表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/91

プロローグ

あらすじにもある通り、ラスボスグルメと同じ世界観です。

本作品は1話3000~5000文字と私の作品にしては短めです。その分、更新頻度を上げるつもりでおりますので、ご容赦ください。

目標(ターゲット)確認。障害物なし(クリア)。距離300。風……ほぼなし……狙撃(SP)モード確認……)


 魔物狩人(ハンター)であるライルは崖の上の岩場にうつぶせになり、対物(アンチマテリアル)ライフルであるバレットM82A1を模した大型魔銃の光学式照準器(スコープ)を覗き込んでいた。


 銃床(ストック)にしっかりと肩を付け、ストックの下部分にあるリアグリップを左手で握る。

 そして、ゆっくりと息を吐く。


 彼の眼にはスコープの十字線(クロスヘア)と、標的である大型の魔物、オーガの頭部が映っていた。

 そして、呼吸を止め、引き金を引くタイミングを静かに待っている。


発射(ファイア)”と頭の中で呟き、引き金を引く。


 次の瞬間、十数個の銀色の魔法陣がM82の銃身に貫かれるように浮かび上がり、パーンという空気を震わす高い音が響く。


 反動(リコイル)により、彼の肩にストックが押しつけられ、浮かび上がっていた魔法陣は一瞬にして消えた。


 銃身(バレル)の先にある矢尻のような形状の銃口制退器(マズルブレーキ)から、圧縮された空気が噴き出し、薄い霧を作る。


 スコープの中では、オーガの頭が半分以上吹き飛んでいた。


目標1体目(ファーストターゲット)駆除成功(コンプリート)……次……」


 オーガは5体いた。

 そのうちの1体の頭が突然吹き飛んだことに、オーガたちは恐慌を起こす。そして、音がした方に視線を向けた。


 しかし、彼らの位置からは腹這いになったライルの姿は見えず、キョロキョロと周囲を見回すことしかできない。


 そんな様子を見ながら、ライルは素早く遊底(ボルト)レバーを引き、次弾を装填する。


「……次弾装填(リロード)完了。発射準備……」


 ボルトレバーを引いたタイミングで、弾倉(マガジン)の上部に緑色の魔法陣が浮き上がる。

 銃身(バレル)には発射直後に現れた水色の魔法陣が残っており、緑と水色の魔法陣が美しく輝いていた。


 次の標的を見つけ、再び照準を合わせる。


目標(ターゲット)、最右翼のオーガ……」


 水色の魔法陣が唐突に消えた。


「……冷却完了」という呟き、その直後、緑の魔法陣がゆっくりと消えていく。


「発射準備完了……」


 一瞬の間を置き、心の中で“発射(ファイア)”と呟き、引き金を引く。


 再びオーガの頭が吹き飛び、ゆっくりと倒れていく。

 それでも知能の低いオーガは何が起きているのか理解できず、喚き散らすことしかできなかった。


 ライルは何の感情も見せることなく、次の目標に照準を合わせていく。


 僅か1分ほどで5体のオーガは全滅した。


 全滅を確認したところで、ライルはふぅぅと息を吐き出す。しかし、気を抜くことなくすぐに立ち上がった。

 身長は170センチほどと比較的小柄で、やや長めの黒髪が左目に掛かっている。銃を撃っている時は冷徹さが垣間見えたが、まだ少年の面影を強く残している。


(今日はこれまでだな。血の匂いで魔物が来る前に死体を回収しないと……)


 レベル350を超えるオーガは魔物が跋扈する、ここアルセニ山地でも強力な魔物と認識されている。一流の探索者(シーカー)である魔銀級(ミスリルランク)のパーティですら苦戦するほどで、僅か18歳の若者がたった一人で倒したことは異常と言っていい。


 ライルはM82のセレクターレバーを“セーフ”に切り替え、二脚(バイポッド)を畳むと、収納魔術(アイテムボックス)に入れる。

 そして、M4A1を模したアサルトカービンを取り出し、肩に掛けた。


 もし彼の姿を“流れ人”と呼ばれる異世界人が見たならば、その姿に違和感を覚えたことだろう。


 使い込まれた飴色の革鎧に硬革製のヘルメット、武骨な革のブーツに金属で補強された脛当て(グリーブ)


 腰当(スカート)がない腰には太いベルトが巻かれ、右側には大型の回転式拳銃(リボルバー)が吊るされ、左側には銃剣(ベイオネット)にもなるナイフが革のホルダーに収納されている。

 それだけでも違和感があるのに、近代的なアサルトカービンを肩に掛けていた。


 21世紀の地球から迷い込んだ流れ人なら、中世と現代が混じったようなちぐはぐさを感じたはずだ。

 しかし、流れ人の感覚を持たないライルには、今の自分の装備は珍しいというだけで、違和感を覚えることはなかった。


 周囲を索敵魔術(サーチ)を使って走査し、魔物がいないことを確認する。安全を確信した後、僅か5メートルという極短距離転移魔術(テレポート)を使って、岩場を転々と飛び始めた。


