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117/日


アリアドネの糸を使いダンジョンを脱出後、少し早めの夕飯ログアウトを取った。


ダンジョンイベントは残り5時間半。ダンジョン時間ならば残り22時間程で終了だ。


最後の一日、ラストスパートと意気込むプレイヤーは多いだろう。


正直に言えば、今から行うことは寄生プレイと謗られても仕方ない行為だし、これでランキング上位に入るのも気が引ける。


だが、まあ自分のスキルの範囲内で出来ることなので、あまり気にし過ぎると、あれもこれも駄目になってしまうしな。


結局は自分が許せるか許せないか、それだけの話だ。


それに、運営だって公式イベントの寄生プレイ対策くらいしているだろう。



「じゃ、時間も勿体ないし出発するか」


「おう、腕が鳴るぜ!」


「レンテの安全が第一ですよ」


「わーってるって!」


「やるからには全力ですわ!」



ダンジョン突入後、50階層の記憶の標へ転移。


隠しておくのも違うので、休憩を挟んだ際に昨日パーティを組んだ今日の居残り組には、このダンジョン探索のことをサラ達が話している。


なので、昨日と今日の聖霊王組のパーティ編成はそのままに、10時間ずつ、間に2時間の休憩を入れて、両方のパーティ編成で探索に付き合うことになった。


聖霊王は6人だし、どうしてもパーティだと枠が一つ足りないからな。



「レンテ、本当に全力を出していいのですね?」


「ダンジョンを壊すとかしないなら、気にせずやってくれ。俺も参考にできるところは参考にしたいしな」


「じゃあ、俺様の我儘を許してくれた礼に、ひとつレクチャーしてやるぜ」



そう言って、51階層に降りてすぐに設置してあった魔法罠に近づいていくサラ。



「お前達は魔法罠に苦戦してたみてぇだが、魔術士なら物理罠よりも魔法罠の無効化の方が楽なんだぜ、こんな風によ!」


「今のは…魔法罠の魔力を抜き取った、のか?」


「まあ、同じようなもんだな!魔力感知で罠を見つけ、魔力同調で波長を合わせ、魔力操作で魔力を切り離す。今のレンテでも出来る方法だろ?罠感知スキルもあるレンテなら、より罠の範囲を正確に把握出来るから、ただの魔術士より簡単なはずだぜ」


「魔力吸収などのスキルがあれば、さらに容易に無効化できますわね」


「なるほどな、魔法罠にも強引な突破方法はあったのか…」



これは次の機会には是非実践しなければ!


ただ、自分以外の魔素・魔力の操作はやったことがないので、最初は魔法罠で試すより、別のもので安全に試すべきだろうな。



「それに、罠は解除や無効化だけではなく、ダンジョンの壁を破壊できるように、罠も破壊出来ます。逆にモンスターを一網打尽にする為に転用も出来るので、時と場合によって使い分けるのが良いと思いますよ」


「そんな器用なこと俺には無理そうだな」


「慣れだぜ、慣れ!」



いや、これ以上俺を迷走させないでください!どこを目指させるつもりなんだ!?



時に、テューラとセレスと共に辿り着いた最大到達階層は53階層だった。


53階層への階段を見つけた時点で6時間が経過していたので、実質二階層分の攻略でその時間を費やしたことになる。


それを考えると、1時間半で51階層を突破してしまったのは、驚異のスピード攻略と言えるだろう。


一度ダンジョンを脱出してしまった為に、ダンジョン内の構造が変わってしまっているのと、単純に下層に行くにつれて巨大になっていることで、1時間半を要しているが、俺達だけでは詰んでいた状況を考えると、その戦闘の光景は異常だった。


俺達を苦しめたミノタウロスが、何一つとしてさせてもらえずに沈んでいくのだ。



「チャージなんかしてる暇あるわけねぇだろ!オラァ!」

悠長に攻撃を溜める愚かな牛が居れば、顔面に乱撃を叩き込まれる。


「あたくし達の中で最速は誰とお思いですの!」

構えることすら許されず、視界に入った側から倒されることもあった。


「レンテに危険が及ぶ前に捻り潰すのが最適解ですね」

複数体同時にサンドイッチなんてことまで可能らしい。



こう改めて、戦闘の様子を後方から眺めることは少ないし、聖霊王の連戦を見守るのは初めてなのだが、それぞれ戦闘にも性格が出ているようで面白い。


サラは精霊にしては珍しいのかもしれないが、拳で打ち合いたいのだろう。ミノタウロスの突進(チャージ)のように明らかな隙を晒していなければ、必ず先手を譲るし、一撃で沈めてしまうことは少ない。


ノームはより確実に、不安要素を潰すような立ち回りだ。積極的に自分の戦果を上げるのではなく、サラとルクシアが取りこぼしたミノタウロスを漏れなく屠っている。


ルクシアは、間違いなく彼女が最多撃破スコアを叩き出している。言葉通りの光速で、ヒットアンドアウェイというより、光の剣で斬りつけながら通り過ぎるみたいな何か。


ルクシアの攻撃に関しては、俺の目で捉えられているわけではなく、光の軌跡からの推測と、ルクシア自身が説明してくれなければ、今も理解できてないと思う。


光速で縦横無尽に動き回るのは、控えめに言って卑怯です!



