霧の中日々の中
今朝は霧が深くて、
路地の向こうも、
見えずにいた。
霧の中を歩いた。
するとウグイスが、
鳴いたのである。
それもとても、
とても上手にね。
霧の中のウグイス、
美しく感じた。
思わず誰かに、
伝えたくなった。
早朝から、
ねえ、霧の中の
ウグイスがねと、
気軽に話せたら。
それから、また、
考えてみた。
霧の中のウグイスの、
見えない鳴き声を。
ウグイスは何故、
霧の中で、
あれほど美しく
鳴いているんだろう。
霧を仲間に伝える、
ここにいるよと伝える、
みんなどこと探している、
何故だろう。
何かしら
あるのだろうけれど、
人が聞いているとは、
考えてはいないだろう。
人だってそうか。
日々は先が見えずに、
霧深く朝を迎え、
その中を歩き続ける。
なんとなく、
願うことはあっても、
確かなものは、
何もないだろう。
ウグイスの鳴き声は、
人に例えれば何か。
人は霧の中でも、
美しく鳴けるだろうか。
誰かが聴いていると、
考えたりせずに、
ただ、丁寧に、
優しく、美しく……
誰かが聴いている。
誰かが探している。
心うたれている。
誰かに伝えようと。
霧の中、日々の中、
丁寧に、優しく、美しく、
鳴いてみたいなぁ。
あのウグイスみたいに。
ただ、一生懸命に、
霧の晴れ間を求めて、
生きてゆくけれど、
鳴くことも生きること。
そうすれば、誰かに何か、
良いことを、幸せを、
渡せるかもしれない。
渡せるかもしれない。