 その動きに迷いはなく、いつもの決められた動作(ルーティーン)であることが分かるが、その行動も異常と言える。


 高さ30メートルの崖とはいえ、転移距離は高さ分しかない。“わざわざ5メートルずつ飛ぶ必要はないのでは?”と見ている者がいれば思うことだろう。


 10秒ほどで崖を降り切ると、オーガの死体がある場所まで慎重に進んでいく。そして、草むらで息を潜めると、もう一度周囲を確認した。


(敵影なし……さっさと回収するか……)


 警戒を緩めることなく、大型の収納袋(マジックバッグ)に死体を収納していく。


 すべてを収納したところで、僅かな殺気を感じた。


(ん! 血の匂いに誘われた魔物か……)


 M4カービンを構え、セレクターを“セーフ”から“バースト”に切り替えながら、銃口に銃剣を取り付ける。


 周囲をゆっくりと見回しながら、敵が出現するポイントを探っていく。


 彼のオリジナル魔術、“サーチ”は感知されない程度の微弱な魔力を扇状に放ち、その魔力波を乱す魔力、すなわち魔物や人を探知できる便利な魔術だが、一つの(セクター)の幅が狭く、全周を走査するには時間が掛かる。


 また、範囲(レンジ)も最大300メートルほどしかなく、速度がある相手の奇襲に対しては効果が薄い。

 そのため、気配察知のスキルを併用して周囲を警戒していた。


(来る! 速い!)


 右側に殺気を感じ、身体を向ける。

 彼の視線の先には体長2メートルを超える巨大なカマキリがいた。


殺人蟷螂(キラーマンティス)か! 厄介だな……)


 キラーマンティスはレベル350程度の魔物だが、危険度はオーガ以上だ。耐久力こそ低いものの敏捷性は高く、鋭い鎌は攻撃範囲が広いだけでなく、ライルの着る革鎧など紙のように切り裂けるほど鋭い。


 ブォーンという低音の羽音を響かせながら器用に木々を避け、巨大な鎌を振り上げ、羽を拡げて飛んでくる。


 ライルはキラーマンティスが大木の陰から飛び出すタイミングでカービンの引き金(トリガー)を引いた。


 ダッダッダッという小気味のいい発射音が響く。

 本来のカービンなら薬莢が飛び出し、地面に落ちる音が響くはずだが、彼の銃からは薬莢は排出されない。


 高速の銃弾がキラーマンティスの柔らかい腹部を貫通していく。しかし、痛覚を持たない魔物は、透明な体液を撒き散らしながらもスピードを落とすことなく、ライルに迫っていく。


 キラーマンティスはライルの目の前に着地し、その鋭い鎌をクロスさせるように振り下ろす。

 しかし、その鎌は彼を捉えることなく、空を切った。


 キラーマンティスは何が起きたのか分からず、複眼のついた首を忙しなく動かす。

 そして、自分の真後ろに獲物がいることに気づいた。


 ライルは鎌を振り下ろされた瞬間に転移魔術を使い、キラーマンティスの後ろに跳んでいたのだ。


「とどめだ!」と言って、いつの間か持ち替えていた、(スミス)(ウェッソン)M29を模した44口径リボルバーの引き金を引いた。

 至近距離から放たれた44口径の重い銃弾がキラーマンティスの頭を吹き飛ばす。


 頭を失ったキラーマンティスは闇雲に鎌を振り回したが、そのまま倒れていった。


(M4は貫通力が高いから、敵の突進を止めにくい。ショットガンならよかったんだが、運が悪かった……反省は後だ。早くここから離れないと……)


 キラーマンティスの死体を回収し、森の中を走る。

 5分ほど走り、安全な場所まで来たところで緊張を緩め、大きく息を吐き出した。そして、右手の甲から銀色のカードを顕現させる。


 このカードはパーソナルカードと呼ばれる、この世界の人間なら誰でも持っているものだ。そこにはステータスなどの情報が記載されており、彼はその情報を素早く読み取る。


(あと2連射で魔力が切れるな。ここから先は比較的安全だが、できるだけ早く町に戻ろう……)


 しかし、無傷で強敵を倒せたことには満足だった。


(今日も調子がいい……それにしても最近は順調だな。あの頃では考えられないくらいに……)


 今は大陸暦1120年3月。

 2年半ほど前に実家から追い出され、魔導学院を辞めさせられた頃のことを思い出していた。

 本作品をお読みいただき、ありがとうございました。


 あらすじにもありますが、本作品で登場する銃は地球の銃を模したもので、動作原理や性能は異なります。というわけで、地球のBarrett M82には“SPスナイパーモード”や“AMアンチマテリアルモードはなく、本作のオリジナル設定です。


 もし続きを読んでもよいと思っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると幸いです。

 ページの下側に「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」の「☆☆☆☆☆」の☆部分をタップいただきますと、簡単に評価が入れられますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同一世界観の作品のリンクを貼っておきます。

『【ラスボスグルメ外伝】 ジン・キタヤマ一代記~異世界に和食と酒を普及させた伝説の料理人~』
まだ読まれていない方はご一読いただけると幸いです。
設定集もあります。
 「千迷宮大陸シリーズ設定集」
興味のある方は覗いてみてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