『薔薇騎士』は王妃殿下直轄ハニートラップ部隊です!②
第2話です。
フローリエ、変身するの巻。
変身前のフローリエの容姿は、敢えて省いています。
短いけど、次回からハニトラ開始予定です。そうしたら長くなるはず。
それから、少し後のこと。
「『すごーい!私じゃないみたい!』」
王妃や王女の前には似つかわしくない、くだけた口調で叫んだのはフローリエだ。
しかし、外見は本来の彼女と全く違っている。
代々の王妃の間だけで伝承される変身魔法で、フローリエは文字通り『別人』になっていた。
鏡をじっと見つめるフローリエに、うきうきとアーネスティンが促す。
「さあ、自己紹介してみて」
「『初めまして、私、ケルシーです!最近、ケンドール男爵様の養女になったばかりなんです。お貴族様の難しいルールはまだ詳しくないんですけど……よろしくお願いします!』」
「すごい。いい感じね、フローリエ」
アーネスティンは笑いながら、先程記入したばかりの書類を確認する。
『騎士:フローリエ(平民のため姓なし)
対象者:ルイス・ライバー
依頼者:メリーローズ・ミシェル
↓以下は任務遂行中の身分である↓
氏名:ケルシー・ケンドール(16)
経歴:ケンドール男爵の死亡した弟の落胤。平民として母と暮らしていたが、母の死亡に伴い男爵の養女となる。
髪色:黒
瞳の色:濃い桃色(男爵と同じ)』
「キティ様、しばらくお世話になります」
「こちらこそよろしく、フローリエ……それに、『ケルシー』」
「『はい!これからよろしくお願いします、お義姉様っ』」
『ケルシー』が養女に入るケンドール男爵家は、キティの家である。
これからしばらくは、キティとフローリエは義姉妹の間柄になるのだ。
「いいわね。自由奔放に振る舞う、貴族になったばかりの女の子……ルイスには効きそうね」
婚約者の顔を思い浮かべながら、それまで見守っていたメリーローズも、満足気に笑った。
「はい、両殿下。平民としての振る舞いはお任せ下さいませ」
おどけた様子で言ってみせるフローリエは、
自分と同じく平民の少女――お仕着せの少女らと目を合わせて微笑んだ。
フローリエは、大きな商会の娘である。
とはいえ、身分は平民だし、王宮勤めを始めるまでは、普通の元気な町娘だったのだ。
正直なところ、平民らしく振る舞えることになり解放感すら抱くフローリエだった。