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96/土



〈異界【人魔ダンジョン】を開放しました〉


〈ダンジョンは他の異界とは異なり、再入場には10分間のインターバルを要します。死亡後のリスポーンにおいてもこれは適用され、入場後10分以内に死亡された場合は、10分経過後に設定されたリスポーン地点での蘇生になりますのでご注意下さい〉


〈称号【ダンジョン探索者】を獲得しました〉



他の異界だと、入場制限は1時間のインターバルだったはずなので、かなり緩和されているようだ。その一方で、ダンジョン内にリスポーン地点があるはずもなく、リスポーンするのにも制限が掛かるらしい。


新しい称号【ダンジョン探索者】は、ダンジョン内でのスキル熟練度補正(微)。


俺以外のプレイヤーは、このタイミングで称号【境界を越えし者】を獲得しているのだろうな。



「本当に洞窟なんだな」



冷たい岩肌に手を触れる。


スタート地点はそこそこ広い小部屋で、正面に縦横5メートルほどの通路がひとつだけ。


どうやら、通路と小部屋を繰り返す、ダンジョンといわれて想像するようなオーソドックスなダンジョンらしい。


バランスの良いパーティなら通路でも戦えなくなさそうだが、通路のこの広さは前後を挟まれると逃げ場が無くなって厄介そうだ。



「迷宮型のダンジョンは足元が不安定ですので、気をつけながら進みましょう。前衛を私、真ん中にセレスとレンテを挟んで、後衛のディーネ様達には背後からの奇襲を警戒してもらいます」



テキパキと指示を出すテューラ殿下。



「とはいえ、低階層の雑魚は旨味も少ないですし、さっさと10階層までは駆け抜けようと思うのですが、よろしいですか?」


「まあ誰がどう見てもうちのパーティは過剰戦力だし文句はないけど、罠があるんじゃないのか?」


「ダンジョンで罠が出現するのは、基本的に11階層からです。それにしても致死の罠はもっと深層に行かなければ出てこないので、手応えのあるモンスターがいる階層までは、ボス部屋まで駆け抜けましょう」



ということになった。



ダンジョン内を駆け回るという奇行を始めてすぐに、通路で会敵したのは〔ゴブリン〕だった。


俺の魔物鑑定でも鑑定できたレベルは驚異のLV.1。


立ち止まることなく、テューラ殿下が腕に刃のように魔力を纏わせ、首を跳ね飛ばして終了。


断末魔すら漏らすことなく消えていくゴブリン、哀れなり。



再び会敵。


お次のお相手もゴブーーグゲッ!?


またもやゴーーゲァ。


かーーッ。


ーー。



〈【魔物鑑定】がLV.2に上昇しました〉

〈【器用強化】がLV.12に上昇しました〉

〈【魔力同調】がLV.2に上昇しました〉

〈【集中】がLV.3に上昇しました〉

〈【夜目】がLV.8に上昇しました〉

〈【発見】がLV.4に上昇しました〉

〈【悪路走破】スキルが取得可能になりました〉



あっという間に5階層です!


ディーネ達はともかく、テューラ殿下とセレスティア殿下もまだこのくらいなら疲れ知らずみたいだ。


俺を含めて疲れないのをいいことに、常に駆け抜けるストロングスタイルの攻略。


攻略…?


全員が夜目かその上位スキルの暗視持ちなので、明かりすら灯さずに、ただ先へ先へとひた走るこれは攻略なのだろうか?


テューラ殿下以外は未だ誰も戦闘に参加しておらず、ただ暗闇を全力疾走するプレイ。


もちろん一番足が遅いのは俺であり、足場が悪いのに加え、夜目があるとはいえ見通しの悪い暗闇が拍車を掛けて、何度転びそうになったことか…。


今まで上げる機会がなかなか無かった魔力同調の熟練度が稼げているのは嬉しいところ。パーティメンバーにFFしないのが最大の効果なのだが、いかんせんパーティメンバーがこれまで居なかったもので…。



