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112/日


共有HPが5割を切ったオーガ達は、それぞれ赤と青のオーラを纏うと、これまで以上に熾烈な攻勢にでた。



「「ガルァァァアアア!!!」」



赤の拳撃は空振りでさえ豪風を生み出しこちらの体勢を崩してくるし、地を殴れば地揺れを起こし的確に阻害を狙ってくる。


青はその堅牢さを更に強固なものとし、ちょっと俺の魔術じゃダメージ効率的に厳しくなってしまった。


それでも尚対等以上に渡り合う前衛のサラが完璧にヘイトコントロールしているおかげで、オーガの攻撃は今のところ後ろに逸れてきておらず、豪風や地揺れに気をつけていれば、徐々に削ることができている。


HP5割を切ったことで纏い始めたオーラは発狂モード系の強制発動スキルと思われるので発動したのだろうが、それ以外の基本的なスキルは未だにひとつも使ってきていない。


これまで基本瞬殺だったので露見しなかったが、どうやら畏怖と絶望は戦闘終了まで続く系のデバフの可能性が…。



「3割切ります!サラ様、一旦距離を!」


「おうよ!」



そして、テューラの宣言通りに、オーガの共有HPが3割を切った瞬間、赤と青のオーガは間の空間に吸い込まれるように引き寄せられ、紫の光に覆われてしまう。



「来ます、防御を!」


「あたくしの出番ですわね、『サンクチュアリ』!」



突如、暴嵐となった紫の激流が俺達へと襲い掛かり、ルクシアが展開した光の聖域と鬩ぎ合う。


これはアレだ、俺も知ってるやつだ。



「もしかしなくてもこれ、エクスプロージョンか!?」


「ええ。バイオレットオーガのもうひとつの特性は破壊属性。攻防に優れ、凶悪な破壊属性まで使いこなすこのモンスターは、同レベル帯の中でも頭一つ飛び抜けて厄介なモンスターです」


「マジか、アレ複合魔術専用じゃなかったのかよ」



思っていたよりヤバいモンスターなようだ。



「作戦は続投でいいのか?」


「的を一体に絞れるようになったので、ここからは火力重視で確実に削っていきましょう」


「珍しいですわね、テューラは前に出ないんですの?」



そういえば、そうだな。


さっきは強固な連携を前に、テューラも翻弄役兼火力役に回らざるを得なくなったが、今のバイオレットオーガならば、単体になったことだし、前に出つつ火力を出すことも可能なはずだ。



「バイオレットオーガは私の戦闘スタイルの天敵でして。悔しいですが今の私では、サラ様の邪魔にしかなりませんので、今回は大人しくしておきます」


「テューラだけではありません。我々精霊にとっても、彼奴は相性最悪なんですよ。簡単に言えば、【魔法破壊】というスキルを所持しているせいで、こちらの魔法攻撃を無効化してきます」


「ま、拳以外を狙え。それ以外の場所なら魔術でもダメージが通るはずだからよ!じゃ、俺様は行くぜ!」



紫の奔流が収まり、遂に姿を現した紫の巨漢に臆することなく猛進するサラ。


サラの助言から判断するなら、魔法破壊は拳起点で発動され、触れた魔術系攻撃を霧散させてしまうのだろう。


だとすれば、確かにテューラとは相性最悪だ。


テューラの基本戦術は、魔術パリィを主軸にした近接魔術戦闘。


バイオレットオーガは勿論肉弾戦を仕掛けてくるのだろうし、拳の攻撃を魔術パリィしようとすれば、パリィするための魔術は魔法破壊で砕かれ、そのまま殴り飛ばされてしまうだろう。


そうなれば残るのは、基本ステータスは魔術士構成の肉体のみ。そりゃ、あんな戦闘スタイルなのだから、多少は物理ステにも振ってるのだろうが、魔術ステに比べたら低い方だろうしな。


有利不利なんて話ではなく、マジの天敵で笑う。


今後もしテューラと戦うようなことがあれば、バイオレットオーガ艦隊でも揃えてやろう、そうしよう。


隙を見つけては、拳の届かない場所に魔術を撃ち込むプレイをしながら、サラの大立ち回りを見て思う。



「なあ、魔術を無効化するって割には、サラの炎は無効化されてなくないか?」


「あれは魔術でも魔法でも魔導でもなく、純粋な焔。火の聖霊王の権能が生み出した、自然的な炎ですわ」


「あのような事は精霊王の身では出来なかったことです。魔法生命体の精霊では、どこまで行っても魔力的な手段しか持ち得ませんでしたからね。それもこれも、レンテが聖霊王へと進化を促してくれた成果お陰です」



うん、まあそれはいいのだが、聖霊王は精霊王で聖霊王みたいなやつ。


会見の時はそれに助けられたが、本当に分かりづらいな!



