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98/土



〈【杖術】LV.6に上昇しました〉

〈【灼魔術】LV.2に上昇しました〉

〈【氷魔術】LV.3に上昇しました〉

〈【気配感知】LV.9に上昇しました〉

〈【危機感知】LV.9に上昇しました〉

〈【MP増加】LV.6に上昇しました〉

〈【知力強化】LV.10に上昇しました〉

〈【MP自然回復】LV.8に上昇しました〉

〈【魔力感知】LV.10に上昇しました〉

〈【範囲付与術】LV.3に上昇しました〉

〈【状態異常強化】LV.4に上昇しました〉

〈【罠感知】LV.4に上昇しました〉



15階層の探索を始めて暫くが経った。


この階層から、10階層のボスでもあった〔ホブゴブリン〕が雑魚として登場している。しかも職持ちなので、恐らくボスよりも強い…かもしれない。


いかんせん初登場後に即ご退場なされたので、情報が皆無であるし、これまでの経験上ボスは通常モンスターより強化されている傾向がある。レベルで言えば10以上離れているとはいえ、どうなのだろうか。


実際戦ってみた感想としては、弱いです。



「『ウィンドボール』『ファイアボール』、ファイター2体から片付けます!テネブ様、ランサーを!」


「ま、任せて」


「プリーストは私にお任せくださいませ」


「オイラの獲物はソーサラー、お前だー!」


「ふはははは!震えろ悴め、凍ってしまえ!『コールドスナップ』!」


「レンテ、楽しそうだね!」



テューラの攻撃は相変わらず一撃粉砕だし、セレスの一分の狂いもない流麗な弓術は頭に必中し、こちらも一撃で倒し切ってしまう。ディーネ達に至っては言わずもがなだ。


というか、テューラの攻撃の仕方が、属性こそ多種多様だが、特にウィンドボールの場合など螺◯丸にしか見えない罠。


セレスの弓術は、魔弓術というスキルらしく、矢が通常とは異なり属性を矢の形に変えて放っている。つまり、物理ではなく魔法ダメージなので、魔力同調の効果もあるという優れものだ。


一応、通常の矢を使うことで、10階層のボス戦みたくダメージの底上げみたいなことも出来るらしい。


とはいえ、この階層でも無双しているのは彼女達が強いからであり、敵が弱いというのは語弊があるように感じるかもしれないが、それを踏まえた上で弱い。


新しく取得したばかりでまだレベルが低い溶魔術『ラーヴァショット』で、急所など関係なく一撃だったのだ。


プリムス草原のボス戦で、ファングウルフリーダーに二重詠唱(デュアルスペル)を使って発動したのと同じ魔術のはずだが、レベルの低いボスは耐えたのに、下手したらトリプルスコアのレベルを誇るホブゴブリンは消し炭になったので、魔術耐性皆無という意味ではすこぶる弱い。


正直うちのパーティは火力極振りみたいなところがあるので、火力担当は他に譲ることにして、途中から俺は行動阻害担当をしていた。


こっちもテネブと役割が被るのだが、テネブが確実に前衛を、俺が範囲魔術で後衛も巻き込む阻害を、という役割分担を…。


いえ、分かってるんです!言わないでください!


敵が一撃で沈むのも相まって、いらない子状態だってことは、自分が一番理解しています!


それでも、なんちゃって範囲魔術じゃなくて、ちゃんとした範囲魔術が意外と面白くて連発してしまっている現在。


最初は灼魔術『ヒートストローク』という、範囲ダメージを与えながら、状態異常[熱病]で稀に追撃するという魔術を使っていたのだが、ダメージよりも行動阻害ってことで、氷魔術『コールドスナップ』に途中からシフトした。


こっちは、ダメージこそないものの、状態異常[凍傷]を高確率で与える範囲魔術だ。


[熱病]はちょっとした頭痛や、体温上昇、軽い酩酊などで行動阻害を起こす状態異常なのだが、[凍傷]はDEXデバフと凍えからくる行動阻害を起こす状態異常で、稀に武器を手離すモンスターまでいたので、こっちの方がサポートになるのかな、と。


その光景が面白くて、こっちを使っているところもあるが。


しかし、【傲慢】スキルの効果か、【状態異常強化】の影響か、或いはその両方か、稀なはずの[熱病]付与が確定効果になっているのは、自分でもおかしいなと思いました、はい。



他には、スキルが二つほどLV.10になってくれたおかげで、SPが補充されたのも有難いが、それ以上に知力強化がLV.10になってくれたおかげで、INT補正が1.2倍になったのが嬉しいな!


