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愛する君へ

作者: 梨伊

愛するより愛されたいのシリル視点です。


僕がオーレリアに出会ったのは3歳の頃だ。

幼い頃に出会った少しわがままで気の強い、寂しがり屋の彼女に僕は恋をした。


僕の家族は選民意識が強く、そんな人たちの周りにいるのは同じく選民意識の強い人ばかりだった。

そんな中、その考えに馴染めなかった僕は貴族が嫌いだった。

だから、7歳の時に久しぶりに会ったすっかり貴族令嬢らしくなったオーレリアに落胆したんだ。


それでも、幼馴染として一緒に行動させられることは多かったし、どうでもいいと思っていた僕も父に従ってよく彼女のそばにいた。


そんな時、僕とオーレリアは庭師の子をいじめている貴族令息たちを見つけた。

僕は白けた目でそれを見つめ引き返そうとした。

でも、オーレリアがそちらに向かって行って、きっと彼らと同じようにその子を嘲るのだろうと彼女に失望した。

そんな失礼な僕の予想は裏切られた。

何をしているのかしら?から始まり、彼らの行動を批判し、庭師の子を庇ったのだ。

それに、激高した一人が自分は子爵の令息だ、選ばれた人間なんだと言った時の彼女の言葉に僕は衝撃を受けた。

「貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞いをしなくてはならないわ。

私たちはたしかに地位を持っている、権力を持っている、だからそれに伴う責任と義務を果たさなくてはならないのよ。

それが出来ない者なんて貴族である権利はないわ。」

その時僕はきっと、初めて本当の貴族を見たのだ。


それからの僕はまさにオーレリアが全てだった。

初めは尊敬、憧れ、きっとそんな気持ちだったけど彼女を知るたびその気持ちが膨らんでまさに心酔していった。

彼女に婚約者が出来た時は相手が彼女に相応しくなさそうな奴だったので気に食わなかったけど、彼女が嬉しそうだから何もしなかった。

王妃教育を受けて、ますます素晴らしい令嬢になっていくオーレリア。

それが彼女の努力によるものだと僕は知っていた。

そうしてまた、彼女に陶酔するのだ。


学校に入ってしばらくすると、オーレリアはいつも僕と一緒に居てくれた。

それが嬉しくて少しでも役に立つように僕は彼女に尽くした。

そうしたら、僕には貴族の令嬢じゃない、オーレリアとしての顔を見せてくれるようになって嬉しかった。

そして、そんな彼女に僕はきっと無意識に二度目の恋をした。

それでも、その時の嬉しいは素晴らしい公爵令嬢に信頼されたことからだった。


そんな時、オーレリアの婚約者のアーロンと男爵令嬢のクリスティアナが一緒にいるのをよく見かけるようになった。

オーレリアはたしかあの男が好きだったはずだ。

傷ついてしまうかもしれない。

それに、彼女程王妃に相応しい人は他にいない。

あぁ、クリスティアナを排除しなければ。

そんなことを思っている時彼女に言われた。

「クリスティアナさんには手を出さないで。」

「どうして?オーレリア。

僕は君のためならなんでも出来るよ。」

「私はたしかにアーロン様の婚約者だわ。

でもね、彼への気持ちはもうないの。

そんなことよりも、大切な貴方が手を汚してしまうことの方が悲しいわ。」

だから何もしなかった。

その時に、本当に僕のことを愛しそうに見つめるオーレリアを見て僕は幼い頃の彼女に恋した記憶を思い出した。


それからオーレリアは何度も辛い目に遭わされた。

やたらとオーレリアを敵視する女狐のクリスティアナもクリスティアナに簡単に騙される頭の弱いアーロンも何度も何度も殺してやりたいと思った。

「ねぇ、シリル。

もし、私を連れて逃げてって言ったらどうする?」

そんな時言われた言葉。

僕はすぐに反応出来なかった。

口調は冗談のようだったけれど縋るような瞳からそれが彼女の本心なことが分かった。

その時僕は彼女に失望した。

あぁ、彼女も貴族に相応しくなくなってしまった。

そして、責任を放り出すような人間になるほど、追い詰められてしまったのかとクリスティアナとアーロンを恨んだ。

でも、それと同時に自分の二度目の恋を自覚して、僕にとってのオーレリアは誰よりも素晴らしい貴族から守ってあげたい女の子になった。

それに、オーレリアの心根の気高さは消えていない。

どうせ、もうこの国に僕が仕えたいと思うほど素晴らしい貴族なんて存在しない、未練も残っていない。

それなら、

「任せて。だって僕は君のためならなんでも出来るんだ。

何よりも大切で、誰よりも愛してるよ。

ねぇ、だから望みを聞かせて。

きっと僕が叶えてみせるから。」






そうして、僕たちは駆け落ちした。

準備に一年以上かかってしまったけど、卒業前に間に合って良かった。

オーレリアは噂を流したことでクリスティアナに報復したと言っていたけれど、僕は満足していない。

それに、何度もオーレリアを傷つけた見る目がなく趣味も頭も悪いアーロンに何も出来ていない。

本当は僕の手で殺してやりたい。

でも、オーレリアのそばにいられなくなるのは嫌だ。

それに、犯罪者なんてオーレリアに相応しくない。


だから、クリスティアナがオーレリアを陥れようとしたことや婚約者がいる相手に擦り寄ったことを

アーロンが婚約者がいるにもかかわらずクリスティアナとまるで恋人のように過ごしていた事やクリスティアナの言葉に騙されて行った数々のオーレリアに対する非礼を

全て証拠と共に沢山の人に拡散させてきた。


きっとクリスティアナは罪人となる。

アーロンも王位継承権を失うだろう。


それでもまだ、全然足りないけど。

彼らのおかげで僕の今があると考えるなら、まぁ、もういいや。

しょうがないから放っておいてあげる。

だって、君たちに構っている暇があるなら、少しでもオーレリアのためになることを考えたいからね。


今、僕たちは遠い国で平民として暮らしている。


「ねぇ、オーレリア。

好きだよ、好き、大好き、愛してる。」

「私も好きよ。」


ねぇ、オーレリア。

君が愛に飢えていること、僕だって気づいてるんだよ。

でもね、君が死んでしまったら、僕はすぐに後を追うだろう。

僕が死んでしまったら、幽霊になって君が死ぬまでそばにいてみせる。

だから、安心して欲しい。

好きだよ、オーレリア。愛してる。

本当はこんな言葉じゃ全然足りないけど、君が不安にならないように何度だって伝えるよ。


だから、ずっと僕のそばにいて。



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― 新着の感想 ―
[一言] オーレリアが真っ直ぐに育っている辺り、彼女の両親はしっかりとした矜持を持った貴族らしい貴族なのでしょう。 そんな家族が二人の逃避行をどう捉えているか。 アーロンが糞戯けなのは誰が見ても明らか…
[一言] なんか安心して詠めました。
[一言] 両方読んだ。いいね。
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