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エピローグ

木陰を探しながら炎天下のアスファルトを歩く。蝉の合唱も言葉にすれば風情があるが、ずっと聞いていると頭の中で車のクラクションでも鳴らされているような気分になってくる。

一際大きな木の下に差し掛かった時、向こうの交差点で信号待ちをするナツメとシュンを見つけた。よく見ると、指先だけが遠慮気味につながっている。

信号が青になるまで観察してやろうと足を止めていたら、後ろの方から小さな車が近づいてきた。


「おーい、カリンー」


呼ぶ声がして振り向くと、横に並んだ車の後部座席からモナカが手を振っていた。続いて助手席側の窓も下がり、腰を屈めてみると顔を覗かせたナバリ先生が「やっ」と手を上げた。


「2人で遊び?」

「違う違う。学校の図書館に行こうとしてたらナバリ先生に会って、ついでだからって乗せてもらったの」

「へえ」

「カリンは、どしたの?その花束、何?」

「お墓参り。そういう時期だから」

「ふうん……」


モナカが意外そうな顔で人差し指を口元に当てた。その時、後ろの車がクラクションを鳴らした。ナバリ先生は焦ったように一度ミラーを確認した。


「あっ、やばい。それじゃ行くわ。ちゃんと勉強もしなさいよ」

「カリン、またねー」


車がのそのそと動き始めた。



真っ白な玉砂利に濃い影が落ちている。四方を緑に囲まれているのに、蝉の声が随分遠くに聞こえる。


「まったく、ナツメったら。好きとか嫌いとか、わざわざ口に出して言わないと分かんないもんなのかしら」


太陽が背中をジリジリと焼いているけど、なぜかそれが心地良い。


「ナツメもシュンも、マミって子も、ある意味、自分のやりたいようにやってるってことよね。誰かを好きになって、傷ついて、きっとそうやって大人になっていくんだわ」


あれから、オサムの姿を目にすることはなくなった。


「アンタも大人になりたかった?」


しゃがんだまま顔を上げると、灰色の墓石が天空に浮かぶお城のように見えた。


「やっと来れた。だけど毎年は来ない。次は二十歳になった時と、好きな人ができた時、それから結婚する時と、子供が生まれた時。頑張って大人になるから。いつかアンタに会った時、ちゃんと輝いて見えるように」


そう言って、アタシは立ち上がった。


「好きだったよ、オサム」


2年半に及んだ別れの物語が、ようやく幕を閉じた。




かくれんぼには本当にそういう遊び方もあったみたいです。

拙作にお付き合いいただきました皆様、本当にありがとうございました。

頑張りだけでも認めていただけましたら、評価とブックマークをどうぞよろしくお願いいたします。

また、同じくかくれんぼ企画で「鬼となり子となり」という作品も書いています。

お時間ありましたらそちらもご覧になってみてください。


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