しかし、戦闘の方はそう分かりづらい展開でもなく、赤の規格外の膂力と、青の巌のような頑健さを兼ね備えているらしい紫だが、手数と連携を失ってしまった代償は大きく、合体以前よりHPを削る効率は上がっていた。


そして、バイオレットオーガに同化してから五分が経過した。



「この魔法陣、また!?」


「エクスプロージョンです、ルクシア様お願い致します!」


「『サンクチュアリ』!こんなもの、何度やっても通すわけがありませんわ」



再度放たれた爆発の魔術は、映像の焼き直しのように同様の光景を広げる。


だが、エクスプロージョンだと?


合体直後に放ってきた攻撃は、まだ合体に伴う爆風だったのかと見逃すことも出来たが、今度の爆発は訳が違う。


魔法陣が展開された?


さっきは合体の光で魔法陣を確認できなかっただけだろうか。


それでも今大事なのは、目の前でこのデカブツが魔法陣を展開したことだ。



「気をつけろ!畏怖と絶望の効果が切れてるぞ!」


「グラァァァア!!」


「これはレッドオーガとブルーオーガのスキルですわ!?」



こちらが勘づいてしまったからというわけではないだろうが、赤と青のオーラを螺旋に纏い、反撃の咆哮を雄叫ぶバイオレットオーガ。


合体に伴い消えていた発狂モードは、どうやら任意発動可能らしい。


くそっ!合体した影響か、効果時間が切れたせいなのか、畏怖はともかく絶望が治ってしまったのは状況的に痛過ぎる!



「ガラァァ」


「っ!?」



目が合った気がした。ニヤリと悦悪に塗れた醜悪な笑みを向けられた気がした。


きっとコイツは怒髪天を衝く想いだろう。


序盤以外、終始いいように嬲られていたこの展開に、怒り狂っていたことだろう。



思い通りに身体を動かせないこの[畏怖]は誰が…。


己が手足となるはずのスキルを封じるこの[絶望]はどこから…。



本来、絶対強者である筈のボスが、その矜持を踏み躙られた。


有り得てはならないその状況は、そして更に有り得なかったはずの状態異常からの復帰という奇跡を持ってして、もう一度ひっくり返された。



「ガルラァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」



剥き出しにした眼球の黒の瞳までを赤く染め上げ、爪牙は長く鋭く強靭に、額から生える二本の角は紫黒のスパークを放つ。



「どうやら、時間を長くかけすぎたようですね。状態異常が反転しました、アレは憤怒に囚われてしまっている」


「反転?」


「一部の状態異常は反転します。自らを陥れた憎き感情を憤怒に変え、思考を放棄し力に置換するのです。それが、七大罪の一翼を担う憤怒の能力です」



つまり、怒らせちゃったわけですね…。


どうやら畏怖と絶望にはそれなりのデメリットがあったようだ。


相手に理性を放棄させるほどの怒りによる超強化。


そして、今まで封印されていたスキルによる攻撃まで解禁されてしまう。



「ちっ、クソッタレ!」



ズドンッ、と。



「…【発勁】?」



振り抜かれた拳から空気砲のような弾丸が放たれ、俺のギリギリ真横を通り過ぎる。


紙一重で直撃しなかったのは何も偶然ではなく、超速で反応してバイオレットオーガの拳の軌道を変えてくれたサラのおかげだ。


これはちょっと不味いかもしれない…。

すみません!

ちょっと推敲の時間が取れてないので、後から細部の修正をするかもしれませんが、大筋は変えませんのでご容赦下さい。

読みづらい部分があった場合は申し訳ないですm(_ _)m

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