「お、採掘ポイント発見!」



淡く輝くこれが、噂の採掘ポイントで間違いないだろう。


輝いているのは壁の中程だし、採取できるような素材は見当たらないしな。



「ここをピッケルで掘れば、鉱石が手に入んのかな?」


「そうですね。そのピッケルには【鉱物無効】の追加効果があるようなので、鉱石へのダメージは気にせず、適当に掘っても大丈夫ですよ」


「ああ、セシリアさんも言ってたっけな。この追加効果が無いと、鉱石の品質下げちゃうんだっけ」


「丁寧に傷つけないように掘れば必要ないのですが、慣れないうち、スキルのレベルが低いうちは、鉱物無効があった方が安定しますね」



さっき、ログアウトした後に急いで買いに行ってきたピッケルを両手で構えて、そんな豆知識的アドバイスをもらう。


今回の探索行では、俺はサラ達の召喚役だけで、戦闘に参加するつもりはない、というか邪魔になるだけなので、大人しく着いていく係だ。


しかし、それでは暇だし、メリットが無いだろうと、採取採掘はポイントを見つけ次第行っていいことになっていた。


まあ、実際はイベント的に着いて行くだけでメリットはあるのだが、それはプレイヤー視点の話で、サラ達は知らないことだからな。これに関しては、運営が寄生対策を何処までしているかで変わってくるが、それは今は分からないことなので、考えすぎるのも詮無いことだろう。


お互いにwin-winな関係を築けるので、お言葉に甘えます!



「カン、カン、カン、カン、ってリズムゲーみたいで楽しいな」


「単調な作業は苦手だぜ…」


「ピッケルのランクが少し足りてないですね。今回の探索で得た鉱石を使って、新しいものを作ってもらった方がいいかもしれません」


「その前にDEXはともかく、STRが全く足りてませんわ。今後も採掘をするのなら、ステータスを見直すか、せめてステータス強化系のスキルを取得するべきですわね」



ピッケルを振り下ろすのに合わせて、口ずさんでいると駄目出しが。


場所に合わせてピッケルも強化したりしないと、掘る速度だったり、品質だったりが下がるのだろうか。


そして、採掘にはSTRとDEXが関係しているらしいです。


うん、STRは絶賛放置中でごぜぇますな!


いやだって、魔術士にSTRなんて必要ないですやん…。


まあ、それを言い出したら、鉱石自体そんなに必要ないんだけどな。



「お、なんか鉱石出てきたぞ」


「[ウルフバルト鋼]ですね、一般的に刀剣に用いられる鉱物です」


「分かってたけど、モロ使わないな」


「しかし、ウルフバルト鋼が取れるということは、ダマスカス鋼も取れるはずです。ダマスカス鋼ならば、ピッケルにも適した鉱石ですから、丸っきり無駄ということはないですよ」


「おお、じゃあ採掘ポイント見つけたら次も掘ってみるか。これもグレンあたりに押し付ければ、スプラに依頼するだろうし、無駄ではないか」



セシリアさんも未知の鉱石は欲しがってたし、この階層で取れる鉱石はまだプレイヤーは未発見だろうから、そっちに売り払ってもいいしな。


その後、五つほど同じ鉱石を手に入れると、採掘ポイントの輝きが消えたので、もうここでは鉱石は取れないということだろう。


うむ、採掘はなかなかに重労働だな!


ストレージに直接取得したアイテムが入るわけではなく、ゴロッと転がり出てくるのは賛否あるかもしれないが、リアリティがあって俺は好きだ。


しかし、次からは時短のためにエンチャントに魔人化まで発動した方がいいかもしれない。


そんなことを思いながら、【筋力強化】スキルを取得するのだった。


サラが我儘みたいになってるけど、でも多少我儘言うくらいの方が可愛いよなってなった今日の午後。


だから、もうこのまま突き進みます!


そもそも精霊は、自制心より興味関心が勝っちゃいやすいという裏設定があるのは、ここだけの秘密…。

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