それ以外で少し気になっているのが、罠の数がそこそこ多いので、もしかしたら11階層から19階層はモンスターではなく、罠チュートリアル階層なのかもしれない。


落石、投石、木矢、毒霧、落とし穴、隠し通路etc.


どれも殺傷能力はそれほど高くなく、本当にお試し程度だが、どうやら罠には2種類存在することが分かった。


モンスターが設置したものか、ダンジョン由来のものか。


前者は、糸やスイッチなどのトリガー式のもので、実際にゴブリンが仕掛けているところに遭遇したのだが、こっちは仕組みさえ理解できれば手動で解除できるのが特徴だ。


一方で後者は、トリガーらしいトリガーもなく、そこに罠があると知らなければ突然発動する悪辣仕様で、【罠解除】スキルを使うことで一定時間無効化できるが、成功失敗判定はどうやら、罠の殺傷性とスキルレベルで変わってくるらしいが、失敗のデメリットは殆どない。成功するまで時間を取られるくらいだろうか。


しかし、前者のような手動設置された罠には効果を発揮しないようなので、シーフとしてやっていくのなら、スキルの熟練度稼ぎと並行して、罠を解除するための知識も蓄えていかないといけないのだろう。


さっき前者の罠解除に失敗して、落石回避のためだけに精霊化を発動した野郎がいるとかいないとか。


だがこの先、ダンジョン産の方も失敗することをトリガーに発動するような罠が出てこないとも限らないため、油断は命取りだな。


それと、なかなかにスキルレベルの通知が煩いので、レベルが10の倍数に達した場合か、何かの条件を満たすような場合だけ通知される設定に切り替えたので、次からスキルのレベルアップ通知は大人しくなってくれることだろう。



「おや、階段がありますね。レンテ、罠の気配はありますか?」


「…いや、ないみたいだな」


「では、一旦ここを野営地にして、休息を取りましょう。ステアーズルームにモンスターは湧きませんので、入り口を交代で警戒して、各3時間ほど睡眠を取ります」


ステアーズルームとは、階段がある小部屋のことだ。


レストルームと同じでモンスターが湧くことはないのだが、外から侵入してくることはあるらしいので見張りを立てる必要があるのだ。


「わたし達は寝る必要がないから、見張りやるよ?」


「いえ、ディーネ様。こういう経験も必要なことですので、私も体験しておきたいのです。それに、皆で分担した方が、パーティという感じがするでしょう?」


「そうだね!みんなでやった方が楽しいもんね!」



お互いニコニコと会話をしているが、どこか微妙にズレているような…。



「では、野営の準備は私とセレス、レンテでやりますので、その間の警戒を聖霊王様方でお願いします」



スプラとのグレディまでの旅で野営の経験はあるからな!任せろ!


と意気込んでたわけなんですけれども。



「おい、これは野営なのか…?」


「何かおかしい所があるでしょうか?我が国の最先端技術が詰め込まれた至高の一品ですよ」


「お隣いかがですか、ふかふかですわよ」



高級ソファに身を任せるセレスからの、語尾に音符が付きそうな声音でのお誘いには大変心惹かれるが、さっきまでの楽ばかりしていてはいけません!的なノリは何処に行ったのだろうか。


外観は何の変哲もないテントだった。俺が持っているやつより幾分か高級そうな質感ではあったが、それだけだ。


しかし、中に入ってまず視界に飛び込んできたのは廊下。それだけで違和感しかなかったのだが、廊下だけで外観よりも広い空間は、明らかに空間拡張なりの加工が施されていたのだ。


廊下には扉が9つあり、6部屋の寝室、浴室、リビング、ダイニングキッチンという、ダンジョン攻略とかに関わらず贅沢すぎる間取りである。


浴室から別の扉でトイレまで完備されているところに、限界まで不便を解消しようとする心が感じ取れるが、ここはダンジョン。TPOガン無視か!



