頭の良い人
頭のいい人がおります。
ずいぶん頭の良い人が、おります。
「これは何て名前だったっけ?」
「これはエノコログサだよ」
頭の良い人は、物知りだったのです。
これは何と聞けば、必ず答えが返ってきました。
「どうしたらいいと思う?」
「状況把握をして、やるべきことを書き出したらいいんだよ」
頭の良い人は、機知に富んでいたのです。
何をしたらいいか聞けば、必ず答えが返ってきました。
皆が頭の良い人を頼っていました。
頭の良い人は、皆に言葉を送りました。
「あれをするべきです」
「これが効きますよ」
「それは正しい判断です」
「どれを選んでも同じですよ」
「どこにもないですよ」
「ここが一番ですね」
「そこが重要なのです」
頭の良い人は、どんどん知識量を増やしていました。
頭の良い人は、頭の良くない人と交流することで、どんどん事例を蓄積していたのです。
頭の良い人の、頭の良さがどんどん磨かれていきました。
いつしか、頭の悪い人が一言伝えるだけで、頭の良い人は答を返すようになりました。
頭の良い人に、長い説明は不要でした。
頭の良い人は、実に理解力に富んでいたのです。
「これ、間違っています」
「それ、間違っています」
「ここ、間違っています」
頭の良い人の知識と常識が、惜しみなく頭の悪い人たちに恵まれました。
やがて、頭の良い人は、頭の悪い人が黙っていても、答えを恵むようになりました。
「あなた、これをみなさい」
「きみ、これを聞きなさい」
「あなた、これを選びなさい」
「きみ、これをやめなさい」
「あなた、これをやりなさい」
頭の悪い人たちは、頭が良くないので、頭の良い人の答を理解できないこともありました。
頭の悪い人たちは、頭が良くないので、頭の良い人の答を理解できずに持て余すようになりました。
頭の良い人の元に来る人が少なくなりました。
頭の良い人の元に来る人がいなくなりました。
頭の良い人は、頭が良いので状況を理解しています。
頭が悪くて理解できない人たちを気の毒だと思っています。
頭の良い人は、頭の悪い人たちと顔を合わせずとも、何でもわかっています。
頭の良い人は、頭の悪い人たちと顔を合わせずとも、すべてお見通しなのです。
何年顔を合わせずとも、頭の悪い人たちの考えることなど手に取るようにわかるのです。
頭の良い人は、今は一人ぼっちで、頭の良さを磨いているそうです。
自分の頭の中で世界を広げ、自問自答を繰り返しているそうです。
何年も言葉を交わしていない、頭の悪い人たちの事を思いやって、独自に研究を続けているそうです。
頭の良い人は、今も一人ぼっちで、頭の良さを持て余しているそうです。
頭の良い人は、今も一人ぼっちで、頭の良さに振り回されているそうです。