(笑)って・・・
暗い景色が広がっている。どこまでも真っ暗だ
『・・・さい』
どこか遠い所から声が聞こえる。だが、なんて言っているのか聞こえない
『・きなさい』
さっきよりも近づいてきているようで、少しはっきりと聞こえた
『起きなさい』
今度は鮮明に聞き取ることができた。男性のような女性のような不思議な声だ
というか、どうやら俺は目を閉じていたようだ。どおりで真っ暗な景色が広がっていた訳だ
俺は重たい瞼を開けた
「ここは・・・」
さっきの景色とは真逆の白い景色が広がっていた
目の前には姿形はこう・・・ふわっとしてて分からない何かがそこにいた
『目が覚めたようだね、宮坂 陽介君?』
「あなたは?」
『私は、君に分かりやすく言うなら、神と言ったらいいかな』
なんと神様でした
「神様って形がないんですか?」
『あれは君たち人間が、信仰しやすいように形作ったモノに過ぎないよ。本当の姿はないんだ』
へぇ、そんなもんか・・・
『さて、どうしてここにいるのか、思い出せるかな?』
「えっと・・・」
ここに来る前のことを思い出す
確か・・・学校が終わって帰る途中に・・・
「・・・あっ」
『思い出したようだな』
そうだ・・・その途中で何故か包丁を持った怪しいヤツがいて・・・
『そう。襲われそうになった女の子をかばって、君が刺されたんだ』
「なんてこったい・・・」
『ちなみに、君が助けた女の子は無事だし、通り魔も逮捕されたよ』
「そうか・・・。よかった・・・」
神様から助けた子が無事だと聞き、ほっと胸をなでおろす
『で、ここからが本題なんだけど・・・』
お、このシチュはもしや・・・
『そう、君の想像通り。異世界へ行ける・・・が』
「が?」
『単刀直入に聞くが、君はあの女の子を助ける時、百パーセント善意じゃなかっただろ?』
「え?」
『「ここでこの子を助けたら、よくある展開通りに彼女になってくれるかも」って下心があっただろ?』
「な・・・かったとは言いませんが、なぜそれを?」
『つまりだ、お前は百パーセント善意で助ける純粋人間ではなく、ちょっと邪な下心ありで助けた。ここで百パーセント善意のヤツと同じ扱いは、ちょっと不公平だろ?』
「そんなもんなんですか?」
『そうだとも。百パーセント善意のヤツが真っ白い紙だとしたら、お前はちょっと黒が混じった薄いグレーの紙だ。意外と違うもんだろ?』
「そう言われればそうですが・・・」
『そこでだ。君にはこれを引いてもらう』
すると、目の前に丸い穴の開いた箱、くじ箱のような物が二つ出てきた
『片方は君の為の特典。もう一つは私の為の特典だ』
「神様の為?」
『君に行ってもらう世界だが、そこは神達の箱庭のような世界だ』
「箱庭?」
『そこは我々が見て楽しむ場所でね。基本的に干渉はできないんだが、たまに外の人間を転生させることで、世界に刺激を与えているんだ』
「へぇ」
『で、我々が楽しむ為に、その特典を引いてもらうわけだ。まぁ、君が不利になるようなモノは入ってないから安心するといい』
「なら、まぁ・・・」
『ではまず、君の為の特典を引くといい』
俺の前に来た箱に手を突っ込む。中には紙のような物が入っており、その中の一枚を取り出す
「えっと・・・」
紙には[職業:侍セット]と書かれている
『おお。なかなかレアな特典を引いたな』
「そうなんだ」
『普通は剣士セットとか、冒険者セットとかになる』
「へぇー」
確かに侍はかっこいいし、当たりかも
『では、次は私の為の特典を引いてもらおう』
もう一つの箱が俺の前に来たので、手を入れる。中身はさっきと同じで紙が入っているようだ。
そこから適当に引くと、紙には[ハーレム(笑)]と書かれている
『ほう、これは・・・』
「なんですか、この(笑)って」
なんか嫌な予感がする
『まぁ、悪いようにはならないよ』
「ほ、本当に?」
大丈夫かな・・・
『では、そろそろ異世界へ行こうか』
な、なんか急かされてる?
『目を閉じてしばらくすれば、そこは異世界だ』
「あ、あの、装備とかは?」
『大丈夫、向こうにつく頃には装備も身に着けてるよ』
「わ、分かりました」
言われるがまま、俺は目を閉じる
『いいかい?風を感じたら目を開けるんだよ』
それを最後に、体が解けていくような不思議な感覚が来た
正直、床抜けからの落下で異世界転移じゃなくてよかった