「ダンジョンという場所は、いつどこから牙を剥いてくるのか分からない、四面楚歌の世界なのですから、最大限できる努力は怠るべきではないというのが私の信条ですからね」


「…まあ、暗い場所で戦いっぱなしってのも精神的にキツいから、これはこれでアリ、なのか?」


「アリアリですよ。食事にするので、レンテ、聖霊王様方を呼んできてください。中から外の様子を確認できるようになっていますし、強力な時空属性の防御結界が組み込まれていますので、爺やの全力でも数発は耐えられますから、食事の時間くらい見張りは不要でしょう」


「リンダ様が攻めてこない限り安心ですわね」



ちょっと不吉なのでやめてください…。






休息が終わり、探索再開の時間。


最初の3時間をシルフ、テネブの男3人で見張りを担当したのだが、特に何事もなく気楽な見張りライフだった。


前の野営の時にも使った[簡易結界石]と、魔物除けのお香より上位アイテムっぽい[惑わしのお香]とかいう、使用した場所を中心に、使用者とそのパーティ以外の方向感覚を狂わせ、より反対側に行くよう思考誘導するとかいう危険アイテムで、モンスターの顔を拝むことは一度たりともなかった。


なによ、思考誘導って…。


あ、ご飯ね、美味しかったよ。


あっつあつのステーキに、ネギとワカメの中華風スープまで付いて、ほかほかご飯はお代わりしちゃいましたね。


食べ応えもあって、ホッコリしちゃって。ここがダンジョンだなんて、正直言ってあの瞬間だけは忘れてましたね、ええ。そういう意味では思考誘導されてたかもしれない。


誰が作ったご飯なのかって?


テューラ?


なわけ。笑わせないでほしいな!



「あまり失礼なことを考えないでください。私にだって許せることと許せないことの線引きはありますので」



いや、怖っ!?


こういうのって普通、「何か良からぬこと考えてませんでした?」とか言って含みを持たせるんじゃないの?断定してきたんだが…。


セレスは…料理ができれば完璧だよな。


お淑やかで、時折魅せる無邪気な一面もあって、さらに家庭的でもあればこの世に敵なしである。


しかし残念、テューラと違って料理ができるのかどうかは知らないが、今日の料理は彼女作ではない。


かといって、ディーネ達が料理できるわけもなく。


正解は、テューラが宮廷料理人に作らせて、[アイテムバッグ]とかいう魔道具に詰め込んできていたものでした。正解の人に拍手!



という感じで休憩を取ったわけだが、その時間も合わせてダンジョン攻略を始めてから13時間ほどが経過していた。


俺がログアウトしていた3時間、現実時間でいえば45分の間に、20階層のボスが倒されたらしいが、なかなかに命を削った攻略をしている連中がいるらしい。


まあ、うちのパーティは睡眠不要種族が半分を占めているとはいえ、一人を除いてNPCだ。プレイヤーとは違って、精神的な負担も大きいだろうし、今の休息ペースの攻略で問題ない。


どっちにしろ生き急いだから良い結果が訪れるわけではないからな。






なんてことを考えている間に、20階層に降りるためのステアーズルーム。


罠の発見解除も、パーティとしての連携も慣れてきて、探索速度が上がったのと、休息を挟んだことでの心理的余裕、単純に迷わずにステアーズルームが見つかったりと運が良かったのだが、休息から3時間半。攻略ペースだけを見るなら、生き急いで命を削った攻略に思えなくもないのが不思議なところです。


