2. 魔王様は、仲良くなりたい!
「ミアちゃんが……魔王?」
「はい、そうですよ。あとミアでいいです」
にっこりとする自称魔王のミア。
いやいやいや、この美少女が魔王っていうのは流石に無理あるって。
もしかして俺をからかってるのか?
「いいかい? 魔王っていうのは化け物みたいな見た目をしていて、全てを力でねじ伏せる奴のことを言うんだ」
「むー、怖くないし、そんなことしないもん」
ミアちゃんは、頬っぺたをぷくーっと膨らませる。
だからお前は魔王じゃないと結論付けたかったのだが、まだ魔王だと言い張るおつもりらしい。
「魔王魔王言ってると、本物の魔王が出てきて襲われちゃうぞー?」
「ミアも本物の魔王です」
一生懸命訴えてくる。
流石に十五歳には脅しは効かようだ。
「……えっと、俺を助けてくれた人は?」
「ミアです」
ほう、この子が……。
本当なのだろうか?
まぁ《プロビデンスの目》でステータスを確認すれば、ハッキリすることだ。
――――――――――――――――――――
※一部表記を省略致します。
【ミアリハーツ】
Lv :895
HP :57800000
MP :37560000
――――――――――――――――――――
「……んんんんんんんん?」
え、なんかレベルおかしくね?
レベルの上限は100だよね?
それ以上上がらないよね……?!
しかもなんなのHP5780万って。
興味を持った俺は《プロビデンスの目》を使って、情報をまとめたものを視界に表示させる。
『総括:種族人間。スキル《魔王の証》を持っているが、ギフトが別に存在するため過去何万人もの人間を殺した可能性がある。レベルは上限突破済み、魔術で戦闘を行っていると推測』
おい……まじかよ……。
俺は部屋のオシャレな窓から外を見る。
「どうしたのですか?」
見たところ、ここはかなり高い場所のようだ。
次にこの建物はオシャレでダークな大きな城ということがわかった。ミステリアスな雰囲気を漂わせている。
さらに遠くに見える街では、魔族や獣人、さらには知性がある魔物と魔獣で賑わっていた。
以上の情報から推測するに……。
「俺は魔王国内の魔王城の部屋に、魔王と二人っきりっていうわけか?!」
「そうですよ~」
またもや耳に生暖かい息が当たる。
背筋がぞわっとした。
「うわぁぁぁぁ!殺さないでください!!」
「え、殺すなんてそんな――」
「俺はまだ生きたいんだぁぁぁーー!!」
ミアちゃんはムッとした顔で、俺をベッドの前まで引っ張った。
「やめろ離せー!!」
ベットに押し倒される。
その上にミアちゃんは、またがってくる。
さすが魔王、大胆な……!!
「ミアはアディス様には危害を加えません。ただ仲良くして欲しいだけです!!」
「し、信じられるか!!」
「どうしたら……信じて貰えますか?」
顔を近づけてくる。
うわ甘くてめっちゃいい匂い。
魔王と言えど、こんな可愛らしい子にこんな近づかれたら……。
「あ、ごめんなさい……」
俺が照れてるのを見たからか、ミアも顔を赤らめて女の子座りをした。
(今だ。なんとしてでも、ここから逃げ出さなくては……)
俺の体は勝手に動いた。
ベッドから飛び起き、扉に向かって走る。
そのまま扉を勢いよくバン、と開けて部屋から出た。
「ア、アディス様?」
「うおおおおお、ぜってぇ捕まんねぇからなぁぁ!?」
部屋の外には、予想以上に広い空間が広がっていた。
床にはレッドカーペット。
天井は高く、シャンデリアがついている。
沢山の絵画や幅が広い階段がそこら中に。
そしてなんと噴水まで……!
あれ、人間の王が暮らしているお城よりも立派じゃね?
「魔族だ……」
なんとメイド姿の美しい魔族達が、走る俺に注目しているではありませんか。
や、やべぇ。胸でけぇ……じゃなくて早くしないと殺される!
「あれ、あの子ミアリハーツ様が連れて帰って来た人間じゃない?」
「そうかもしれないわね、どうして逃げてるんだろう?」
「やっぱ私達怖いのかな……」
「人間さん! 私達は怖くないよ!!」
ん、なんか言ってるな。
だが無視だ無視。今はこの城を出ることだけを考えろ。
しかし逃げ始めてからしばらくたった頃。
コーヒーを運んでいたメイドにぶつかってしまった。
「熱い……!」
「す、すいません!!」
メイドは倒れ、服はコーヒーまみれになってしまった。
危ない、早く水をかけないと体中火傷を負ってしまう。
「すぐに冷水を持ってきます! 待っていてください」
「アディス様、みーつけた」
「ひっ!!」
水を探しに行こうとしたが、ミアが俺の後ろに現れた。
メイドはミアの名前を涙目で呼ぶ。
「ミアリハーツ様ぁ……」
「た、大変! コーヒーをこぼしてしまったんですね。大丈夫です! 任せてください」
すると、ミアは詠唱をした。
「《ウォーター・ヒール》」
数えきれないほどの小さな水玉が空中に飛び回り、そのメイドを包んだ。
まるで芸術だ。
「や、火傷をしてない……それにコーヒーの跡も」
え、まじ?
流石魔王様。一つの魔術でコーヒー跡まで消せるのか。
「痛みが消えたようで良かったです」
「ありがとうございます! ミアリハーツ様」
いや魔王の鏡だな?!
国を滅ぼしに来たミア以外の魔王も見たことがあるが、自分の配下の首を取ったりもう散々だった。
それに比べて、ミアは魔王なのにも関わらず、従者を自分と同じ目線で見ている……多分。
「捕まえましたー!」
捕まえられちゃった♪
ミアは正面からギュッと抱き着いてきた。
だが俺は抵抗をしなかった。
もしかするとミアは他の魔王とは少し違うのかも知れない。
というか恩人を怖がるのは失礼だしな。
信じてみよう、この少女を。
あと、上目遣いでこっちを見るな。
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