97/土
バレンタイーンホルスタイン!
最近は友チョコとやらが流行っているというのをTVでチラッと耳にしたんですが、それを聞いてチョコ会社の新たな戦略か…と思った作者はきっと心が汚れているんだと思う
〈【魔物鑑定】LV.6に上昇しました〉
〈【気配感知】LV.8に上昇しました〉
〈【危機感知】LV.8に上昇しました〉
〈【気配遮断】LV.4に上昇しました〉
〈【体幹】LV.5に上昇しました〉
〈【運び】LV.5に上昇しました〉
〈【悪路走破】LV.5に上昇しました〉
〈【回避】LV.3に上昇しました〉
〈【脚力強化】LV.5に上昇しました〉
〈【立体機動】LV.5に上昇しました〉
〈【空間把握】スキルが取得可能になりました〉
9階層の階段がある小部屋で休憩中。
時刻は現実時間で午後1時を回ろうとしていた。
ダンジョン内は四倍の時間が流れているため、ここまで来るのに、約4時間掛かったと考えれば、時間加速がなければプレイヤーによっては攻略は厳しかっただろう。
いや、反則に近い攻略方法でさえ4時間を要しているのだから、普通のプレイヤーならもっと掛かっているだろうな。
しかし先程、10階層のボスが倒されたというワールドアナウンスがあったのだが、素直に驚いた。
こんな脳筋攻略をしているのに、俺達以上の速度で攻略しているプレイヤーがいるとは思わなかったのだ。
しかし、ここまでの道中のモンスターならば、攻略組であれば鎧袖一触だろうし、そうおかしいことでもないと思い至り、ちょっと慢心していた自分に気づき反省しました。
「レンテの動きがかなり良くなったおかげで、5階層までよりもここまでの方が早く辿り着けましたね」
「いや、俺というよりテューラだろ」
後ろに目でも付いてると疑うくらいに、どこから攻撃されても対処するし、ここまでのモンスターは全て一撃だ。
「テューラ、レンテ、ボスは私達に譲ってくださいませ!そろそろ私達にも出番というものが欲しいのですわ!」
俺が呼び捨てにする代わりに、セレスも俺を呼び捨てにすることにしたらしい。
ちなみに、セレス派が圧倒的少数のため俺も…というのを建前に、少し長いのでセレス派に鞍替えしました。
まあ、セレスの言いたいこともわかる。
俺がそうだったように、テューラ以外のメンバーは走るか、空中をプカプカ着いてくるだけだったのだ。
「むぅ、仕方ありませんね…」
「じゃあ、俺も遠慮しとくよ」
多分、10階層ボスはLV.20かLV.21だ。これまでの階層のモンスターから考えても外れないだろう。
まあ、俺の魔物鑑定では既に鑑定出来ないので、〈鑑定不能〉を見るためだけの作業になっているのだが、テューラとセレス曰く、このダンジョンでは階層×2(+1)がモンスターのレベルになっているらしい。
これからはコツコツ〈鑑定不能〉がゲシュタルト崩壊するくらいに鑑定業に勤しまねば…。
ともかく、俺よりレベルの低いモンスターなんて、俺以外のメンバーなら誰が戦っても一撃の未来しか見えないし、下手したら俺でも苦戦すらないかもしれない。
ならば、これまでの鬱憤晴らしに使えるのなら、ボスも本望というものだ。
テューラは少し残念そうだったが。
「『精霊魔弓』『一矢縫い』ですわ!」
精霊魔弓は、力を借りた精霊の属性を矢に上乗せする精霊召喚士特有の弓武技だそうだ。一矢縫いは弓術スキルの普通の武技だな。
そんな過剰火力を受けたホブゴブリンは、吹き飛ばされ、壁に縫い付けられた瞬間に、青緑黒の螺旋が上半身を消し去り、ボス戦終了。
〈【人魔ダンジョン】10階層ボス〔ホブゴブリン〕を討伐しました〉
3秒でした、ありがとうございます。
ホブゴブリンは、少し体格の良いゴブリンで、それ以外の特徴は特にない…というか、特徴を知る前に消し飛びました!
「ボス宝箱には大したアイテムは入っておりませんわ」
おお、ボスを倒したら宝箱出てくるのか!