休憩を兼ねつつ、ボス戦に向けての作戦会議。



「20階層ボスは、文献によると〔赤帽子ゴブリン(レッドキャップ)〕で、影に沈んだり、姿を消したりと、不意を打つことを得意とするタイプのようです」



なかなかに厄介なボスらしい。



「本来であれば、姿を眩ませる前に一網打尽にしてしまいたいところですが、それではいつまで経っても連携を深めることなど出来ませんので、敢えて先手は譲ろうと思います」


「…楽しそうだな」


「ええ、勿論です!」



そりゃ、闇討ち特化なんて厄介だろうさ。でも、テューラはそれを愉快と感じる妖怪なのだ。


こんなの、俺たちを納得させるための理由に過ぎない。自分が最大限楽しむための建前。


テューラとパーティを組むとは、つまりこれを受け入れなければならないのだ。


いつ襲われるのか分からない不安か、恒常的に喜んで危険に飛び込む逝かれ思考か。


もしかしたら俺は、あの時選択肢を誤ったのかもしれない…。



ボス階層は、上から降りてくるステアーズルームと、だだっ広いボス部屋、下へのステアーズルームとレストルームだけが存在する階層だ。


そんな広大なボス部屋に居たのは、テューラの事前情報通りの〔赤帽子ゴブリン(レッドキャップ)〕LV.40が6匹。


草臥れたとんがり帽子を被ったゴブリンだが、どこか精悍に思えるのは、これまでのゴブリンと違い、意味もなくグゲグギャと汚い鳴き声で喚き散らさないからだろうか。


ダンジョンという閉鎖空間よりも、あの鳴き声を聞かされ続ける方が、精神的に辛いというプレイヤーもいそうだからな。



「グゲッ」



先頭の1匹によるその一言だけで、全てのレッドキャップが影に沈むか、空間に溶け込むように姿を消した。



「『ライトボール』からの光魔法で、弾けろ!」


「ボクの前で影に潜むなんて、舐めないで【影縛り】」


「グギッ!?」



俺のライトボールと光魔法の合わせ技で移動できる影を絞って、テネブのスキルで拘束する。きっとテネブには俺のサポートなんて必要なかったのだろうが、こういう合わせ技ってなんだか良いよな!


取り敢えず3匹捕獲!



「テューラ右だぜ!」


「ありがとうございます!」


「ティア正面!」


「了解ですわ、シルフ様!」



気配を消すスキル以外にも、足音を消す類のスキルを持っているらしいレッドキャップの居場所を的確に伝えるシルフ。


どうやらシルフには、音がない不自然な空間というものが分かるようで、まさに消音スキルの天敵だった。


そして、ぴちゃと背後から音がして振り向けば。



「グボガッ」


「ダメだよ、後ろから急に襲っちゃビックリしちゃうでしょ」



顔だけを水球に包まれ、もがき苦しむレッドキャップ。


息ができないのか、懸命に水を掻きむしるが、一滴たりともこぼれ落ちる様子がない。


なにこれ、ダントツで恐ろしいんですけど!?


直前にした音の正体は、地面の水溜りか。


視認できないレッドキャップを捉えるためのディーネの策なんだろうが…。


子供に注意するように優しく諭すディーネが一番怖いです!



〈【人魔ダンジョン】20階層ボス〔赤帽子ゴブリン(レッドキャップ)〕を討伐しました〉


〈【気配感知】LV.10に上昇しました〉

〈【危機感知】LV.10に上昇しました〉



一人で勝手に戦々恐々としている間に、テネブが拘束していた三体も始末され終幕。


リザルトもコンパクトでよろしい!


どうやら、ボス宝箱は今回も大したアイテムは無かったようだ。初心者が名前から取れただけの[HPポーション]セットです。


テューラは思っていたほどレッドキャップに手応えがなかったことに若干不満な様子だが、もう少しパーティメンバーを見返した方がいいと思う。


とはいえ、なるほど!


テューラの無茶無謀を跳ね除けられるほど強ければ、これからも苦悩しなくて済むのか!これは良い発見です、是非とも聖霊王様には頑張ってもらいたいところですね!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分が強くなる話どこ行った
[一言] ログハウスを持ち歩ける段階で野営にならんからなー。仕方なし。 その技術を民間に流せよと思うのは。一般プレイヤーの総意だよな?
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