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存外まともかも

 そこは静謐であり、色とりどりの鉱石の光が夜空を彷彿とさせる天井に、その光を反射して水面がキラキラと光る地底湖。その光景は、誰もが目を惹かれる様な幻想的な空間であった。

 その空間で一瞬の間に粒子が収束する場所があった。そして、そこに現れたのは……片方が跨られて首を絞められ押し倒されている状態だった


 首を折られて死んだと思ったけど、首にはまだ手が巻き付いているのはわかる。でもそれだけだ。何も起きてない。不思議に思い、恐る恐る目を開けるとそこは、謁見の間ではなく地底湖の畔にいた。


 またしても状況が一変した。首を絞められたと思ったら、別の場所にいる。そして、首を絞めてきた囚人が俺の上から横に倒れた。


 ボチャンッ!


 水に落ちる音がした。その音を聞いて、上体を起こし見てみる。囚人が水に沈んでいく。気絶でもしているのかな?


 沈んでいく囚人。でも今なら引き上げられる。殺されそうになったし、助けたくない。でも女の子だし、見捨てるのは寝覚めが悪いよな……。

 ……どうしよう……一応助けるか。


 沈んで手が届かなくなる前に引き上げた。


 引き上げたのはいいけど、気絶してるしさっき首しようとしてきたから放置でいいや。


 ようやく落ち着いて、何が起きてるか考えられる。


 そんなことを思い、ここで漸く状況の確認を始めた。


 まず自分の姿が「CAE」の複数いるゲームキャラの中で一番時間を費やしたキャラ。「破天ハテン」であること。それに付随するかのように、気づき始めると色々なことができることを理解した。主にキャラのスキルなどの性能面、それと持ち物などだ。ぶっちゃけるとレベル1のキャラじゃない性能だ。「CAE」でチーターの疑いを受けたこともある。もちろん、とある掲示板にも晒されている。

 そして、案の定というか……ここは自分のいた世界ではなく、違う世界。いわゆる異世界だと思われる。現実でありえるのか? そんなことを一瞬は考えるが、その考え自体を捨てる。まず感覚が違いすぎる。なによりも水の感触や温度を感じる。それが現実だということを突きつけられる。


 こんなんどうすんだよ……ゲームも資産もなくなった。戻れれば……戻った所でやることが暇つぶしの日々、資産は宝くじが当たったから特に困ることはないけど、やることが「CAE」で他キャラの強化だからな。でも戻れるかは気になる。当分の目標は、元の世界に戻れるかの確認かな。


 とにかく、ここからどう動こうか考えていると……


「んんっ」


 ――!!

 囚人が起きそうだ。話せればいいけど……話ができて欲しい。


 そんなことを期待しながら起き上がるのを待つことにした。


 呻き、咳き込みながらも起き上がろうとしている。しかし、起き上がることができないでいた。

 体に力が入らないのか、それとも体が動かせないのか、寝返りはできるみたいで仰向けになる。


「ここは……どこ?」


 か細くが静寂な場所のおかげで声が耳に届く。


 テンプレのセリフありがとう。って逆に教えて欲しいのだが……。どう応対すればいいんだ? 殺そうとしてきた相手にどうすればいいっていうんだよ。


 どう返答すればいいか考えていると、こちらをジッと見つめてくる。


「……」

「……」


 沈黙が辛い! でも良かったぁ、これなら話せそうだ。だけど……どうしようか。あっ、そう――


「あなたは……誰ですか?」


 先に話してくれたのはありがたい。これどっちで答えればいいんだ? キャラ名? リアル名? どっちでもいいか。


「……ハテンだけど……お前は?」

「アリス……」

「アリスさん? は、どうしてそのすg……ここってどこですか?」


 どうしてその姿をしているのかを聞こうとして、気づく。囚人服っぽいのが濡れて、体のラインが出ていた。結構大きいな。着痩せするタイプか。ここは気にしないようにする。ここで気にしたら、絶対に話が進まなくなる。……ガンバル。


「わたしもこの場所がわからないんだけど……あなたは何者?」

「何者って言われても俺は俺だが? こっちも聞きたいんだけど、ここに飛ばされる前にいた場所は、知ってる?」

「……!!」


 あっ、地雷踏んだかも。なんかまた暴れそうなんだけど。暴れられたら困るので拘束系のスキルを使うしかないか。でもどれが有効か、解らないから順番に使うしかないか……面倒だ。

 想像以上に早く効いた……。ついでに、異常回復系の魔法も使ったから効果があれば、落ち着くはず。


「あの……落ち着いて欲しいのだが」

「あなたは何をしたのですか?」


 よし! 効果があったみたいで良かった。これで話が続けられる。


「特に何もしてないよ」

「うs……さっきの場所は研究所……だけどここはわからない」

「この場所はお互いに知らない。なら、とにかく今は一緒にここから出ない?」

「いいですが、出口がわかるのですか?」

「出口がわかるとは言わないけど、出れるとは思う」


 なんか物凄く、怪しまれてるんだけど……でも悪意は、ないから何とかなるとは思いたい。


 そんな問答を少しの間、繰り返していた。そこで違和感を覚えた。アリスのMPが徐々に減っている。でも減り方的には、微々たるものだ。


「なら早くここから出ましょう」

「了承も得られたということで、早々に行きたいんだけど……休憩した方がいいだろ? 色々とキツイだろうし、あと着替えて」

「休憩させて頂けるのはありがたいのですが、着替えって…………!!」


 この後、休憩はしたが、休憩するまでにゴタゴタがあり、てかテンプレだけどさ、なんでこっちが悪くなる? 沈んだのを助けた側だから感謝はされても、恨まれる覚えはない。


 なんだかんだ着替えやら、この地底湖を調べたりとした。


 結果、地底湖の水がえぐいほどの魔力を保有していること、持ち物に課金限定の倉庫にアクセスできるアイテムがあり、そこからアクセスできることの2つが一番驚愕した。

 ぶっちゃけファッション装備が自動的に装備者のサイズに合うのは、なんとなく想像できた。



 この時、倉庫などに色々と放り込んだことが後々、役に立つと思っていたがその考えを改めることになるとは、この時は思いもしなかった。


次は来週土曜の20時投稿予定です

2020/08/29

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