「少し休憩を挟みましょうか」


「ふぅ…すまんな」


「パーティを組む前から分かっていたことですから、問題ありませんよ」



虫も殺さなそうなセレスティア殿下でさえ、苦もなくこなしているのだ。明らかに俺だけが足を引っ張っていた。


まあ、テューラ殿下の言うとおり、最初からこうなる事は分かっていたことであり、仕方がないとはいえ、少し悔しい。



「そうですね。レンテは魔術系スキルに偏りすぎてますので、もう少し他に目を向けても宜しいのではないでしょうか」


「【軽業】【体幹】【ステップ】【運び】【舞踏】などは、足場の悪いダンジョン探索でも役に立ちますし、戦闘で接近された際にも補助してくれますからオススメですわ」


「【回避】【見切り】は逆に戦闘用だけど、移動の手助けにもなってくれるスキルだね!」


「空飛べば関係ないぜ!」


「きゃ、【脚力強化】と【早歩き】は、単純に足を速くして、くれる」



行き止まりの小部屋で休憩ついでに、色々と助言をもらう。


魔物鑑定はともかく、戦闘をしていないのに色々と熟練度が稼げているところから考えるに、ダンジョン攻略するにあたって、そういったスキルも戦闘スキルに並んで大事なんだな。


流石に全部取得するのは残存SP的に厳しいので、【体幹】【運び】【悪路走破】【回避】【脚力強化】を取得。



〈体捌き系スキルを3種類【体幹】【運び】【悪路走破】を取得したことにより、【立体機動】スキルが取得可能になりました〉



棚ぼたで優秀そうなスキルが解放されたので、追加で取得。またSP貧乏生活に逆戻りです…。


よし、決めた!



「テューラ殿下、ちょっと相談があるんだけど」


「タメ口で敬称は少し違和感がありますので、テューラと呼んでくれるのなら承りますよ」


「じゃあテューラ、相談があるんだけど」



これからパーティを組むならと、少しでも楽をするためにタメ口許可は事前に貰っていたのだが、今更呼び捨てなどで躊躇わない!その方が気楽だしな!



「待ってくださいまし!それでは、わたしのこともセレス、若しくはティアとお呼びくださいませ!」


「それ、前々から思ってたんだけど、統一しない?」


「愛称なんて人それぞれだよ!わたし達の中ではティアはティアなんだよ!」


「私も親友となったあの日からセレスですので、今更変えられませんね」


「そうか、なら俺はセレスティアで」


「もう一回…」


「え?」


「もう一回呼んでくださいませ」


「セレスティア?」


「耳元で囁くように」


「余計なこと言うな、ディーネ」


「ちぇ〜」



よく分からんが、ディーネが茶化し始めたので終了だ!



「これが亭主関白というものですのね!家族以外にフルネームで呼び捨てされるのは初めてでしたが、なかなか新鮮ですわ!」


「いや、違うだろ…」



なんで嬉しそうなんだ…。


それから軽く相談事を済ませて、休憩終了。



「【魔人化】【英雄覇気】!」



そこが野原であるかの如く、駆け抜け攻略を再開した。


魔人化、精霊化、10分我慢の、魔人化、精霊化…のエンドレス的活用術!


あともう一つ変化系スキルがあれば完璧なのに!


魔人化は単純強化なので違和感はないのだが、精霊化は走るというより滑るような移動で、多少の凹凸は物ともしない代わりに移動速度は変わらないので、一長一短だ。


どちらも攻略速度に差は殆どないから、少しでも他のメンバーとの差を縮められるようにフル活用です!



そして再開後、最初の会敵。


〔ゴブリンソードマン〕2匹、〔ゴブリンランサー〕1匹、〔ゴブリンアーチャー〕1匹、〔ゴブリンシーフ〕1匹、〔ゴブリンプリースト〕1匹の役職持ちの群れ。レベルはLV.10とLV.11の6匹の集団だ。


「【畏怖】【絶望覇気】!テューラ任せた!」



畏怖は一番面倒そうなゴブリンプリーストに!


動きが止まろうが、スキルが使えなかろうが変わらなかったと確信させるような自然に流れるような動作で、ゴブリンを処理するテューラ。


俺の相談事とは、会敵したらスキルを使わせてもらうことだ。


ここまでの道中より、会敵してから一拍の余白が出来てしまうが、それも慣れれば短縮していけるはず。


さらに少しだけ手間をかけさせてしまうことになるが、自分の出来ることは最低限しておきたいし、何もせずに着いていくだけなんて、パーティの利点をかなぐり捨てているからな。


なので、走りながらもエンチャントを切らさないように掛けたり、積極的に気配感知と危機感知を使用したり。


調合スキルは持ってるんだし、ちょっとMPポーションの自作を考えるべきだろうか…。


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[一言] 第100回おめでとう
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