ある森の奥地で
かなり短いです
この森は禁断の領域とされて各国が進入を禁止している。
進入禁止の理由は至ってシンプルで国の領土を増やすために侵攻し、敵に回してはいけないと今後言われることになる者達に、手痛いしっぺ返しを受けたからである。
この森に手を出した各国の兵力は半分以下にされたため、国としてはそれ以上は手を出さないことと、各国間で停戦の条約が締結された。しかし、それでも資源が豊富な森のため、依頼として資源集めを個人で行う者達が多かった。
この依頼を受けた者達は総じて同じ評価をする――「運試し」と。
そしてこの森には、主とされている人物がいる。通称「赤ずきん」と呼ばれていた。
しかし、今この森には赤ずきんともう一つの影が存在していた。
「これから薬に使う材料を取りに行く予定だけど、何か用事?」
――――?
「薬はまだできてないわ。新薬はしっかり開発中よ」
――――。
「何? 不満? 私は私のペースで進めると言ったはずだけど? それとも私の暮らしを邪魔する気?」
――――。
「でしょうね。でも、冗談だとしても、少し軽率な発言だと自覚して」
――――?
「赤ずきんって呼ばないでくれる? 好きじゃないのよその呼ばれ方。そろそろ邪魔なんだけど?」
嫌悪感を隠す気のない言葉を言われると、赤ずきんの近くから人影は消えていった。そして、一人残った赤ずきんは気を取り直し、材料を集め始めた。
「あとは地脈の水で最後ね」
独り言だと認識してないかのような呟きを漏らしながら、目的の場所に歩を進めていた。
あの洞窟はどうにかならないのかしら? 大樹の根の様に入り組んでいるせいで目的の地底湖まで行くまでが少し面倒。
ここの地底湖の水は、飲み水としては少し厳しいけど薬などの調合で凄く有用だからこそ使用する。水汲み自体は不思議な水袋のおかげで、一回行えば少しの間はしなくてすむからいいけど……。でも、結局なくなればまた来なくてはいけない。どうにかならないかな?
いつも思いながも結局は手をつけないことを考えながら、地底湖の近くまで行き、歩を止めた。そして、地底湖のある空間をゆっくりと覗く。
話し声!? いつの間に侵入してきたの? 一体どこの誰が……。でも先に様子を見ないと。一体何が目的なのかしら?
片方は調査をしている感じか。もう片方は着替えてる? なんでここで着替えているの? 特に何の変哲もない衣服に見えるけど、どんな意味が?
でも調査してるってことは敵ね。武器自体は特に目に見える範囲には、なさそうね。どこの組織が背景にいるのかしら。それも込で色々と聞かないと。
後はどのタイミングで捕縛するかだけ……ど……!!
赤ずきんはこの時、着替えが終わり、辺りを見渡していた人物に気づかれていることに気づく。しかし、相手は動かないと理解するとまた様子を見始めた。
私に気づいたのは凄いけど、何もして来ない? 自分自身のことを言いたくはないけれど、私は悪い意味で結構有名になっている。私の存在を知らない人達は珍しいわね。でも捕縛する準備だけは始めようかしら。
しかし、この時に気づくべきだと、この時の私に文句を言いたい気持ちになった。それは、各国で「赤ずきん」とは、恐れられていて会った時点で命はないとされている程であった。この話に関しては当の本人もそこまで詳しくは知らないため、ここまで酷いとは思っていなかった。
しかし、そんな有名な森にいる有名な人物を知らないのは、ありえないことだと思えば迂闊なことはしなかったであろう。そして、アリスだけではなく、もう一人のハテンも自分に気づいていたことに気づけたかもしれなかった。
この出会いは私の人生で、今後未来永劫、最も一番なかった事にしたい。
私は、安寧を望んでいるから。
おそらく後から変更する可能性が高いです。
次は来週の金曜日の18時投稿予定です。
2020/09/12
最後の方を追加・変更しました。
2020/09/14