木製茶色の質素な、宝箱と言われて想像する形の箱に[初心者HPポーション]が6本入っている。俺ですら回復量の足りない、所謂ハズレ枠なのだろう。
しかし宝箱は道中にもあるのだろうか?まあ、上層の宝箱の中身なんてたかが知れてるだろうから、宝箱を探す為だけに時間を割くのは非効率かもしれないが。
「休憩は…したばかりですので、必要ありませんね。では、記憶の標に触れてから、下の階層を目指しましょうか」
特にこの結果に誰も動揺することなく、淡々と次に進んでいく会話。
ボス部屋の先に、モンスターが襲ってこないレストルームという小部屋があるらしく、そこに[記憶の標]というダンジョン固有のシステムがある。
これは公式のイベントページとヘルプに明記されていることで、記憶の標にはダンジョン内転移の機能があるそうだ。
この人魔ダンジョンに入ったときに転移してきた最初の小部屋にも、少しSFチックな球体が浮かんでいたのだが、それが記憶の標だったりする。
それに触れることで、次からダンジョンに入るとき、登録している階層から開始できるそうだ。
ともかく、触れさえすれば登録できるらしいので、さっさと登録を済ませて先に進む。
レストルーム自体は、他の小部屋と特に変わった様子はない。強いて言えば、少し地面の凹凸が少ないかな?程度だ。
〈【罠感知】LV.2に上昇しました〉
11階層に降りてすぐに罠感知が反応した。
どうやら罠感知は視界に入った罠の場所がなんとなく分かり、しっかりどれが罠か判断出来たらどんな罠か理解できるようになっているらしい。
「罠だな、右前方の地面のスイッチを踏んだら投石が降りそそぐみたいだ」
「左に罠はありますか?」
「いや、大丈夫…だと思う」
「では、左壁を伝いながら進みましょう」
スキルが低レベルで確信して言えないが、多分大丈夫なはず…。
〈【罠感知】LV.3に上昇しました〉
なんて一幕を繰り返しながら15階層。
敵は職持ちゴブリンの中に新しく〔ゴブリンナイト〕というのが増えたくらいで、テューラの攻撃は変わらず一撃で仕留めている。
しかし、この階層から出てくるモンスターは、俺よりも高レベルになってくるはず。
「ここからは、きちんと攻略していきましょうか」
「悪いな、気を遣わせてしまって」
「違いますよ、レンテ。私達はパーティなのですから、そういうのは言いっこなしですよ」
そっか。パーティだからこそ、小さな事でも感謝は忘れずに行きたいが、そうであるならーー。
「そうですわ。こういう時はゴメンじゃなくて、ありがとうをお聞かせくださいませ」
「あーっ!セレスずるいですよ!言いたいことリストNo.23、ゴメンじゃなくてありがとうは私が言う流れだったじゃないですか!?」
「隙をみせるのが悪いのですわ。小さい頃から一緒に考えた言いたいことリストですもの、油断大敵でふゅわ…謝りまひゅので、ほっぺ引っ張るのやめてくだひゃいましぇ」
何をやってんだよ…。
「…ありがとな、テューラ」
「デレが足りませんが、まあ及第点でしょう」
「俺に変な期待しないでくれ…」
こいつは一体俺をどうしたいんだ!
「では、隊列を少し変えましょう。私とレンテが先頭、テューラを挟んで、聖霊王様方は引き続き背後の警戒をお願いします」
「まっかせてー!」
「オイラがいれば百人力だぜ!」
「暗いところは、得意、だから」
切り替え早すぎ問題。
「攻略のペースを落とすのは、何もモンスターがレンテのレベルに追いついたからだけではありません。我がパーティは急造ですし、早いうちに連携を深めなければなりません」
「それなら、もっと浅い階層でも良かったんじゃないのか?」
「雑魚相手に無双するのは訓練とは言えませんよ、レンテ」
何故か嗜められたんだが。
「何よりこのパーティには盗賊職がおりませんので、レンテの【罠感知】スキルも慣らしておいた方がいいでしょう。私の【危機回避】【危険予知】だけでは対処が遅れることも考えられますから」
何やら上位の別スキルで罠感知を補っていた様子。
「レンテは会敵するまでは先頭で罠感知、接敵後はセレスの位置まで下がってください。そのフォローはディーネ様、お願い致します。私は前衛の足止めと始末を優先しますので、セレスとシルフ様は後衛を優先的に狙ってください。テネブラエ様は、危なそうなスキルの発動阻止や、全体の行動阻害、デバフなどでサポートをしてもらえればと思います。何か、質問などございますか?」
「俺は下がったあとどうすればいい?」
「まだ敵が残っているようならば、セレスやシルフ様と一緒に後衛から倒していってください。ディーネ様もよろしいですか?」
「はーい!」
「俺も了解」
「では、ここからは気を引き締めて行きましょう!」
テューラ殿下の音頭で、探索行に戻ろうと一歩踏み出そうとして。
「あ、大事なことを忘れていました。皆様、【魔力同調】か【魔力共有】【魔力共鳴】を発動しておきましょう。何せ、我がパーティは、火力が凄まじいですからね!」
サラッと恐ろしいことを言わないでください…。
感想で教えてもらって気付かされたんですが、掲示板含め100話続いてたらしいです!
自分が書きたいことを書いている拙作ですが、多くの感想や評価に励まされて筆が進むこともしばしば有りました。
至らぬところも多々あるかとは思いますが、これからも拙作をよろしくお願いしますm(_ _)m
あと感想で頂いてた「プリムス草原のボス戦強すぎない?」という件について、以前にも別の方から感想きてた気がするので触れときます。
あれについては主人公視点だから強く見えていますが、実際はそれほどでもありません。
初心者を抱えた二人パーティで、尚且つ近接型ボス相手に魔術士で1vs1を挑んだ結果、辛勝した。ように主人公視点だとなっていますが、実情はノーダメクリアです。
ランダム要素で最後の最後で虚をつかれ危ない場面があったものの、それだけとも言えます。
下方修正への詫び石という名の補填は、正直考えから抜けていた作者の落ち度です。
ここは一度、運営にその責任を押し付けておいて、次があれば補填対応させますので、今回は何卒お許しを…




