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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ふわっとした短編集

『運命の赤い糸』にクソッタレを

作者: 蟹蔵部

 物心ついたときからそれが見えていた。左手の小指から伸びる赤い糸は、何かを探すようにあっちへふらふら、こっちへふらふら。人々の間を彷徨い、他人の赤い糸と交わっては離れてを繰り返す。


 母親から伸びる糸が、父親とは別の男に繋がる瞬間を見たのは偶然だった。

 糸が見える範囲はそれほど広いわけじゃない。母親に連れられて散歩に出た先で、母親と男は出会った。

 その瞬間、二人の赤い糸は互いに絡み合い、溶け合い、そして母親は俺たち家族を捨てた。


 家族として積み上げていた諸々が、一瞬の出会いに負けた。クソッタレな赤い糸に負けた。


 運命の赤い糸だと? だったら俺はなんだ。俺たち家族を捨てた母親が、運命でもなんでもなかった父親と作った俺はなんだ!?

 父親の赤い糸と、再婚した女の赤い糸が繋がっているのはなんだ!?


 切り落としてなくなった俺の小指があった場所から、それでも伸びてくるクソッタレの赤い糸はなんだ!?


 その糸がお見舞いにきたクラスメイトと繋がったのはなんだ!?


 こんなのは間違ってる。クソッタレな赤い糸に負けるなんてありえない。


 浮遊感は一瞬で、衝撃が全身を襲った。

 目に入った血で視界が真っ赤に染まり、クソッタレな赤い糸は見えない。


 痛みよりも安堵を感じて目を閉じた。


 俺は運命に勝った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 運命に打ち勝つのは容易なことではないんですね。『運命の赤い糸』を題材としているのに、ロマンチックさではなく残酷性を強調しているのが新鮮でした。
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