、ノームが言うには瘴気を纏っており、体格はバイオレットオーガよりも小さく、オーガとそこまで変わらない3から4メートルの漆黒の鬼だった。


通常のオーガとの決定的な違いは、素手ではなく武器を持っていることで、赤黒く明滅する金属の棍棒を豪快かつ鮮烈に振り回すところだろう。


サラ、ノーム、ルクシアの全会一致で彼奴は死の祝福(イレギュラー)だったらしく、変な称号が生えた件から言っても、間違いないと思われる。


普通のオーガロードは、オーガと変わらず赤褐色の肌色をした、オーガより一回りデカいだけのモンスターらしい。武器に関しては、使う奴も使わない奴もいるので、おかしくはないらしいぞ。


というか、俺はバフを配っただけで一撃も与えてないのだが、こんな称号貰っていいのだろうか?


ああ、それとこれまでのキングダムと比べて明らかに違う点が一つあったな。


雑魚モンスターが一匹たりとも居らず、ブルータルとかいうネームドのイレギュラーだけが、泰然と王者の風格を纏いながら玉座に腰を据えていたのだ。


ノーム達の予想では、あのイレギュラーが雑魚を狩り尽くしてレベルを上げたのか、雑魚に割くリソースを削ってまでダンジョンがイレギュラーを生み出したのか。


どちらにしても、どれだけ劣勢であろうとも凶悪な笑みを絶やさずにサラと打ち合う姿は、ブルータル…残忍という名に名前負けしない悪鬼であった。


そしてお待ちかねの玉座は、これが一番実用面では嬉しいかもしれない総ダマスカス鋼製の無骨だが、ダマスカス鋼の特徴である木目状の美しさが活かされたデザインだった。


いや、一つ目はコレクションにするので、鋳溶かして再利用したりはしないんですけどね?数も採掘した分で今のところ足りるだろうし。


それに、どうせディーネ達は競うように下を目指すんだろうし、次に期待しましょう、次に。


ただ、ボス部屋にいたモンスターがオーガロードだけだったことで、宝箱は出現してくれたのは僥倖だった。


まあ、銅箱でしたがね!


中身は[万能薬(劣)]とかいう、使えるのか使えないのか分からないようなのが4本だけ。


解せぬ…。


違った、ボスラッシュ!

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[一言] バトラッシュもボスラッシュもいっしょいっしょ
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